序章
コミケ帰りの・・ありさ 彼女は交通事故死した
消えゆく意識の中で 彼女は最初の前世を思い出す
私・・私は・・
「ありさ!」エルフのような耳 長い黒髪の少年が叫んでいた
ああ、あれは・・サリューンさ・・いえ兄さん・・?
意識が混濁する 3つの人生の記憶が廻り出す
ベットで・・
「窓辺の空 あの頃と変わらぬ 青い空だわ」ベットに横たわり アリシアはそう思った
すぐ傍で
泣きそうな顔をする幼い少年に微笑むアリシア
「私のソリシア様」
幼い少年は震える声で呼びかける「母上さま」
幼い少年ソリシアの隣には 黒の騎士サリューンが黙って傍にいた
服装は皆 古代ローマ時代辺りの少々アレンジした衣装 長いエルフのような耳
「アリシア王妃さま」
「サリューン様 私のソリシア様を守ってくださいませ
後の事はどうぞ宜しくお願いいたしますわ」
「特にアジェンダ王様の夜の事 不自由させないでね」何気に腐女子の笑み
「それは・・」声が震えている長い黒髪で美形、十代の姿のサリューン
「勿論、夜伽の事ですわ うふっ」「・・ひ、姫」「うふふ」
病で身体を蝕まれたアリシアは 静かに青空を見ながら微笑んでいた
「綺麗な青い空 どんな時もいつも同じね」
幼い頃の情景を想い起こす 自分が奴隷として働かされていた頃
第一章 奴隷の少女の洗濯
青空が広がる
大きな屋敷の中の庭先
「アリシア ほら洗濯物だよ 9歳の子供だからって容赦しないよ!」
「あんたは黒の貴族の姫じゃない 身分を剥奪された奴隷」
「父親はもう処刑された 母親は一年前に病死
一族たちは病死に自殺に鉱山での事故死一族も一人も、もういない」
怒鳴られて涙を浮かべ 幼い小さな手で沢山の洗濯物を洗う
お父様は無実よ あんなに優しいお父様が
黒の女王、水の女王エルテア様
大貴族のルアンナ公爵を暗殺する計画の首謀者って有り得ない
ようやく洗濯物を洗い終えて、どうにか全て紐や棒にかける
「ふぅ」とため息をつく
もう本を読む事も 大好きな絵を描く事も出来ない
私は奴隷…今は下働きだけど
十三歳になったら 高級娼婦館に売られる
嫌よ 好きでもない男の人に・・・ううっ
ポロポロと泣き出す 長い耳がピコピコと揺れて動く
「アリシア ジャガイモの皮むきの仕事だよ」
「あ、はい」涙を拭き仕事に戻る
厨房で次々と仕事をいいつけられる アリシアは 走り廻っていた
「パンを焼くから 小麦粉の生地を持ってきて」「はい」
「溜まった皿を洗っておけ」「はい、すぐ行きます」
山のように積まれた汚れた皿を洗い 今度は大きな鍋やフライパンを洗うアリシア
「客室の部屋の掃除は まだかい!」「すぐに行きます」
「あ、食事だよ」
食事が投げ与えられる 腐る寸前の果実に わずかばかりの硬いパンと水のみ
眠るのは夜中 起きるのは夜明け前の朝早く そんな毎日が続いていた
第二章 王との出会い
それから月日が流れて 十三歳の誕生日を迎えた
黒の貴族の姫だった時に 皆がお誕生会をしてくれた
お父様もお母様もいた 二人とも、とても優しかった
貴族とは名ばかりであまり豊かではなかったけど
今日、着せて貰った美しい衣装 絹なんて
昨日までは木綿や麻のボロな服だった
これから売られるのね 私は‥嫌よ 死にたい お父様達の処に行きたい
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