表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
佐渡ヶ島から始まる戦国乱世  作者: たらい舟
「轟襲滅進」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/250

第六十二話 ~静平の戦い「二」 悲戦~

<佐渡国 羽茂郡 西三川 漁港>



「間に合ったか?!」


五百の兵を率いて、俺は西三川の小さな港に到着した。

西三川城は、仲馬おじに防衛を任せた。大砲や鉄砲も持たせたし、相手河原田の全軍が攻めてきても大丈夫なはずだ。無理をしていなければ。


「照詮様!」


そこに隠れるようにして待っていたのは、忍びの紫鹿だった。


「紫鹿! 戦況はどうだ?!」

「西三川城は無事です。食い止めています! でも、でも・・・農民達が!!」



_________________



<佐渡国 羽茂郡 西三川 静平>



とんでもないことが起きていた。

河原田軍は、付近の農民を捕らえると西三川城の前に連れていき、一人ずつ殺していたのだ!


大砲や鉄砲という未知の兵器に攻め手を阻まれ、業を煮やした河原田本間当主の本間貞兼(さだかね)は、卑劣な行動に出ていたのだ。


・・・いや、俺が甘かったのだ。


戦国の世の常套(じょうとう)戦法だ。

相手の城付近まで寄せ、相手が閉じこもれば、付近の村を襲い、畑を焼き、田を荒し、男を殺し、女を犯す。そして、住民を乱取りして引き上げる。その繰り返しで国力を削ぎ落す。

城からの攻撃が届かぬ位置からの挑発。もし城内の兵が出てきたら、それを攻撃する・・・


・・・甘かった。甘すぎた。


何が義の戦いだ。何が佐渡統一だ。

非人道的な日常こそが、戦国の世。これが当たり前。これが当然なんだ。


「クックックッ・・・ ハッハッハッ・・・ アーーーーーーハッハ!!!」


俺は笑い出してしまった。

周囲の供達は立ち尽くした。気が触れたかと思ったかもしれない。


「照詮! いかがした!?」

「環塵叔父・・・ どうやら俺は、綺麗に戦いすぎていたらしい。戦を、芸術か、神聖なものか何かかと、勘違いしていたらしい・・・」

「対馬守様・・・!」


環塵叔父、山本勘助が心配そうに俺に声をかける。大丈夫。俺は冷静だ。

・・・俺はそのような手は使わんぞ。使わなくて済む世に変えるのだ。

佐渡を! 日本を! 世界を!!


俺は、腰に差した刀を引き抜き、天に(かざ)した。陽光が刃に反射し(まばゆ)く光る。


「皆に告ぐ・・・  全軍突撃だッ!!!」

怒りの形相で、数町先の河原田軍に刃を突きつける。

「河原田軍を『殲滅(せんめつ)』せしめる! 髪の毛一本残すな! 捕虜も獲らぬ! ただただ突き進め!!!」

「応ッッ!!」


平原の戦だ。戦略も何もない。ただ武力を叩きつけるのみだ。



「すうぅぅぅすめえええええええええええええええええッ!!!!」



黒色の長槍隊が進む。

弓隊は二斉射した後、槍隊と共に河原田軍との白兵戦に移った。

大砲は近すぎて使えない。大砲隊も白兵戦に移る。


「弥太郎! 本陣は大丈夫だ! お前も行ってきてくれ!」

「・・・わがっだ。いってぐる」


最強の兵を攻め手に回す。

環塵叔父と勘助とレン、長谷川海太郎の4人の供だけを残して、あとは攻めに回した。


「行けぇええ!! 進めぇぇぇ!! 河原田本間を(たお)せえええええ!」



俺は叫んだ。

夢中で。無我夢中で。声が枯れるまで。

涙が枯れるまで・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
[一言] 個人的には一話の文章量が3000無い作品は全然記憶にのこらないのでちょっとと思うのですが 閲覧や人目に止まりやすくなる利点はありますし、ランキングに1日数話更新 1000文字 みたいな作品も…
[一言] これでもかと主人公の甘さを削ぎ落としにくる展開いいなあ。 黒幕である長尾の青瓢箪は史実だと家督を継ぐみたいだが行動を把握している為景が継がすのかどうか。 継がした途端に恐ろしい主人公と敵対す…
[良い点] 二話更新、嬉しいです。 [一言] 敵方が外道の所業を・・・(# ゜Д゜)!!! この状況で照詮は何かが弾けたのか悟ったのか・・・(;゜Д゜)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ