胸がざわめく舞踏会
王族主催の舞踏会の日がついにやってきた。俺とルナディールは義父と義母に見送られながら、舞踏会会場へと向かう。
しばらく馬車に揺られていると、正面に座るルナディールの顔が少し強張っているのに気が付いた。
「緊張しているのか、ルナディール」
俺がそう聞くと、彼女は少しビクリと身体を震わせて、なんでもないというようににっこりと微笑んだ。
「ええ、まあ。ですがわたくし、今日のためにたくさんお稽古をしましたもの。完璧なご令嬢を演じてみせますので、楽しみにしていてくださいませ」
その笑顔を見て、何故かキュッと心が痛んだ。
絶対に失敗をしてはいけないと、そしてそれを誰かに悟られまいとしている姿が、俺と重なった。
気が付くと俺はルナディールの手を握っていて、
「大丈夫だ。ルナディールが頑張ってきたことは俺も知っている。多少ミスしても俺がカバーするから、もっと気を楽に待て」
と口から言葉が飛び出ていた。
「あ、ありがとうございます……」
お礼を言ったルナディールは、ふいっと俺から視線を外し、外の景色を見始めた。
俺はハッとして、勢いよく手を離す。
いきなり手を握るなんて俺は何をやっているんだ。義妹とはいえ相手は十七歳の女性だ。女性の手を無断で握るなんて、あってはならないことだ。
きっとルナディールは、それに怒って視線を逸らしたに違いない。俺はなんてことをしてしまったのだろう。
俺はドキドキと高鳴る胸を押さえながら、必死に心を落ち着かせようと静かに深呼吸を繰り返す。
それにしても、俺は最近本当におかしい。
ここ数週間、舞踏会が始まるまでの間ずっとルナディールに剣の稽古をしていた。彼女が俺に、剣術を教えて欲しいと直接お願いしてきたからだ。
それから毎日、数時間だけルナディールと一緒に時間を過ごした。彼女の真剣な眼差し、嬉しそうに笑う顔、思い通りに行かなくて少し不機嫌な顔。
そんな彼女を見ていると、何故か俺の胸はキュッと苦しくなり、ドキドキと心臓が高鳴った。
何故かは分からない。けれど、彼女の側にいると幸せだと感じるし、時々苦しくなるのだ。
これが、家族というものなのだろうか。
でも、この不思議な気持ちは、母や父に向けていた感情ではない気がする。一体これはなんなのか。
俺には分からなかったけれど、それでも、ルナディールのことを守りたいと思った。
これから始まる舞踏会には、たくさんの貴族が参加する。ルナディールが嫌な思いをしないよう、しっかり俺が見ていなければ。
俺は気持ちを引き締めて、会場となる城をじっと睨みつけた。
舞踏会。挨拶に来るたくさんの貴族をルナディールと一緒に捌いていると、向こうから王子二人がやって来るのが見えた。
一直線にこちらへ向かってくるのを見て、俺は気を引き締める。王子二人は要注意人物だ。
「ロディアーナ嬢、アリステラ、今日は舞踏会に来てくれてありがとうございます」
笑顔で挨拶に来た王子二人に俺は挨拶を返す。
一瞬こちらを見たけれど、二人とも視線はルナディールに釘付けだ。
「ごきげんよう、フォスライナさま、シューベルトさま。今回は舞踏会にお招きいただきありがとうございます。思っていたよりもたくさんの方がいらっしゃるので、少々驚きましたわ」
「そうですね、今回は少し張り切ってしまいましたから」
ルナディールの言葉によく意味の分からない返事をするフォスライナ。ルナディールも首を傾げている。
一体何を張り切ったのか。俺が考えていると、フォスライナが流れるような動作でルナディールに箱を差し出した。
その流れについていけず、この箱はなんだろうと思っている間にフォスライナは素敵な笑顔を浮かべて、
「ロディアーナ嬢、これは私からの贈り物です。どうか受け取ってくれませんか?」
ととんでもないことを言った。
その言葉にハッとして、やられたと心の中で嘆く。
王子が公衆の面前で令嬢にプレゼントを?これは、貴女に好意がありますと伝えているようなものではないか。
ルナディールは、満更でもなさそうな顔でプレゼントを受け取った。
「ありがとうございます、フォスライナさま。開けてみてもよろしいでしょうか?」
「もちろんです。ロディアーナ嬢が気に入ってくれると嬉しいのですが……」
彼女が丁寧に包装を解くと、箱から水色の花のブローチが現れた。それを手に取り、嬉しそうにブローチを光に翳してみたりしていると、フォスライナは嬉しそうに笑って、
「喜んでもらえたみたいで嬉しいです。よければ、ドレスに着けてあげましょうか?」
なんて信じられないことを言う。
王子がわざわざプレゼントしたブローチを着けてあげるなんて、もはや求婚ではないのだろうか。それとも、そう思う俺がおかしいのか。もうわけが分からなくなってきた。
「良いんですか?」
ルナディールが可愛らしく首を傾げて問うと、フォスライナはスッとブローチを取り、優しくドレスに着ける。
ルナディールは嬉しそうにブローチを見ながら笑って、
「こんなに素敵な贈り物をありがとうございます。わたくし、水色は好きな色ですのでとても嬉しいです」
と感謝を述べた。
お互い幸せそうに見つめ合っている二人は、誰がどう見ても恋仲であるようにしか見えなかった。
俺がジリジリとなんとも言えない感情を抱きながらその様子を眺めていると、シューベルトも勢いよくルナディールの前に箱を突き出した。
「ルナディール、これは俺からの贈り物だ。受け取れ」
まさか、と思ったがそのまさかだった。
シューベルトもルナディールにプレゼントを渡すのか?先程フォスライナが渡したばかりだというのに、これでは王子二人がルナディールを取り合っているようではないか。
周りの人も眉を顰めている。
ルナディールはどうするのだろうと黙って見ていると、彼女はまた嬉しそうにプレゼントを受け取った。
「ありがとうございます、シューベルトさま。開けてみてもよろしいでしょうか?」
「もちろんだ。喜んでくれると、その、嬉しい」
先程と同様、ルナディールが丁寧に箱を開ける。そこから現れたのは、水色の万年筆だ。シューベルトは装飾品ではなく、文房具にしたらしい。
「素敵な贈り物をありがとうございます、シューベルトさま。これ、どこで買ったのですか?フォスライナさまのもそうですけれど、とてもセンスが良くて、わたくし一目惚れいたしました。是非お店を紹介してくださいませ」
心の底から嬉しい、といっている素敵な笑顔にドクンと胸が鳴る。そして、その笑顔が王子二人に向けられているのを見て、ざわざわと心が騒いだ。
「そのブローチは、私がデザインしたものなんです。ですから、世界でたった一つしかありません」
「お、俺のも特注だぞ!せっかく俺がデザインを考えたんだ、大切に使えよ!」
「え、これ、お二人がそれぞれデザインされたのですか……?」
世界でたった一つ。王子二人が、ルナディールのためにわざわざデザインを考えて特注した。
その事実に、身体がズンと重くなって目の前が真っ暗になる。
フォスライナとシューベルトは、きっとルナディールのことが好きだ。そうでなければ、こんなあからさまに好意を示さないだろう。たくさん人がいる中でプレゼントを渡すなんて、周りを威圧しているようにしか見えない。
そこで先程フォスライナが、少し張り切ってしまったと言ったことを思い出した。
……もしかして、張り切ったのはこのためか?私は彼女を気に入っているのですから、手出しすることは許しませんと示すため?
そう考えて、ゾワッと身体が一気に冷えた。このままではルナディールが、どちらかの王子と結婚してしまうかもしれない。
ルナディールはプレゼントを貰った時、少しも嫌な顔をしなかった。それはつまり、少なからず二人に好意を持っていると思って良いだろう。彼女が王子との結婚を望んだら……?
いきなり不安が押し寄せてきた。ルナディールが誰かのものになってしまうのがとても嫌で、怖かった。
俺が呆然としていると、ふとフォスライナが、
「それでしたら三日後、私も一緒に行っても良いでしょうか?」
と何か言っているのが聞こえてきた。
……三日後?三日後は、ルナディールと一緒に下町へ行く日ではなかったか。もしかして、フォスライナもついてくる気か?
俺は急いで彼らの言葉に耳を傾ける。
「ルナディール、俺も行くぞ!面白そうだからな」
「はい!?」
ルナディールの驚きようから見ても、王子二人がついてくるのは喜ばしいことではなさそうだ。
もちろん俺だって嫌だ。せっかくの二人の時間を奪わないで欲しい。それに、これ以上ルナディールと関わられると、本当に彼女が奪われそうで怖い。
そう思った俺は、咄嗟に、
「すみませんが、私たちはお忍びで下町へ行くのです。身分がバレるのは避けたいので、王族であるお二人は遠慮していただけませんか」
と口に出していた。それから、俺はなんとか二人をルナディールから遠ざけようと頭を巡らせる。
「でしたら、私たちもお忍びとして行きますよ。変装をすれば良いのでしょう?」
「変装か、面白そうだな」
しかし、俺の思いは届かなかったようだ。王子二人を遠ざけることはできず、上手く言いくるめられてしまった。
俺とルナディールとの二人っきりの時間を奪われたことや、ルナディールがこのままだと王子に奪われそうなことに気分が重くなる。
ため息をつきそうになるのを必死に堪えていると、急にルナディールがきょろきょろと辺りを見回し始めた。
いきなりの行動に驚きながら、俺はどうしたのかと彼女を観察する。何かあったのだろうか。
しばらくきょろきょろした後、ふと彼女の動きが止まった。ただ一点を見つめ、そして、
「と、尊い……」
と何か呟きながら、よろよろと歩き出す。その異様な光景に不安がよぎる。
どうしたというのだ、一体何があったのだろう。
危なっかしく歩くルナディールを慌てて追いかけていくと、彼女がそろそろとどこかに手を伸ばすのが見えた。
その手の先に何かあるのだろうか。彼女は何を求めているのだろう。
そう思った時、彼女は思いっきり尻餅をついて転んだ。横から急に現れた人とぶつかったのだ。
「ルナディール!」
俺は急いで彼女の元へと行き、手を差し出す。
「大丈夫か?」
ルナディールは俺の手を取って、ゆっくりと立ち上がる。
「はい、大丈夫です」
そしてぶつかった人に、ごめんなさいと謝った。しかし、謝られた人は何も返さず、ただ突っ立っているだけ。
俺はその姿に少し怒りを覚える。ぶつかってきたのはそっちではないか。それなのにルナディールに謝らせ、無視をするとは何事か。
俺がヴェールを被った人を軽く睨みつけていると、周りの人がひそひそと何かを囁いているのが聞こえてきた。気になって耳を傾けてみると、それは全て、目の前に立っているヴェールを被った人の悪口だった。
こそこそと、わざと本人に聞こえるように言う様子にこちらまで気分が悪くなってくる。
俺が顔を顰めていると、ヴェールの人は何も言わずそそくさとその場から立ち去った。その様子を見て笑っていた人たちは、だんだん静かに散っていく。
辺りに重苦しい雰囲気が漂う。全く、この空気をどうしてくれようか。
俺は心の中でため息をつきながら、ルナディールに話しかける。
「……それでルナディール、急にふらふらとどこへ行くつもりだったんだ?」
その言葉にルナディールはハッとしてどこかを見つめ、ガックリと肩を落とした。そして、とても悲しそうな声で言う。
「……とても会いたかった人を見つけたのです。それで、叶うならばお話をと思ったのですが、先程の騒ぎで見失ってしまいました……」
その可哀想な姿に、俺は思わず肩をポンポンと叩いて励ます。
「……そうか」
「まだまだ時間がありますから、きっとまた会えますよ」
「こんな大人数の中から探し出すのは大変だけどな」
そんな俺に対抗するかのように、フォスライナとシューベルトもルナディールに声をかける。
彼女がグッと顔を上げると、俺とバッチリと目が合った。なんとなく王子二人に負けたくないと思い、
「必要なら、私も人探しを手伝おう」
気付いたら俺はそう声に出していた。
「ありがとうございます」
ルナディールがふんわりと笑い、その笑顔にしばらく見惚れていると、フォスライナがスッと間に入ってきた。
「ロディアーナ嬢、私も人探しを手伝いますよ。この場にいる人の大半は知っている人ですから」
「俺も手伝うぞ」
「ありがとうございます」
俺から視線を外し、王子二人に笑いかけた。その様子に、キュッとまた心が締め付けられる。
「それでは、リューク・フォルテラーナさまをお見かけしたら教えてくださると嬉しいです。亜麻色の髪で、黒い瞳の高身長イケメンですわ」
ルナディールの言葉に、俺は思わず固まってしまう。
リューク・フォルテラーナ……?高身長イケメン?ルナディールは、そんな人を探していたのか?彼女の手の先には、リュークという男がいたのか?リュークとは何者だ?彼女とどういう関係だ?彼女はリュークのことが好きなのか?
不安と混乱がぐるぐると渦巻き、呆然と立ち尽くしていると、
「どうかなさいました……?」
と首を傾げて上目遣いに聞いてくるルナディールが視界に入った。
俺はハッとして、急いで笑顔を浮かべる。
「いや、ルナディールの探し人が男の人だとは思わなかったから驚いただけだ。リューク・フォルテラーナだな、見かけたら教えよう」
「リューク・フォルテラーナですね。私も見かけたら教えます」
「誰か知らんが、亜麻色の髪に黒い眼の高身長だな」
「はい、その通りです。みなさん、ありがとうございます」
ルナディールがふんわりと嬉しそうに笑う姿を見て、ざわざわと心が騒ぐ。
「……あの、どうしてルナディール嬢が彼を探しているのか、聞いてもいいでしょうか?」
フォスライナがそう尋ねているのを見て、俺も理由が知りたくてじっとルナディールを見つめる。
「ええと……言うのが難しいのですが、そうですね……。ずっと会いたかったから?一目でも良いから会いたくて、可能ならばお話したり触れたいと思ったから?」
その返答に、パリンと床が崩れるような感覚に陥る。
それってつまり、ルナディールはその男の人が好きということか?彼女がそんなに想いを寄せる人がいるなんて知らなかった。
もしかして、結婚をしないと言ったのはその男をずっと慕っていたから?
俺たち三人がそれぞれ黙っていると、ルナディールはぶんぶんと手を振って、
「違うのです、勘違いしないでくださいませ!わたくしはただ彼とお話してみたいだけなのです!ええと、その……お、お友達。そう、お友達になりたいだけなのですよ!」
と必死に説明してきた。その姿に、今度はガツンと鈍器で殴られたような感覚に陥る。
そんなに必死に言い訳をするのなら、そういうことだろう。彼女はリュークという男の人のことが好き。ずっと慕っていたのだ。
その事実に愕然としていると、ふと優雅な曲が聞こえてきた。どうやら踊りの時間がきたみたいだ。
俺はすうっと大きく息を吸って心を落ち着かせる。今は舞踏会中だ。この気持ちは後で家に帰った時にゆっくり整理すればいい。
気持ちが落ち着いてきたので、ルナディールに踊りを申し込もうと話しかけようとする。せっかくの舞踏会だし、ルナディールとも踊れる良い機会なので、実はこっそり練習していたのだ。
しかし、俺が気持ちを整理している間に先を越されていて、もうフォスライナがルナディールと一緒に踊っていた。
二人が見つめ合って踊っている姿を見て、落ち着けたはずの心がまた騒ぎ出す。
しばらくして一曲が終わり、俺は今度こそと歩き出したが、どこから現れたのか、シューベルトが颯爽と現れてルナディールがその手を取ってしまった。
また嬉しそうに踊りだす姿を見て、もっと心が騒めく。
ようやく曲が終わり、今度はすぐにルナディールの前に行く。今度こそ絶対に俺が踊るのだ。
「私とも踊ってくれないか?」
差し出した手を、にっこりと笑って握り返すルナディール。
曲が始まり、俺はルナディールの背に手を回しながら踊り始めた。
一生懸命ミスしないように踊るルナディールが愛らしくて、そして苦手だと言っていたダンスが上手に踊れているのが誇らしくて、
「ルナディール、上手く踊れているな」
と褒める言葉が自然と口に出た。
「ありがとうございます。……お義兄さまとは緊張せずに踊れますわ。安心して身を委ねられるようなリードのお陰でしょうか」
そんな風に優しくふんわりと笑いながら言うので、思考が一瞬停止する。
俺とは緊張せずに。安心して身を委ねられる。その言葉が嬉しくて、顔が緩んでいくのを抑えられない。
「それなら良かった」
俺がそう答えると、何故かじっとルナディールが見つめてきた。キラキラとした眼差しが眩しい。ずっと見ていられなくて、俺はサッと顔を逸らす。
このドキドキはなんだろう。心臓がうるさくて、曲がよく聞こえない。
気が付くともう曲は終わっていて、
「ありがとうございました」
とお辞儀された。俺は名残惜しくなりながらも、
「こちらこそ」
と礼を言う。
するとルナディールは、くるっと振り返ってどこかへ行こうとした。俺は慌てて追いかけようとしたが、彼女が離れた途端たくさんの令嬢に囲まれて動けなくなった。
俺はもどかしく思いながらも、一人一人丁寧に対応し、解放された頃にはもうルナディールは見当たらなかった。
俺は急いでルナディールを探すために歩き出したが、歩いても歩いてもすぐに令嬢に捕まってダンスの相手を申し込まれる。キリがなくて内心ため息をついた。これではルナディールを探せない。
結局それから、俺は足止めをくらって全然ルナディールと会えないまま舞踏会が終わった。みんなが帰っていくのを横目に、俺はルナディールの名前を呼ぶ。
何回か彼女の名前を呼ぶと、急に誰かが飛びついてきた。誰だ!?と思って下を見ると、それはルナディールだった。驚いて言葉が出ない。
急いで彼女を引き離そうと身体に手を当てると、彼女が小刻みに震えているのが分かった。その姿にドキンと心臓が跳ねる。
どうしたのだろう、俺が目を離している隙に誰かに嫌がらせをされたのだろうか。
俺はどうすれば良いのか分からず、ひとまず背中をポンポンと叩いた。
しばらくそうしていると、どこからか鋭い視線を感じた。顔を上げてみると、遠くでフォスライナがじっとこちらを見ているのを見つけた。笑顔だけれど目が笑っていないその顔が恐ろしくて背筋が凍る。
俺は急いでルナディールをそっと離し、馬車へ戻るために手を差し出した。しかしルナディールは手を取るのではなく、俺の腕にしがみついてきた。
その行動にまた心臓がドクンと跳ねる。俺は高鳴る胸と火照る身体を抑えながら馬車へと向かった。背中には鋭い視線がジリジリと感じられた。
馬車に乗っても、ずっと俯いて小刻みに震えるルナディール。俺はどうすれば良いのか分からず、とりあえず頭を撫でていた。
こういう時、俺はどうすれば良いのだろう。気の利いた言葉をかけられない自分が嫌になる。
ボロボロと涙を流すルナディールに、何も言えず慰めることもできない俺は、ただ無言で頭を優しく撫で続ける。
……何があったのか知らないけれど、ルナディールをこんなに悲しませた人は許せない。どこの誰だか分かったら、それなりの裁きを受けてもらおう。
俺は静かに、ルナディールを泣かせた相手への怒りを募らせる。ルナディールは俺が絶対に守るのだ。こんなことをして、無事でいられると思うなよ。
アリステラ目線のお話でした。次はフォスライナ目線。今回の舞踏会では各キャラ色んなことを思ったみたいですね。傷ついたり悲しくなったのはルナディールだけではないのです。




