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専属護衛とミニお茶会

 家を出発し、先にお城に寄ってから専属護衛の三人と合流して魔研へと向かう私たち。

 今日からは専属護衛が付くということで、義兄にはお城で降りてもらい、お仕事へと向かってもらった。だって、専属護衛三人+義兄ってとても大所帯すぎるもの。


 最初は、私がわざわざ専属護衛の元へ迎えに行くなんて、としぶっていた義兄だったけれど、効率を考えるとこっちの方が良かったのでゴリ押しさせてもらった。

 なぜなら、魔研の敷地に入るためには身分証の提示が必要なので、身分証を持っていない専属護衛は侵入不可能。よって、家から魔研への通り道にあるお城に寄ってから一緒に通勤するという形になった。


 因みに、専属護衛の三人はそれぞれ自分の馬に乗っている。馬車に乗られては?と提案したのに、断られてしまったのだ。お陰で私は一人で馬車に乗ることになってしまった。なんとも寂しい。


 彼ら三人は私の専属護衛だ、と説明をし無事に通された門。馬車を見送り、適当な木に馬を繋ぎ止めた三人とともに魔研へ入る。


「おはようございます」

 にこりと笑って挨拶すれば、おはようございます、と同じく柔らかな笑みで返してくれるノアナ。クナイアは短くおはようと返しただけだ。

「今日はとても大人数なのですね」

 後ろに控える三人に目を向けて、クスクスと楽しそうに言うノアナ。クナイアも怪訝そうに三人を見つめている。


「この人たちはわたくしの専属護衛で、右からライアン、ムルクリタ、トヴェリアと言います。皆さんはお城で騎士として働いていらっしゃるお方なので、とても強いのですよ」

 にこりと笑って彼らを紹介すれば、クナイアは、はぁと一つため息をつきふるふると軽く首を振る。

「お前、本当にとんでもない令嬢だな。まさか魔法研究所に騎士団の護衛を伴って来るとは思わなかったぞ」

 そんな言葉をスルーし、ノアナは目を輝かせて専属護衛の三人を見つめ、

「まぁ、私こんなに近くで騎士様を拝見するのは初めてです!甲冑は着ていらっしゃらないのですね」

 とパチンと両手を合わせた。はしゃぐ姿が可愛らしく、つい頬が緩む。


「はい。流石に甲冑ですと目立ってしまうので、軽装で来ていただきました」

 そこで三人に向き直り、今度はノアナとクナイアを紹介する。

「こちらは受付係のノアナさんとクナイアさんです。ここで身分証を作ったり、依頼を受けたりとお二人にはとてもお世話になっているのです」

 互いに名乗り、よろしくお願いしますと挨拶をした皆。ノアナは終始キラキラした目を三人に向けていた。


「ところで、今日も依頼を見ていくのか?」

 紹介が一段落したところで聞いてくれたクナイア。見ると、カウンターの上には既に依頼書がドサッと置かれており、目を丸くする。

「見ていきますが……もう用意してくださったのですか?」

 私の言葉にメガネをくいっと上げながら、

「毎日裏へ取りに行くのも面倒だからな。カウンター下に常置しておくことにした」

 と発すクナイア。ノアナはその様子にクスクスと楽しそうに笑い、

「せっかく常置しておいたのに、昨日はルナディールさんがいらっしゃらなかったので、少し悲しそうでしたよ」

 とクナイアをからかった。からかわれたクナイアはあからさまに顔を顰めて、そんなことはない、とすぐに否定した。


「わざわざありがとうございます」

 常置しておくことにしてくれたクナイアにお礼を言いつつ、パラパラと依頼書を捲る私。といっても中身は全然変わっていないので、最初の方はすっ飛ばす。


「この最初ら辺にある依頼、破棄などはしないのですか?絶対誰も受けないだろうものや、遙か昔のものもありますけれど……」

 せっかくなら整理してみては、と提案する私に、顔を顰めるクナイア。

「こんなに大量にあるものを整理するだなんて、一体どれほど時間がかかると思っている?それに、破棄など勝手に出来ない。遙か昔の、依頼者が亡くなっていそうなものでも、破棄するには現地へ赴き確認を取らなければいけないんだ。手間暇かけて行うものでもないだろう」

「え、そんなに面倒なのですか……」

 そりゃあ依頼書がどんどん増えてく訳だ。私は一人納得し、なるほどと頷く。


 それにしても、破棄にも確認がいるだなんて面倒だな。特に、下町から出された遙か昔の依頼書の破棄のためだけに、長い時間かけて下町へ行こうだなんて思わないだろう。お貴族様は下町に行きたがらないらしいし。


 それから静かにページを捲り続け、ビーヴィン関連のもので何か良いものがないかなと探っていると。魔獣のお世話のヘルプというピッタリの依頼が見つかったので、私はこれでと指を指す。

「今度はビーヴィンか。あそこの魔獣はよく暴れるからな。怪我するなよ」

 クナイアは注意しながらも依頼受理を行ってくれ、私は意気揚々と自室へ向かった。依頼を受けるのももう慣れたものである。因みに報酬は、魔獣の毛並みを整えるブラシらしい。


 自室に入り、バッグを置いて一応お金だけはポケットにツッコむ。私の部屋を初めて見た三人は目を丸くしていた。

 ……まぁ、そりゃそうだよね。ここだけお城かっていうくらい豪華だもん。


「えぇと、ここに荷物を置いておくので、誰かに留守番を頼みたいのですが……」

 そこで、ふぅむと考え込む私。ここに留守番一人は悲しすぎる。魔獣のお世話のヘルプだもん、絶対に時間かかるし。一人ぼっちでいたら寂しいだろうから……

「留守番はムルクリタとトヴェリアに任せたいのですが、よろしいでしょうか。ライアンにはこのままわたくしについてきて欲しいのです」

 伺うように三人を見れば、三人ともこくりと頷いてくれ、ホッとする。


「ありがとうございます。留守番といっても、恐らく訪ねてくるのはサタン……ええと、眼帯をしたわたくしと同じくらいの年齢の男性だけでしょうし、わたくしが戻るまではゆっくり寛いでくださって構いません。サタンの入室は許可してあるので、訪ねてきたら入れてあげてください。あ、あと、あそこにある棚に入っている紅茶は好きに飲んでください。お菓子も食べたい物があればどうぞ」

 なるべく二人の負担が減るように配慮しながら口にすると、困惑したような表情を浮かべる二人。ライアンも困ったように笑っている。

 私は何か変なことでも言っただろうか、と首を傾げると。あ、あのっ!と勢いよくムルクリタが話し出した。


「寛ぐとかそんな……俺たちは部屋の前で立って見張りますのでどうかお気遣いなく!それに、紅茶とかお菓子とか高そうなものばっかりですし、それに……」

 家具とか汚したら弁償出来ません、と最後に小さく呟くムルクリタ。それに続き、トヴェリアまでもこくこくと頷いている。


 でも、部屋の前で突っ立ってるだけって絶対疲れるし暇だ。私的にはここで寛いでいて欲しいんだけど……寛げない、と言われてしまったら無理強いも出来ない。やっぱりこの豪華な部屋は萎縮しちゃうらしい。

 かと言って、ただ突っ立っているのを命じるのもなぁ……部屋の前だと目立っちゃうし。

 もしそれを見られて、あいつ王族でもないのに騎士の護衛なんてつけていきってんなぁ、なんて思われるのは避けたい。

 あぁでも良い案が思い浮かばない!私の発想力がなさすぎる!もっと柔らかくなって私の頭!


 いきなりの難題に、むむっと一人考え込んでいると。

「あ、あああ、あのっ!俺、別にルナディール・ロディアーナ様の言葉が嫌だったとかじゃなくて、その……お気を悪くさせてしまったのなら申し訳ございませんっ!」

 なぜかムルクリタに謝られてしまい、はい?と聞き返してしまう。意味が分からなさすぎて、つい顔を顰める。

 その様子にビクリとした後、ムルクリタを庇うようにトヴェリアが、

「すみません、ムルクリタはすぐに考えず言葉を発してしまう性格でして。先ほどの発言も、貴女様が自分の言葉のせいでお気を悪くさせてしまったのでは、と心配になり発したものなのです」

 と言った。その言葉に、トヴェリア……と感動したように呟くムルクリタ。

 しかしそのやり取りも、本当に申し訳ないけれど分からなくて、さらに難しい顔をしてしまう。


 つまりなんだ、私の様子を見て、ムルクリタに怒ったとでも勘違いさせてしまったということだろうか。いやでもどうしてそうなるの。

 ただムルクリタは、ここじゃ寛げないっていう自分の意見を言ってくれただけだし、別に怒るようなことでも……ってああ、もしかして私が恐ろしく見えたのか。

 まぁ、悪役令嬢ルートも存在するルナディールですからね。主人公ルートだと可愛いねって溺愛されていたけれど、悪役令嬢ルートだと怖いって恐れられていたし。沈黙していたからそう見えたのかも。


 なんとなくムルクリタが怯えている理由が分かり、にこりと笑顔を浮かべる私。笑顔を浮かべればきっと、怖くはないはず。

「すみません、どうやら勘違いさせてしまったようですね。別にわたくしは怒っていませんから、安心してくださいませ」

 それにしても、専属護衛に怯えられるなんてもってのほかだ。確かに相手からすれば、急に専属護衛に抜擢されただけのよく知らない令嬢だもんね。ライアンはともかく、ムルクリタとトヴェリアとはほぼ初対面みたいな感じだったし。


 よし、これはまず私と専属護衛の仲良し度を上げるべきだ、と考えた私は、すぐさま棚まで行き数種類のクッキーを取り出した。そしてそれをお皿に移し、ことりとテーブルの上に置く。

 それから飲み物がないという大変な事態に気が付き、

「あの、誰か紅茶を淹れられる方はいらっしゃいますか?」

 と尋ねる。声をかけられた三人は、呆気にとられたように私を凝視した後、ハッとしてライアンが、

「一応淹れられます」

 と言葉を発す。その言葉に安心しながら、四人分淹れてもらえませんか?とお願いした。


 未だ困惑した表情を浮かべたライアンだが、紅茶を淹れる姿も様になっていた。見た目が良くて性格も良くて強い、さらに紅茶まで淹れられるとかハイスペックすぎる。


 ことり、と目の前に置かれた四つの紅茶。それを配置し、ミニお茶会の準備が整った私はパチンと手を合わす。

「それでは、皆さんお好きな席へ。わたくしと皆さんの仲を深めるため、ささやかながらお茶会といたしましょう」

 私の言葉に、呆然と立ちつくす三人。三人はどうすれば良いのか分からず、立ったまま硬直してしまった。

「さぁ、皆さん座ってくださいまし。早くしないと紅茶が冷めてしまいます」

 ほらほら、と急かすと、ぎこちない笑みを浮かべながら、おずおずと私の隣に腰を下ろしたライアン。ライアンが座ったのを見て、ムルクリタとトヴェリアも私の正面におずおずと座る。


 皆が座ったことを確認し、紅茶を手に取って一口飲む。お菓子も一口食べ、毒はないですよ、と一応身体で示す。

「わたくしが急にお茶会を開いたのは、皆さんともっと仲良くなるためですわ。さっきみたいに変な誤解を生むのは避けたいですからね」

 にこりと微笑むと、ムルクリタの身体がビクリと跳ねた。

「皆さん、是非とも楽にしてくださいませ。別に敬語ではなくても怒りませんし、何かあれば好きに言ってください。あ、このお菓子も是非。サクサクしていてとても美味しいですよ」

 私が楽しくお茶しよう、と誘っても、微動だにしない皆。お互いがお互いの出方を観察しているようで、なんとも居心地が悪い。


 ……んー、やっぱりお茶会は急だったのかな。でも、皆で美味しいものを食べたら絶対場が和むと思ったのに。そんなに私が怖いのかなぁ。凶悪な顔なんてしてないと思うんだけど。


 この空気をどうしようか、とクッキーを食べていると。

「……あの、ルナディール様。我々に楽にしてくださいと言うのならば、それはルナディール様もですよ。専属護衛の私たちに、そんなにかしこまらなくても良いのです。敬語が不要なのは、貴女様の方です」

 とライアンに言われてしまい、えっと彼を見つめてしまう。


 そんな、私が敬語不要だなんて……だってライアンすっごく偉い人じゃん。私が敬語を使うのは当たり前だ。なのに私の方が敬語不要なの?


 内心困惑していると、そうですよ!とムルクリタも言葉を発したので、視線を向ける。

「俺なんかに敬語は必要ありません!」

 こくこくと頷くトヴェリアに、あ、もしかしてと一つの考えが生まれた。


 ムルクリタとトヴェリアは平民だ。だから、宰相の娘という肩書きだけものすごく立派な私に敬語を使われているせいで、変に緊張してしまったのかもしれない。

 そういえば、トールたちと話すときもそうだった。お母さんも言っていたみたいに、意外と平民と貴族の壁は分厚い。私がかしこまって話していたせいで、よりその壁を分厚くしてしまっていたのかもしれない。

 だから、ライアンは私に敬語を止めるように言ったんだ。もし仲良くなりたいと思っているのなら、敬語は止めた方が良いと思って。

 そして、専属護衛の中で変に溝が生まれないように、同じ立場である自分にも敬語を無くすようにと言ったんだ。きっとそうに違いない。


 まさか私のせいだったなんて、と愕然としながら、なぜ気付かなかったのだろうと深くため息をついた。本当、立派な令嬢になるからって宣言したくせになんて様だ。ライアンに気付かされるなんて。


「……ありがとうございます。それでは、皆さんには敬語無しで話すことにしますね」

 すぅ、と一つ息を吸って、覚悟を決める。

 年上の人に敬語を使わないなんてかなり違和感があるけれど、でも、これも宰相の娘に生まれた者として慣れていかなければ。


「じゃあ、改めて。お茶会を始めよう、ライアン、ムルクリタ、トヴェリア」

 三人の顔を見回しながら、にこっと笑ってそう告げると、三人ともどこか肩の力が抜けたように笑ってくれた。それが嬉しくて、また一口クッキーを食べる。

 気を取り直して、お茶会のスタートだ。

専属護衛の三人と一緒に小さなお茶会をすることにしたルナディール。無事距離を縮められることが出来るのでしょうか。次回も三人との交流です。

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