第5話 楼は女の子を助けるためにと言いますが、結果的に志堂を助けたいようです。
円華の志堂に対する二人称にばらつきがあったので
今後は檜山で統一したいと思います。
檜山 志堂5
2対1。美人1人に対し、普通の男子高校生が一。
それまでの和やかな二人から一変し、志堂が見たことのない真剣な表情に変わる。
シチュエーション自体はもの凄く青春ちっくなのに、志堂は気が気でなかった。
一体自分を置いてけぼりにして、何が始まるのだろう。
そう思っていた所に、口火を切ったのは早百合だった。
「檜山くん、大丈夫?」
「大丈夫って、あーー。」
凄く心配そうに聞いてくる早百合に、志堂は納得をする。
教室内に漂う自分に対するヘイト。そのことを二人は気にかけていたのだ。
「あーーって檜山くんスゲー呑気だね!
え、もしかしてメンタル来てる? メンタルへたってる?
私も花瓶攻撃で正直メンタルボロボロなんですけどーー!!」
「あんなの最低だよ。
確かに過激な趣味をしている檜山くんだけど、あそこまでやる必要ないよ!!」
「ああー菊の花生けてたらしいな。
俺が来る前に優が片付けちゃったからそんなに知らないんだけど。」
わざわざ買ってきたのだろうか菊の花。
相場幾らかは知らないが、わざわざお金を使って他人に嫌がらせをする辺り
スゴいバイタリティだな、とある種の関心さえ覚えていたため、志堂はそれ
スゴいよねーぐらいのノリで返事をすると、女子二人は困惑をした顔をした。
「なんでそんな達観としてるの!
少しは怒りなさい!!」
「というか私達が落ち込んでるのに、
当の本人がキョトンって言うのはどうなんだい!!
私達スッゲーーーーーーーーーーーー責任感じてんだよーーーー!!」
「えぇーーーーーーーーーーーーーーーーーー。」
予想外の反応に志堂は頭を抱えた。
まさか責任を感じてるなんて志堂は思いにもよらなかったからだ。
しかし全く効いていない本人をよそに、外野の二人はますますヒートアップしていく。
「もしかして檜山くんはM属性の持ち主かい?
あれだけやられてるのに、全く気にしていないのはもしかしてご褒美だと!?」
「ちょ、ダメよ!!
考え直して!! 風紀的にも流石に私の許容を越えてるから!」
「いやマジで落ち着け二人共!!」
大きい声で二人を取り敢えず静止すると、志堂は冷静に状況を整理し始めた。
「まず第一に、竹千代と狭間はこないだの件で俺への嫌がらせに
責任を感じている。」
「うん!」
「それで二人は今の状況を何とかしようとして俺に直接相談してきた!」
「合ってるよ。
私達で力になれることがあれば何でもするから。」
「なるほど。俺は全然効いてないから。お前らに出来ることは何もない。
だから速やかに教室に帰れ。」
そして状況を冷静に見極めた結果
志堂は二人にそう告げて教室に戻ろうとした。
「出来るか!!」
「ぐはっ!!」
そうして早百合から水面蹴りを喰らうはめになったのだった。
「ちょ、早百合ーー!!
手を出すのが早いよ!」
「円華、言わないで。我慢が出来なかったの。」
この女すぐ手を出すから本当に嫌。暴力的な意味で。
床から立ち上がりながら志堂はそう思った。
「あ、あのな狭間。取り敢えず俺はドMでも被虐願望があるわけでもない。
だから蹴っ飛ばすのとぶん殴るのは勘弁しろ。いやしてください。」
「じゃあなんで戦うか逃げるかしないの!?
あんな風にされたら誰だって傷つくよ。
我慢するなんてバカけてる!
この下着フェチ野郎!!」
「し、下着フェチとは……。檜山って思っているよりキャラ濃いめだねぇ。
さすがの円華ちゃんもちょっとタジタジだよぉ。」
「いや別に我慢もしてないし、下着フェチでさえねぇよ!!」
誤解が誤解を産むこの状況に、志堂は辟易する。
なぜ女の子二人からこんな詰問を受けなければならないのか。
どこかにタイムマシンでもないだろうか、などと下らない思考まで
志堂の中に浮かんできたその時だった。
「ーー解決しちゃおうぜ、志堂。」
鹿島 楼は志堂の肩に組付きながらそういった。
何しに来やがったこのロクデナシ。
そんな視線で睨んでいると、早百合と円華が口を開いた。
「あ、あの鹿島くん?」
「あーどうもどうも。志堂の鬼ダチの鹿島 楼です。」
「もしかして、もしかしなくても聞いてた?」
「もーバッチリってもんよ。やっぱ鬼ダチのことだからビビット来ちまうぜ。
うんうん、ありゃどうにかしなきゃならねぇだろ。」
いぇーーいとピースサインで楼は答えた。
何がビビットくるだ。どうせその辺で聞き耳立ててただけだろうに。
呆れながら志堂は絡みつく楼に耳打ちをする。
「何のつもりだ、楼?」
「なーにが何のつもりだ、だよ。
いつの間に教室の美人二人と知り合いになってるんだよ。
二人同時攻略ですかああ?」
「お陰様でハイキック喰らうは、顎にストレートぶっこまれるは、散々だけどな。
おまけに学校じゃなんだかえらい嫌われもんになるし。」
「愛すべき平穏の日々より、愛すべき麗しの美女だろうが。」
「喰らってから言え。」
どうやら楼は本能的に女と出会えると機会だと思いやってきたらしい。
早くその腹の中が早百合達にバレますように、と志堂は念入りに念じる。
すると早速効果が表れたのか、円華と早百合が不満の声をあげた。
「お〜い。こんな堂々と目の前で密会しないでくれよ〜。
私ら置いてけぼりか〜い。泣いちゃうぞ、泣いちゃうぞ!」
「鹿島くんも檜山くんのことを何とかしたいってことでいいんだよね?」
「おうよ! ウチの可愛い志堂になんてことしてくれてんだって感じだ。」
楼は颯爽と返事をする。
なに主導権握ってんだおい。と志堂はその話に待ったをかけた。
「楼、勝手に話を進めるな。」
「おいおい志堂〜。女の子を困らせるなって。
彼女ら二人なんか知らんけど責任感じちゃってんだろ?
考え方変えて行こうぜ。お前の頑張りで美人な女の子二人と仲良くなれるっていう風に。」
「そりゃ二人は美人なことは認めるが……。」
「檜山チャラいよ〜!!
草葉の陰のお母さんが泣いちゃうぞ!」
「下着フェチに言われてもなぁ。」
二人共人の話聞かない上に、1人は手が出るのマッハ3なんだが。
志堂がそう言おうとすると、楼は志堂にだけ聞こえるように
「まぁ志堂が今回の件で全く何とも思ってないのは俺らも知ってるって!
でもなぁ、だからって俺のダチに下らねぇことしてくれる連中を
俺は許せるほど気長くねぇんだぜ。」
「まぁお前らが原因だけどな。」」
「それを言っちゃおしまいだぜ。」
志堂と楼は顔を見合わせて笑った。
本当にロクデナシの男だが、嫌いじゃない。
ボソリと志堂は呟いた。
「まぁお前が何とかしてくれるって思ってたけどな。」
「なんか言ったか志堂?」
「何でもねぇよ。面倒臭いけどやってやるか。」