転生ショック
次の日、りーあは、妖精ノートを読むことで、記憶が部分的ではあるが、戻ってきた。
そうだ、あのとき転生魔法が発動して、わたしはまた、あの透明な光の空間のなかに、戻されたんだ。
でも、そこでわたしは、再び九ノ葉学園に、戻りたいと、魔法に願った。
転生魔法を使うと、時間をとばしてしまうため、いまがいつなのか、わからなくなってしまう。
転生魔法の空間を通る間に、進化して、魔法スキルを追加したのに、その記憶が、転生ショックで忘れていた。
くみさんがいてくれてよかった。
でも、同じ転生魔法をかけたとおやくんは、どこにいるのだろう。
永続魔法だから、あのとき必ず発動したはずだけど、もしかして、別の転生を願ったのだろうか。
「ねえ、とおやくん、ていたよね。どうしてる?」
「それが」
くみさんは、言葉を途切れさせる。
「うん」
「透闇くん、行方不明になっちゃった」
「え、なんで!?」
「あの事故のとき、周りにいたみんな、記憶が一部よくわからなくて、そのとき落ちたはずの透闇くん、病院にきたときには、もういなかったんだ」
「そう、なんだ」
「あと、それだけじゃなくて、演劇の何人か、そのあと、事故にあって、病院通っているひと、たくさんになっちゃてるよ」
妖精ノートを抱えていた。
突然、記憶がよみがえる。
そうだ、たしか預言者レポートで、何人か、未来を視て、たしかに事故が多かったような。
「うう、頭痛い」
「大丈夫、もう少し寝ていなよ。看護師さん、呼んでくるね」
ちょうど廊下をいく看護師さんに、くみさんが声をかけている。
「ありが……とう。くみ、さん」
ひどい眠気だ。
どうして、こんなに眠いのだろうか。
少しだけ、妖精ノートを見ようとして、ページを開く。
増えていた魔法スキルに、深層魔法の内容。
運命のスキルの使いかた。
固有スキルである預言者レポートも進化したようだ。
あ、だめ。
寝てしまいそうになり、仕方なく、妖精ノートを近くのロッカーにしまい、そして、ベットに横になると、看護師さんがきた。
「どう……で……す」
声をきく間に、また眠っていた。
深夜になり、薄暗いなか、起きた。
病室の扉は、半透明なガラスで、そこから廊下の明かりが少し入ってくるようだ。
眠いのは収まったが、まだ転生ショックが残るようだ。
記憶も魔法もなかなか戻ってこない。
ロッカーから、妖精ノートをとりだすと、自動筆記がはじまった。
文字を追っていると、クイーン、郵便、ルーレ師匠、と妖精界の話をして、その後、新魔導書、幸せ緑羽鳥。
続けて描いているのは、たぶんクイーンに送るメッセージだろう。
このノートは、魔法都市のデータセンターにつながり、そのデータをクイーンが読み取り魔法の開発や新薬、都市の構築、緑羽鳥の手配などをしているから、無意識にクイーンになにかのお願いをしているのだろう。
最後まで描き終わると、ノートをとじた。
明日、昼くらいまでに緑羽鳥が、新魔導書を置きに、ここまでくるだろう。
深夜でも、看護師さんが見回りにきて、扉をあけた。
「まだ起きてるの?」
「昼間のうち、寝てたから」
「あ、そうだ」
「なんでしょう」
「三日間くらい検査続くけど、そのあと、少しずつ退院に、向けていくから、相談しながら、進めましょう」
「わかりました」
「それから、はい」
「メモ用紙ですか」
「それに、苦手なものやアレルギー、あと運動できそうか、など書いておいてね」
「そっか、ずっと寝てたから」
「じゃ、オヤスミなさい」
「はい。あ、もう少し起きていてもいいですか」
「早めに寝てください」
「わかりました」
ドアが、閉められる。
そっかぁ、と思う。
たしかに、ひとになってから、苦手なものなど増えたかも、と思うし、運動も少ないから、体調管理をしっかりしないと。
「スポーツ、なにが得意かなぁ」
とりあえず、明日、緑羽鳥のメッセージを受け取ってから、考えよう。
「病院のなかに、鳥が入ってきて、驚くかな」




