百鬼 百鬼廻り道中会話劇
「これはあまり口にしたくはありませんが貴方は捨てられた可能性が高いと思われます」
「あまり口にしたくない人の言い方じゃないよね?なんかもう少し柔らかく言って欲しかったなぁ…」
「私なりの配慮は努力しました」
「努力したならまぁ…?」
「…」
「とりあえず自己紹介させてもらうけど本名はあまり気に入ってないから百鬼兵衞門っていう名前を思いついたからそう呼んで!」
「"ほんみょう"とは何ですか?"なきりへいえもん"?とは何ですか?」
「そんなに気にしないで…そういう年頃と思って…とにかくそう呼んで!」
「わかりました、では"なきり様"で呼ばせていただきます」
「じゃあ次自己紹介!」
「私の名前はもうご存知でしょう?何故改めて名乗らねばならないのです」
「距離を感じるから?」
「なきり様は不思議な言い回しをよくなされますね」
「かもね〜」
「 逋ス縺ョ蟄 と申します。この旅の護衛兼世話係として貴方に付いていくように仰された者です」
「えーっと…まずもう少し肩の力を抜いて話さない?ちょっと疲れてきたから…」
「私は生まれてからこう生きるように教えられてきましたので、それは難しいかと」
「じゃあ今は仕方ないか…」
「…」
「良いこと思いついたんだけどさ、今日から寝る前に一つお話をするってのはどう?長い旅になると思うしさ…」
「それをするとどうなるんですか?」
「仲が良くなる」
「それはあまり良い提案ではないと思います」
「如何に?」
「幼い頃から周りから私は怖がられたからです。私なんかと仲良くなろうとすれば、なきり様は不快な思いをするとそういえばわかりやすいでしょうか?」
「それこそ意味のない心配だ。こちとら一昨日まで軟禁されてたんだ、人と話せただけでも嬉しくて仕方がないんだ」
「?」
「まぁ、まずは試しに聞いてみてよ」
「わかりました…」
「それでは僭越ながら語らせていただこう」
人の数だけ物語はある
それは時に悲劇か
はたまた喜劇が
何はともあれ
それはその人の生きた証である
今宵語るは果たして
どんな物語か