波乱のお茶会
「ルナディール」
肩を叩かれ、ハッとして顔を上げると、義兄が私の顔を見て小さく笑った。
「ようやく気付いたか。迎えに来たぞ」
その言葉に、まだ私が魔研にいることを思い出した私は、急いで本を閉じてすみませんと謝った。
「本に夢中で全然気が付きませんでした……」
「本当にルナディールは本が好きだな」
ふっと目を細め、何の本を読んでいたんだ、と私の膝の上にある本に目を向ける。すると、義兄は少し目を見開き、私の左手をとって、これは?と私の顔を見た。そこで私も、自分の手に魔法陣があることを思い出し、どうしようかと目を彷徨わせる。
まさか義兄が今日も迎えに来るとは思っていなかったので、どうやって説明するか全く考えていなかったのだ。
「えーと、ですね……」
もごもごと言葉を濁し、言い訳を考えていると。義兄が怪訝な顔をしてじっと見つめてくるので、私は観念して正直に打ち明けた。
「ビーヴィンで保護されていたフェンリルと、いつの間にか契約しちゃいまして……」
「なっ!?」
私の言葉に、驚いたように目を見開いた義兄。その様子に、私はつい義兄から目を逸らした。
……うん、分かるよ。なんでそうなるって思うよね。自分でもよく分からないうちに契約しちゃってたんだもん、私も最初すごく混乱した。
しばらく固まっていた義兄は、少しして正気を取り戻し、怪我は?身体に異常は?ととても心配してくれた。だから私がにこりと笑って、元気ですと答えると、義兄はホッとしたように笑った。
それから義兄とともに馬車に乗り、専属護衛の三人とはそこでお別れとなった。
明日はレティーナの家でお茶会をするだけなので、護衛の仕事はないとちゃんと伝えた。その時にライアンは少し食い下がったけれど、俺がついていくから護衛は要らないとスパンと言い放った義兄。切り捨てる言葉に、ライアンも仕方なく頷いて了承してくれた。
「……お義兄さま、明日のレティーナとのお茶会に、本当に参加されるのですか?」
帰りの馬車で、先ほどライアンに言った言葉の真偽を確かめるべく尋ねると。もちろんだと頷いたので、あれは護衛を断る為の嘘じゃなかったんだなと分かった。
「ですが、お義兄さまはお忙しいのではないですか?レティーナとは昔から仲良くしていますし、お家にも行ったことがあります。わざわざ参加されなくても大丈夫ですわ」
友達との会話を義兄に聞かれるのは少し恥ずかしいな、と思いながらそう告げると。義兄は小さく首を振り、
「明日は、その令嬢がお前に誰かを紹介するためのお茶会なのだろう?紹介される人がどんな人か分からない。もし危ないやつだったらどうする?確認のためにも、明日は俺も同行する」
ときっぱりと言い張った。
レティーナが危ない人を紹介するとは思えないけれど、義兄はもう行くと決めてしまったようだ。なんだかすごい覇気も感じるし、これは諦めた方が良いかもしれない、と私は静かに視線を義兄から窓の外へと移した。
私は義兄も参加することになったお茶会に思いを馳せ、明日は一体どんな人が紹介されるんだろうと考えた。できれば、レティーナのような優しいご令嬢であって欲しい。私でも仲良く出来そうな、そんなご令嬢だといいな。
翌日。久しぶりのレティーナとのお茶会が楽しみだった私は、いつもより少し早起きをして身支度を調えた。
魔研に行くのとは違った、社交界用のドレス。今日はレティーナの友人を紹介されるのだ。優雅で素敵なご令嬢であるレティーナにふさわしくあるために、私も今日は立派なご令嬢をしてみせると意気込んだ。
朝食の席に着くと、義兄がちらっと私の方を見て、なぜかスッと目を逸らされた。目を逸らされた理由が分からなくて首を傾げると、
「おや。ルナディールの手、魔法陣が消えていないかい?」
お父さんにそう言われ、え?と私は左手を見る。すると、確かに魔法陣は綺麗さっぱり消えていた。
「……契約取り消しにでもなったのでしょうか」
不思議に思ってそう呟くと、それはあり得ませんとすぐに首を振るお母さん。
「一度契約をしたら、どちらかが死ぬまで契約は解消されません。大方、契約してから一定時間が経つと魔法陣が消える仕組みにでもなっているのでしょう。その方が目立ちませんし、良かったのではないですか」
お母さんの言葉に、なるほどと頷いて私は目の前の朝食を口に運んだ。
……でも、それならもう少し早くに消えて欲しかった。昨日は魔法陣が消えなかったため、夕食の席でお父さんとお母さんにバレてしまったのだ。お陰で質問攻め&お説教のフルコース。本当に勘弁して欲しかった。
別に、私だって契約をしたくてしたわけじゃない。そりゃあクロウが私のペットになってくれれば~とか思ったりはしたけれど。でも、それが契約することになるなんて誰が思うだろうか。
貴女は本当にとんでもないことをやらかしますね、魔法研究所で大人しく研究することも出来ないのですか?と怒られても、しょうがない。私はただ普通にビーヴィンで依頼を受けて、クロウのお世話をして、成り行きでそうなっちゃっただけだ。これは防ぎようがなかった。
むぅ、と昨日のことを思い出しながらご飯を食べていると。
「ルナディール。貴女、魔法陣が消えるならもう少し早く消えて欲しかった、と思っていますね?」
お母さんに鋭く睨まれ、ひっと身体がビクつく。どうして分かったのだろう。人の心を読む魔法でも使ったんじゃないだろうか。
「魔法なんて使っていませんよ。貴女が分かりやすすぎるのです」
また心を読まれ、はぁ、とため息をつかれる私。それからまたお母さんの、もっと表情を取り繕えるようになりなさいという話が始まってしまい、耳が痛くなった。朝から憂鬱である。
「それでは行って参ります」
両親二人に見送られながら義兄とともに馬車に乗り、レティーナの家へと向かう私たち。
今日は天気もよく、お互いの都合が悪くなることもなく、無事にお茶会が行えそうだ。前々から話していた、レティーナの友人を紹介するという約束が叶いそうで本当に嬉しい。
さて、一体どんな人が紹介されるのだろうか。
うきうきとした気分で馬車から降り、レティーナの家へと入った私は、久しぶりに再会した友達に満面の笑みで挨拶をする。
「レティーナ、ごきげんよう。今日はお茶会に招待してくれてありがとう」
「ごきげんよう、ルナディールさま。こちらこそ、ご参加いただき嬉しいですわ」
優雅に淑女のお辞儀をし、それから隣に立つ義兄へ顔を向けるレティーナ。いきなりの義兄の参加に一瞬驚いたような顔をしたけれど、さすがは私がお手本とするレティーナだ。すぐさまにこりと素敵な笑顔を浮かべ、
「お初にお目にかかります、アリステラ・ロディアーナさま。わたくし、ルナディールさまと仲良くさせていただいております、レティーナ・イリタニアと申します」
と淑女の礼をした。完璧である。
「アリステラ・ロディアーナだ。いつも義妹が世話になっている」
義兄は見定めるようにレティーナをじっと見つめていたけれど、こんなに素敵なご令嬢だ、きっと義兄もすぐに警戒を解くに違いない。
「それではルナディールさま、行きましょうか。ご紹介したい友人は、先に部屋で待っていてもらっています」
ふんわりと笑うレティーナに頷き、一緒に部屋へと向かう私たち。
さて、一体どんな人が待っているのだろう。なんだか緊張してきた。
びっくりするぐらい可愛くておしとやかな人だったらどうしよう。この世界は顔面偏差値が高いから普通にあり得る。あぁ、ちゃんと素敵なご令嬢を演じられるだろうか。心配になってきた。
こちらです、と紹介された部屋の前で、すぅっと小さく息を吸う私。スッと音もなく開かれた扉から部屋の中に入ると……私は、テーブルに座っていた人物に驚いて、頭も身体もフリーズしてしまった。
急に立ち止まった私に、ルナディールさま?と不思議そうに首を傾げたレティーナ。義兄も怪訝な顔で立ち止まり、私の顔を見る。でも、私は衝撃が大きすぎて、そして、頭がついていかなくて、何も言葉が出なかった。
椅子に座ったまま、皆と同じく怪訝な顔をして私を見つめる彼女から目が離せない。
「え……と、レティーナ。か、彼女は……?」
なんとか声を発し、レティーナに尋ねると。レティーナはにこりと笑顔を浮かべて、
「はい。こちらが今日、ルナディールさまにご紹介したい友人、ソルユア・ニュイランドです」
と紹介する。ソルユアは席から立ち上がり、ぺこりと淑女の礼をし、
「お初にお目にかかります、ルナディール・ロディアーナ様。ソルユア・ニュイランドと申します」
と挨拶をした。私は頭がパンクしそうになるのを堪えながら、なんとか笑顔を浮かべて挨拶を返す。
「お初にお目にかかります、ソルユア・ニュイランドさま。ルナディール・ロディアーナと申します」
それからレティーナに促され、私はソルユアの正面に座る。じっとこちらを見つめるソルユアに笑顔を浮かべたまま、なんとか心の混乱を露わにしないよう心がけた。
ソルユア・ニュイランド。どうして私がこんなにも取り乱し、パニクっているのかと言うと。それは、私が彼女を知っているからだ。もちろん、前世の記憶で。
……そう。何を隠そう、この、美しいピンクの髪と水色の瞳を持つ彼女こそ……ソルユア・ニュイランドこそ、この作品の真の主人公。悪役令嬢ルートのルナディールと敵対関係にある、ソルユア・ニュイランドなのだ。
でも、どうしてソルユアがここに?友人って、レティーナとソルユアが繋がっていたってことだろうか。まさか真の主人公と出会っちゃうなんて思わなかったから、まだ心の準備が出来ていない。
というか、今は義兄も一緒なんですけれど?作品の中ではルナディールが主人公だったからサラッとしか書かれていなかったけれど、確か、ルナディールが悪役令嬢ルートの時では、アリステラがソルユアを好きになっていたはず。
……ってことは、もしかして、立っちゃうのか?今、ここで。恋愛フラグが!
もし、アリステラがソルユアを好きになり、付き合うことになったら……?それは、悪役令嬢ルートに入っているってことだろうか。というかそもそも、これが悪役令嬢ルートに入ったイベントなのでは?
だって、アリステラとソルユアが出会うって、そういうことだよね?いや、でも作品上これは何でもないただの普通イベントって可能性もある。ソルユアが主人公だと仮定して、そもそも推しに会わないとお話が始まらないのだから。
……え、じゃあ今からお話がスタートするってこと?ここから私がバッドエンドへ行くか否かの未来が決まっていく?いやでも、もう年齢的にお話ってスタートしてるよね?十七歳だし。
あれれ、待って、なんか頭がこんがらがってきた。つまり、これは今どういう状況なの?やばい状況?それとも何でもない普通の状況?
あまりの急展開に頭がついていかなくて、上手く考えがまとまらずにパンクしてしまった私。キャパオーバーでぼーっとしていると。
「あの、ルナディール様?大丈夫ですか?もしかして、ご気分が優れないのでしょうか」
レティーナが心配そうに言った言葉が聞こえたので、ハッと現実に返る。見ると、皆心配したようにじっと私の方を見つめていた。
「え、あ……ごめんなさい、大丈夫よ。少し緊張してしまって」
あははと笑いながらなんとか誤魔化し、一旦思考もリセットする。とにかく、もうソルユアとのお茶会が始まってしまったのだ。ここはドンと構えて乗り越えるしかない。
それに、ソルユアの今の状況が分かれば、私が今どっちのルートを走っているのかが分かるかもしれない。貴重な情報をゲット出来るチャンスだ、しっかり集中しよう。
「ええと……その、レティーナとニュイランドさまは長い付き合いなのかしら」
にこりと笑みを浮かべながらレティーナに聞くと。レティーナは、そうですね……と頬に手を当て、こてりと首を傾げた。
「二年ほど前に知り合い、それから時々こうして会い、親睦を深めておりますわ」
「二年……」
そこでソルユアの方を見ると、ふと、後ろに控える男性が目に入り、首を傾げる。
「そちらの方は?」
見たことがない人だったので尋ねると、
「その方は、ソルユアの護衛で幼馴染みのトーヤです。剣術の腕が良く、とても強いのですよ」
ふわっと花が咲いたように笑って教えてくれたレティーナ。少し頬を紅潮させるレティーナに首を傾げつつ、そうなんだと返す。
それにしても、ソルユアと出会った衝撃に全く護衛に気が付かなかった。というか、ソルユアに護衛がいることも、幼馴染みがいたこともびっくりだ。作品では一切出てこなかった気がするのに。
それとも、名無しキャラでくっ付いていたのだろうか。いや、でも流石に護衛なら気付くはず。だってソルユアは結構出演頻度が多かったから。
この違いは、私が今まで好き勝手に生きてきたから生じたもの?これが良い方向の変化なら良いんだけど……
私はさらなる情報を求めて、また質問をする。
「レティーナはどうして私にニュイランドさまを紹介してくれたの?レティーナはお友達が多いから、他の方を紹介することも出来たはずだけれど……何か特別な理由でも?」
私とソルユアを引き合わせた理由が知りたくて、レティーナを見つめると。レティーナは困ったように笑って、それは……とソルユアの方を見る。
「ソルユアが、ルナディールさまと直接会って聞きたいことがある、と言ったので。上級貴族であるルナディールさまに、下級貴族であるソルユアを紹介するのはどうかとも思いましたが……先日、ルナディールさまが下町でお食事されている姿を見て、身分差を気にしないのではと思い、お茶会をセッティングさせていただきました」
すみません、と謝るレティーナに、驚いて、うそっ!と声を漏らす私。
「私が下町にいるところ、見られていたの!?ちゃんと目立たないようにしていたのに」
信じられない、と目を見開くと、レティーナはきょとんとした後、くすりと笑って、
「どれだけ平民に扮そうと、日頃の洗練された所作までは隠せませんよ。平民と言うには美しい佇まいでしたし、並々ならぬオーラも出ていました。それに、綺麗な金色の髪も目立っていましたよ」
と教えてくれ、私は、そんなぁ~とうなだれた。
私的には、完全に平民になりすませていると思っていたのに、まさかバレバレだったなんて。
美しい佇まいって何、オーラって何。日頃から洗練された所作なんて私にはないよ。だって根は庶民だもん。一体どういうことだろう。
「次下町に行くときは、もっと気を付けないと。今度こそ完璧な平民を演じてみせる!」
拳を握り、そう決意表明をすると。レティーナはおかしそうにくすりと笑い、義兄は、
「完璧な平民を演じてどうする。護衛がいるのだから、下級貴族にでもなりすまして行けば良いだろう」
とつっこんだ。その言葉に、私は分かってないなぁと義兄を見る。
平民と貴族の壁は厚い。実際に下町に行って平民と関わったから分かる、下級貴族といえど、平民にとって貴族は貴族。それじゃあお店の人とお話も出来ないし、気軽にお店にも入れない。注目を集めること間違いなしだ。
「ダメですよ、貴族と平民の壁は分厚いとお母さまも言っていたではありませんか。私は完璧な平民に扮し、皆と何気ない会話をするのです。実際にお店に入って食事をしたり、買い物をしたりするのです。下級貴族に扮しても意味がありませんわ」
自信満々にそう告げ、胸を張ると。義兄はなんだか遠い目をして、
「お前は変なところで頑固だな。こんなに平民に扮したがる貴族は初めて見た」
と呟いた。私はその言葉を褒め言葉として受け取っておき、にこりと微笑む。
すると、そんなやり取りを黙って聞いていたソルユアが、
「ロディアーナ様は何故そんなにお義兄様と仲が良いのですか」
と急に尋ねてきた。私はその質問に驚き、え?とソルユアをまじまじと見つめる。急に部屋の温度が数度下がったような気がして、私はこてりと首を傾げた。
「ええと……わたくしとお義兄さまの仲、ですか?」
一体どうしてそんな事が気になるのだろう、と思いながら聞き返すと、ソルユアはこくりと頷いて、真っ直ぐに私を見つめながら口を開いた。
「私はずっと、貴女に聞いてみたかったのです。なぜ、義兄妹であるにも関わらずそんなに仲が良いのかを。……ロディアーナ様は少し前まで、貴族の間では悪評が漂っていました。聖女様と呼ばれる母を持ち、優秀な宰相である父の娘でありながら魔法の才能はなく、勉学にも乏しい、全く似つかない残念なご令嬢だと」
目を逸らさずに耳が痛くなるような話をされ、つい私の顔は引き攣ってしまう。
確かにそんな噂もあったし、実際、前にお茶会で義兄と揉めていたあの男の人たちにも似たような事を言われたから分かっている。でも、それをソルユアに面と向かって言われると少し心が痛んだ。
だってソルユアは私の推しでもあるし、何より真の主人公である彼女に私が責められている感じがして、悪役令嬢ルートに入ってしまったのかと錯覚してしまう。
心の痛みを紛らわせるために紅茶を飲むか甘いお菓子を食べたい、と思ったけれど、真っ直ぐなソルユアの瞳に見つめられ、私は身体が動かない。自分も真っ直ぐに彼女を見つめ返さなければいけない気がしてならなくなる。
「ですが、最近はそのような話は聞かず、逆にロディアーナ様はとても優秀だという話が貴族の間で広まっています。母と同じ全属性だったとか、令嬢でありながら騎士にも負けない程剣術に長けているだとか、そんな話ばっかり。まるで手のひらを返したような話に、私は信じられませんでした」
表情や声のトーンを変えず、滔々と語るソルユア。
私はソルユアについて何も状況を知らなかったのに、ソルユアは私の事を知っていたみたいだ。いつから認識されていたのかは分からないけれど、果たしてこれは良いことか、悪いことか。どっちに転ぶか分からず、とりあえず私は静かにソルユアの話を聞いた。
「なぜ自分の優秀さをずっと隠し続けていたのか。なぜ自分が義兄より優秀なことを隠し、義兄の評判を上げていたのか。なぜ急に自分が義兄より優秀だと暴露したのか。分からなくて、ずっと考えていました。大好きな義兄のために自分の優秀さを隠し、自分の評判を下げるなら分かります。でも、それならばなぜ自分が優秀だと暴露したのですか?そうしたら大好きな義兄の立場が無くなってしまいます。義妹より能力が劣っている義兄だと言われてしまいます。なぜですか?なぜ、ロディアーナ様は急に自分の能力を暴露したのですか?……そして、なぜ、二人は仲が良いままなのですか?……私には、理解出来ない……」
最後は消え入るような、小さい声で。言いたいことを全て吐き出したソルユアは、少し目を伏せた後、再び顔を上げてじっと私を見つめた。
一気にたくさんソルユアが話したことに驚いたのか、レティーナは軽く目を見開いて驚いたようにソルユアを見つめた。トーヤは少し心配そうにソルユアを見つめており、義兄は思いっきり顔を顰めていた。
なんだか一気にその場の空気が暗くなり、音を立てるのも憚られる程だった。
「……ソルユア・ニュイランドといったか。お前、自分の身分が分かっているのか?そんなことを聞くために忙しいルナディールをわざわざ呼び出したのか。下級貴族でありながらルナディールに紹介される人物、どのような者かと思っていたが……こんな失礼な奴を紹介するだなんて、どうかしているのではないか」
静寂に凜と響く声で、あからさまに嫌悪感を露わにする義兄。久しぶりに冷たい声と瞳を目の当たりにした私は、ビクリと身体が震えた。隣からビシビシと不機嫌オーラが伝わってきて、つい顔が引き攣る。
うわぁ、義兄がお怒りモードだ。どうして。このお茶会で立ったのは、恋愛フラグじゃなくて死亡フラグ?怖い、怖すぎるって。
二人をそんなに睨まないで。悪い人じゃないから。きっとちゃんと話したら仲良くなれるよ。
それにソルユアはちゃんとご令嬢してるよ、気を遣ってるよ。普段はもっと冷たい言葉使ってるし毒舌だから。きっと抑えているんだと思うな。だから怒らないで、ね?
私は心の中で必死に義兄を宥めながら、なんて言葉をかけようか、必死に考えるのだった。
少し長くなってしまいました。次回もお茶会は続きます。それにしても、ようやく真の主人公、ソルユアを出す事が出来ました。彼女が今後ルナディールの人生にどう影響を及ぼすのか、楽しみです。




