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転生女子高生の定期報告、寮と普段のクラし

 りーあの住む寮は、学園からほど近いため、朝はゆっくりできる。

 学園には徒歩で通うが、急いでるときには自転車を使うこともある。


 この日は、りーあは病院の診察が入っているため、午前中は休みにしてもらい、病院にいくことになった。

 もちろん妖精333年生きて転生したりーあは、本当のところは悪い箇所はないのかもしれない。

 けれど、一部記憶喪失なことや精神的に不安定なときがあることで、担当の先生から、定期的にきてください、といわれている。


 そして、魔法を使うことで不安定になる、とはいえないため、記憶が曖昧です、とか、気分が悪いとか、そのときを現す言葉を使うことになる。


  今日もりーあは診察室で向き合った担当の先生に


「記憶はどう?」


 ときかれて、


「まだ思い出せないところがあります」


 と答える。


「夜は寝られてる?」

「大丈夫です」

「転入した学園は慣れてきた?」

「まだ慣れてはいませんが、部活を決めました」

「そう。どの部活?」

「演劇部です」

「そうなんだ。無理しないようにね」

「はい。しばらくは照明係として参加して、演技もそのウチ覚えていきたいです」

「そうか。わかった」



 こうして、午前中の診察を終えた。


 午後の昼食には間に合わせたいため、病院をでようとすると、受付を(とお)った先、診察室の廊下で、暴れているひとがいた。

 みると、学園が一緒の制服の女子高生だ。

 なんとか、つきそいのひとがなだめて、廊下の椅子に座った。


 つきそいのひとが飯嶋(いいじま)看護師さんと話しているため、近くまでいくと、なんとなく知っているひとな気がする。

 たぶん隣のクラスかもしれない。


 試しに声をかけてみる。


「ねえ、同じ学園なんだけど、隣のクラスのくみさん?」


 うつむいていたその子は、顔をあげて、こちらをみた。

 きれいなショートの髪に、制服姿のその子は


「なに?」


 ときいてきた。


「ここに(かよ)ってるんだ。わからないか。りーあって呼ばれてるよ」


 すると、


「りーあさん、少し覚えてるよ。たしか隣クラスに転校してきた」

「そっかぁ。同じ病院なんだね」

「そうだね」

「わたし定期診察なんだ」

「そっかぁ」

「くみさんは、もう長いの?」

「いや、一年くらいかな。あ、呼ばれたからいくね」

「うん、じゃね」



 午後の昼食から学園に戻り、お昼を食べたあと、ちらっと隣のクラスを確認したが、くみさんはまだきていない。

 入院ではなさそうだから、きっと今日は休みなのだろう。


 教室で、とおやくんをみかけて、話してみる。

 とおやくんは、少し長めの髪で、切れ長の目だ。

 シャツの上のほうをパタパタして風をふかしている。


「おはよう」

「おはよう。今日は図書委員あるから、来てくれてよかった」

「そっかぁ」

「部活は休みにする?」

「そうだね」

「りーあさんはときどきいないけど、病院長いの?」

「部分的な記憶喪失なんだ」


 とおやくんは驚いたようだ。


「そうなんだ。それは大変だ」

「体調は大丈夫なんだけど、それで、定期診察にいかなくちゃいけない」

「そっかぁ」



 こうして、あとは午後の授業をうける。

 図書委員会が入っているため、放課後には図書室にいく。

 とおやくんも一緒だ。

 図書室のカウンターで、本の貸し借りをうけたり、図書カードを整頓したり、図書室の先生に言われて、並べ替えをおこなう。



 とおやくんは今日も気づかいをみせてくれて、重たい本を片付けたり、ややこしい分類のところを並べ替えたりしている。

 りーあも負けないように、だんだんと覚えてきた図書室での作業をこなしていく。


 すると、見覚えのある子が入ってきた。そのまま椅子に座って、新刊の棚にあった小説を読みはじめた。

 昼間みた、くみさんだ。

 放課後になってから、きたのだろう。


 軽く手をふってみたが、気づいたかどうかわからない。

 その日は、くみさんは、そのあと一時間くらいいたあと、帰ってしまった。


 とおやくんに、


「昼間くみさんに会ったんだ」


 と話すと、


「くみさんも病院通いらしく、よく図書室でみるよ」


 と教えてもらった。

 あとは、読み終えた返却のところにある本を片付けて、この日は帰りになった。

 少しだけ、とおやくんと話して、門の前でとおやくんとわかれた。



 翌朝、体調もいいしと、朝の寮で準備をして学園に向かう。

 朝の廊下のなかで、くみさんを発見した。



 何か言い争っている(ふう)だ。

 誰かをつきとばしてしまう。

 みると倒れていたのは男の子だった。


 思わず駆け寄ると、くみさんはそのままどこかにいってしまう。


「どうしたの?」


 と、倒れていた男の子にきくとその子は同じクラスの子で


「おはよう、昨日は見なかったけど、体調不良なのってきいただけだよ」

「そっかぁ」


 もしかしたら、気分の浮き沈みが激しいのかもしれない。

 午前中授業をうけて、四時間めが体育で、隣のクラスと合同だったがくみさんはみかけない。

 図書室にいっているのかもしれないと、そう思う。


 昼食時間、少し早めに教室で食べたあと、くみさんを探して、図書室にいくと、やはり本を読んでいた。


「くみさん、おはよー」

「あ、おはよー」

「体育休んだんだね」

「体調よくなくて。それに体育キライ」

「そっかぁ。隣いい?」

「どうぞ」


 座るとき、くみさんの肩にポンと手をかける。

 預言者レポートが発動する。

 とおやくんの時とは違い、今度は意識して魔法を使った。


 くみさんは、どこかで走っていったあと、倒れてしまい、そのまま意識がなくなる、という魔法視だった。


 思い違いじゃなかった。

 なにかくみさんに起こりそうだと思っていたからだ。


 図書室で何気ない会話をしたあと、放課後には、部活にでた。

 照明室でとおやくんに、照明盤(しょうめいばん)の使い方や、演劇で使う発声の仕方を教わる。


「ねえ、部活終わり、少し残らない?」


 とおやくんにきいてみると


「いいよ」


 と答えてくれた。


  部活終わりに、少しだけ残ってもらい、とおやくんにきいてみた。


「くみさんって仲のいい子とかいるのかなぁ」

「あまり知らないな。図書室にはよく来るけど」

「そうかぁ」

「話してみたけど、(あや)うい子だね」

「そうなんだ」


 魔法視のことは話せないため、代わりに、


「友達になろうかなぁ」


 話してみると。

 すると、


「はい、これ」


 と、とおやくんが、カバンからだした本を渡された。


「これは?」


 転生した猫は勇者として、王女とともに戦い、最後幸せになるというライトノベルだった。


 この前、彼女みてたのは、その同じ作者だよ。


「そっかぁ。ありがとう。少し読んでみるよ」


 そして寮に持ち帰り、少しその冒険モノを読んでから寝た。



 翌日、朝にはみかけなかったくみさんは、お昼になり、隣のクラスで話しているところをみかけた。

 廊下で声をかける。


「図書室にいくよ」


 というので、ついていった。


 そして、図書室にはいり、少し物の影になったところで、彼女に魔法を使う。


「リリラリルム リミルレレルラ」


 転生魔法の詠唱だ。

 彼女は驚いたようだ。


「なにいまの?」

「外国に興味あるから、その練習してるの。リリィリミラ語だよ」

「へぇー、なんだか妖精の名前だね」


 言われて、ドキリとしてしまう。

 妖精333年生きていても、やはり言いあてられると、びっくりする。


 けれど、どうやらラノベの話しらしく


「よくそういうのが、でてくるんだ」


 と本の話しになった。

 本のついでに、とくみさんにアイテムをわたした。


「これいいの?」

「話してくれたお礼だよ。おまじないだね」

「わかった。ありがとう」


 わたしたのは、指輪だ。

 チェーンも一緒につけたので、首にもかけられる。

 昼休みの終わりを告げるチャイムがなり、

 くみさんとはそれでわかれた。




 魔法視でみた、くみさんに対する預言が当たったのは一ヶ月後のことだ。


 わたしのクラスの子とは、彼氏だったらしく、その子とケンカをして、廊下を走っていたところ、雨に濡れた廊下で転んで、その後救急車で運ばれていった。


 幸い転生魔法は発動しないですんだ。

 けれど、いつか発動して、彼女は転生するだろう。



 わたしの転生魔法は、一度かけると発動するまで、永続的に効果をたもち、わたしが例え死んでもはずれることはないからだ。



 妖精333年生きて覚えた魔法はそれくらい強力だ。


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