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転生女子高生、花火タイかい後編

 椅子はすでに他のひとが座っているため、公園の手すりに腰をつけて、よりかかる。


「ここで食べよっか」


 とおやくんが持っていた、飲みものをひとつとって、まずは飲みものを飲んだ。

 そのまま今度はチョコバナナを食べて、それからたこ焼きに手を伸ばす。


 花火が上がる。

 三つ四つ。


 そのたびに、公園でも拍手がおきたり、おおーと歓声を上げている。


 ななち、くみさんにわたし、とおやくんと並び、

 手すりの場所で、花火をみて、声をあげる。


「すごーい。形が変わったのあるね」

「あ、いまのハートだったよ」

「もう一回あがるかなぁ」


 たこ焼きを食べ終わり、飲みものを飲んでいる。

 お面のついたとおやくんの横顔をみて、来て良かったなぁ、と思う。

 くみさんは、ななちに何か話しかけている。

 アナウンスがこの公園でも少し聞こえてくる。


「次は、仕掛け花火だって」


 色が変わったり、形を変える花火が上がる。


 りーあは、思う。


 まるで花火は魔法だなぁ。

 形を変え色を変え、ひとびとを魅力し、空にきえていく。

 複数起こるその変化に、ふいにめまいを起こしてしまいそうになる。


「りーあさん大丈夫?」

「うん、大丈夫。感動だなぁ」

「花火いいよね」


 りーあは、飲みものを飲んでから、答える。


「花火もだけど、四人で来られて良かったよ」


 ななちは、お面をはずして、腕につけている。


「そうだよ。みんな無事に来られてよかった。いつか、これもいつか、きっと想い出だね」

「そうだよ。でも、いまはまだその想い出のなかだよ」

「そうなるね」


 四人して笑った。


 花火がまたひとつ上がる。

 しばらくそうして、飲みものを手に、空を眺める。

 とおやくんも、ななちも、くみさんもしばらく無言で、空をみている。



 仕掛け花火が終わり、スターマインに代わると、アナウンスが少し聴こえてきた。


「スターマインが終わると、あとはナイアガラで終わりになるよ」

「早いね」


 カバンについたぬいぐるみを手にしながら、そう言うと


「もう少し観ていよう」


 ななちがチョコバナナを食べながらいう。

 とおやくんは、みんなが持っていた袋を、ひとつごみ袋としてまとめてくれて、足元におく。

 飲みものが空になると、それもとおやくんは受けとってくれた。



 スターマインの音がなり響いている。


 袋のなかから、お好み焼きをとりだして、くみさんが食べている。

 ななちもお好み焼きを食べるようだ。


「ななちよく食べるね」

「歩き回ったから、お腹すいたよ。これくらい平気」

「そっかぁ」


 飲みものが、もうひとつくらいほしいな、と思っていると、とおやくんが、自分の余ったやつ、あるよと飲みものを渡してくれた。


「いいの?」

「どうぞ」

「ありがとー」


 花火の音と光のなか、四人して、この空間を満喫(まんきつ)する。

 りーあは、考える。



 妖精として、長い時間生きたが、夏のこの一瞬のようなきらめきは、転生しないと、わからなかっただろう。

 ひとの時間は長いようでいて、夏のこの一瞬のようなものだ。

 とおやくんもどこかでいなくなってしまう。


 預言者レポートを思いだす。

 とおやくんの預言を変えられるだろうか。


 とおやくんの肩をこづきながら、預言者レポートを再び使う。


 花火の風景から、魔法視の世界になり、そしてとおやくんが転落していく。


 パッと切り替わり、また花火の風景になる。


 またひとつ上がった花火をみながら、とおやくんがいなくなる日も近いのかもと思うと、ふいに涙がでてきた。


「泣いてるの?」

「ううん。感動してるだけ」


  くみさんが、ハンカチを貸してくれた。


「ありがと」


 みると、ななちとくみさんは、お好み焼きを食べ終わっていた。

 飲みものを飲み、スターマインが終わる。


「ナイアガラ花火になります。

 ご来場ありがとうございました」


 花火大会の終わりのアナウンスが流れていく。


「ナイアガラ観ていこっか」


 そうくみさんが言って、ゴミ袋をさげて、公園から歩きだす。

 少し歩くと、河川敷にでて、ナイアガラの明るいあかりが見えてきた。


「ナイアガラ明るいね」

「楽しかったね。良かった来られて」


 立ち止まって、それぞれに、感想を言い合う。


「きっと忘れないよ」

「わたしも。くみさん、ななち誘ってくれて、ありがとう」

「楽しかったよ。ありがとう」


 くみさんが、うなずいている。

 ななちが


「いいえー」


 と言う。

 少しずつ流れていくナイアガラをみながら、花火がさらに上がり、そして消えていく。

 ひと波が動きだすのに、つられて、四人も歩く。


「屋台でなに買う?」

「晩ごはん用に、お好み焼きかな。あと飲みものほしい。さっきのは、もう飲み終えたよ」


 途中のゴミ集めをしてある一角のゴミ箱前にきて、とおやくんは持っていた袋を捨ててくる。

 戻ってきて、再び歩く。

 お好み焼きの屋台をみつけて、そこによっていく。


 四人して、ひとつずつ買った。

 飲みものの屋台も近くにあり、そこでもひとつずつ買っていく。

 ひとの波にのり、ショッピングセンターのある方向に歩いていく。


「次の予定はどうする?」


 ななちが話す。


「カラオケいきたいな」

「カラオケもいいけど、ボーリングも楽しいよ」

「懐かしい、中学ではよくいったね」

「そうなの?」

「そう中学でなぜだか、みんないくんだよね」

「そうなんだ」

「あと、遠くもでかけたいかも」

「遠くってどの辺かな?」

「電車つかって、東京にも、でたいな」

「東京かぁ。いってみたいな」

「じゃあ、計画だけでも、話そ」

「いいね。とりあえずカラオケでしょ」

「わかった」



 歩いて、橋を渡りながら、そんな話しをしていると、やっとショッピングセンターの駐輪場所まできた。

 自転車のかごに荷物をのせて、少しだけショッピングセンターに休憩に入る。


 すぐにでてくることになるが、少しだけ涼めた。


 駐輪場所に集まり、自転車のカギを開けて。


「ここで解散だね」

「そうだね」

「今日楽しかった」

「楽しめたね」

「花火よかった」

「また来年だね」

「いいね」

「あ、飲みものだけ飲んでいこうかな」


 屋台で、買ってきた飲みものを飲んで、また少しだけ、花火の話しをした。


 ゴミ箱に捨てて、戻ってきたところで、


「今度こそ解散」

「そうだね。じゃ」

「じゃ、またね」

「次はカラオケだよ」

「カラオケかぁ。わかった」

「連絡してね」

「わかった。またね」


 四人がわかれて、りーあも寮に帰っていく。



 ほんとに楽しかった。


 きっと、この世界の数ある奇跡のうち、ひとつは花火だったのだろう。


 りーあは、そんな気がした。


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