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檜山志堂の黙示録  作者: 山犬
プロローグ 
4/11

第4話 クラスメートから嫌われる志堂を、英雄早百合と人気者の円華が呼び出します。

あの日以降教室の雰囲気が少し変わった。


「きゃー! 早百合様よ!」


「早百合さんあの見た目で腕っぷしも強いとか反則だよな。」


「私達と同じ女の子なのに男子相手に喧嘩で勝っちゃうなんてスゴいよ!

 私も早百合に護身術習おうかなぁ。」


「あの娘こそ正義だよなあ。カリスマっていうか。

 産まれ持ったもんが違うというか。」


「俺も蹴られてみたいなぁ。」


おい最後のやつ。それは止めておけ。

経験者である志堂は切実に思った。

あれは一介の男子生徒ごときに耐えられる代物ではないのだから。

しかしそれを志堂が伝えることはなかった。何故ならそういう状況じゃなかったからだ。


「おい、変態紳士。今日も学校に来てるぞ。」


「全くあれだけの騒ぎを起こしてよくもまぁ学校に来れるよな。」


「檜山くんって無口だからよく分からなかったんだけど、

 むっつりド変態だったのはちょっとがっかりかなぁ。」


「うん。ミステリアスキャラはマトモじゃないと引くよねぇ。」


とクラスメイトの証言である。

というより生の声が志堂の机にまで聞こえてくるのだ。

今クラスでは空前の早百合age現象と志堂sage現象の両方が起きていた。

むしろ志堂の方に関して言えば、sageを通り越してshineまである。

今日も机の上に置いてあった花瓶を、優が片付けてくれたのだ。


「全く不人気もんは辛いねぇおい。」


「まさかあのタイミングでavバレるなんて僕達も思わなかったよ。

 蹴られた瞬間のひーやんには死ぬほど笑ったけど。」


「俺はあやうく野球部の顧問に殺される所だった。

 男からの折檻など微塵も興奮せん。」


「主にはお前らのせいだけどな。」


教室がこれだけの騒ぎになったというのに、4人はまるで平常運転だった。

あまつさえ楼にいたっては

花瓶にこんにゃく詰め込んだらオ○ホールになりそうだと

実践しようとしていた所を志堂がひっぱたいたまである。


「それにしてもひーやん、気にも止めないね。

 流石に花瓶はやりすぎだしセンスがないと思ったけど。」


「気にした所でだろ。我ながら実はメンタル鋼で出来てるんじゃないかと思う。」


「なるほど、やはり貴様にはM男の才能が……。」


「誰かガムテープ持ってきてくれ。

 今すぐにこの男の口をガムテープで塞いでくれる。」


「プレイ用のボンテージテープならあるぜ。」


「なんでプレイ用のがあるんだよ。」


徐に楼が光沢が目立つ赤色のテープを取り出そうとしたので

志堂はカバンの中に押し込んだ。

なんでこれだけオープンな人間達が、竹千代 円華と狭間 早百合の時には

しどろもどろで隠したのだろう。

そんな疑問を思った所で意味などないか、

と思った志堂は本日の晩飯のメニューへと思考を飛ばした時だった。


「檜山くーん! いや檜山殿! 檜山の旦那!!

 ちっとばかし私に付き合ってもらおうじゃねぇかこの野郎!!」


元気のよい離れ目の姫カット。この2-B組100Wの少女、竹千代 円華のお登場でである。

まるで全盛期のマキバ○ーもびっくりの勢いで突撃してきた円華に、変態トリオと共に

その仲間である志堂も面を喰らってしまった。


「ちょ、マドカヤバイって。」


「孕まされちゃうよ!」


「あの3段活用の法則が分からん。」


教室もこの光景に思わずザワザワとにわかに騒ぎだす。

しずかな水面に石をなげたように、確実に波紋が教室に広がった。

あの変態騒動の後、間接的にさえ志堂に絡むことがなかった円華が、

唐突に用があると言って直接話しかけたのだ。

騒動、いや暴動さえも予感させるこの出来事に、内心志堂は不安を覚える。


「あーいや、どうだろう。ちょっとこの後用事が。」


いやいや絶対面倒なことに巻き込まれそうだろう。

どこか遠くを見ながら適当に言って誤魔化そうとすると、

不意に志堂の視界に入った者が居た。勿論 狭間 早百合である。

普段はスゴく綺麗ということで定評のあるのだが、

それはもう刃物のように鋭い視線で志堂を凝視しているのだ。


なんなんだ、その視線は。

アイコンタクト取れるほどお前と絡んだことないんだよ。

というか殴られた顎のことを謝罪しろ。

などと思ったことを口に出来ない志堂。


仕方なしに目の前できょっとーんとした

円華に向き合った。


「と思ったんだけど、何もなかった。うん、何もない。

 だから早急に用件を聞こう。」


「え、ひーやん大丈夫?」


優は心配そうに尋ねてくるが、それに志堂は任せろとしか言えなかった。

早百合の視線は平常運転に戻ってしまったからだ。


「朝比奈くん、だいじょーーぶ!

 五体満足確約だよ!!」


「当然の条件を確約とか言うな。

 よし、とりあえず行ってくるぞロクデナシ野郎ども。」


「任せろロクデナシ共ーー!!」


目の前少女は着いてこい、とばかりにテクテク歩き出した。

志堂は仕方なく、その何も語らない背中に着いて歩く。

まるで将軍の後ろを歩く侍のような気分だ。

やはりクラスカーストにおいて圧倒的強者であるその背中は、

早百合に通ずるものがあり自分よりも絶対に低いはずなのに、

とても大きく見えてしまう。


「着いたぜこの野郎ーー!!」


「イチイチアントニオ○木の真似しなきゃ話せないのかお前は。」


円華の難儀な癖はさておき、志堂が連れてこられたのは校舎最上階の5F。

特別教室の多いこの階層は、授業中以外あまり人がやってこない。

そのため何か必要な話をするときには、ここを利用する人間も多い。

ということは何か大事な話ということだ。


「ここはご存知私のお気に入りの場所でね。」


「いや存じてねぇんですが。」


「えぇええええ!! なんで、どうして?

 私と檜山くんの間柄ってそんな程度のものだったの!?

 円華はとってもハイキングショッキングだよーー!」


「俺はそのハイキングショッキングって造語に既にKO寸前なんだが。」


ひょっとしたら目の前の少女は○リファナでも決めているのかもしれない。

そんな風に呆れていると、後ろから近づいてくる者が居た。


「うげっ。」


「それはこっちの反応。流石に傷つくよ。」


「あれ早百合!!

 どーしたんだよー!」


強力な援軍。狭間 早百合将軍の登場に、思わず志堂は頭が痛くなった。

先程まで鋭い視線を送っていたこの女は、円華を見るなり満面の笑顔を浮かべた。


「円華がこちらの変態に襲われないか心配というのが半分。」


「おい。」


「もう半分は、円華と同じことだと思う。」


「んーーそっか。やっぱそうだよねー早百合。」


役者、出揃う。

なんなんだこの状況。そう思わずには居られない志堂だった。


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