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佐渡ヶ島から始まる戦国乱世  作者: たらい舟
幕間

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第三十五話 ~乱世を生きる者達~

<尾張国 ??? >



ズバッ、ガシャッ、ガチャーン!


「き、吉法師様! お、おやめください!」


襖や屏風を殴ったり蹴ったり。壺はこれで4つ目。また吉法師様の奇行がはじまってしまった・・・

織田家の嫡男として生まれ、怖い者知らず。乱暴で色々な物を壊すお方。その上、「ふむ、こうすればこわれるか」など変なことばかり仰る。齢三つとは言え、このままでは織田家の行く末が危ぶまれる・・・


それに比べ、昨年生まれた弟様のお可愛いこと。

奥方の土田御前様も、猫可愛がり。嫡男様があのようなきかん坊。乳母の乳首を半分噛み千切るほどの癇癪持ちでご苦労されておられた為か。大人しい弟様を可愛がるのも当然のことかもしれぬ。


尾張守護代織田大和守家の分家、清洲三奉行の一つの弾正忠家。守護代織田達勝様の後ろ盾を得て力をつけておるが、あの方が跡取りとなれば・・・


「そとへまいる! ともをせい!」

「お、おまちくだされ! 吉法師様!」


今日も川か森か? また泥だらけになるのか。

儂が諫めて嫡男に相応しい御方に育てあげねば・・

傅役の平手政秀は振り回されっぱなしだった。



<甲斐国 ???>



武田晴信は、不満であった。


昨年の三月に元服し、室町幕府第12代将軍足利義晴から「晴」の偏諱を賜り、名を「晴信」と改めた。従五位下・大膳大夫という官位も戴いておる。昨年の霜月には初陣も華々しく飾り。前途洋々。


だが、不満であった。何がと言うと、正室の三条の方だ。


前の妻はよかった。扇谷上杉家との政略結婚ではあったが、穏やかな娘で一緒にいて居心地がよかった。初子もすぐに宿し、これからといったところだった。だが、出産の際の難産に、子と共に命を失ってしまった・・・


今度の三条は、公家出身。事あるごとに「甲斐の田舎はさもしいのう」と言う。扇で口元を隠し、嫌らしい言い方ばかりしおる。甲斐は山の中じゃ! 華やかな京とは違うに決まっておる!

儂の方を見ず、いつも菊花紋と桐紋が彫られた鏡ばかり見ておる。そんなに京が恋しいなら行ってしまえ! 

夜の方も、事が終われば何事もなかったようにすぐ別れる。これでは儂はただの種馬じゃ。

父の信虎も儂のことを疎んじておる。弟の次郎ばかり寵愛して、儂の方はお構いなしじゃ。


甲斐は貧しい。昨年も川が氾濫し、大きな飢饉が起きた。飢えるから他を襲わねばならぬ。食うか食われるか。これでは安寧な世など夢のまた夢じゃ。

民を飢えさせないよう、川の氾濫を何とかせねば。戦に強くならねば。・・・しかし、身内は儂を癒してはくれぬ・・・


幸い、家臣には有能な者が多い。俺の才を買ってくれる者も多い。

清和源氏の流れをくむ名門、甲斐武田家の「四つ割菱」を継ぐ者として。俺は、民を安んじるために鬼となろう。そのためなら、邪魔となるものは排除する。それが人であろうとも、天であろうとも、実の父であろうとも・・・



<佐渡国 ???>



「ここは・・・?」


船の中。荒れた船室。ああ、私は追手から逃げて・・・


!? 

ターニャはどこ? イゴールは?


脳がまだ揺れている感じ。酷い嵐だった。無事にどこかの海岸に辿り着けただろうか。そして、安全を確保できるだろうか・・・


バン!

扉が開いた。


「お嬢様!」

「ああ! ターニャ! 無事だったのね!」


ターニャだった! 思わず抱き付く。綺麗好きのターニャのサラファンが擦り切れてボロボロ。でもよかった! 生きていたのね!


「イゴールも無事です。でも、他の者は・・・」

「・・・そう。私達のために・・・」

「お嬢様、お気を確かに。まずは命を守らねば。ロマノフ家の血筋を絶やしてはなりません。船室の窓からは陸地が見えます。永明城からは遠く離れ、噂に聞くヤポーニャに着いたかもしれません。お気をつけください。倭寇の住む国。命の保障はありません。慎重に慎重を重ね、隙を見てモスクワ大公国に戻る機会を見つけましょう。その為なら、私はどうなっても構いません。」

「ターニャ。悲しいことを言わないで。貴方がいないと私は・・・」


悲嘆にくれるターニャと私。戻れる可能性が極めて低いことは分かっている。たとえ戻れたとしても、また命を狙われるかもしれない。


そんな中、ドスドスと荒い足音を立てて人が入ってきた。


「お嬢様! ターニャ! 大変だ! 現地民が近寄ってくる!!」


髭面のイゴールだ。ウォッカをいくら飲んでも平気な船長が、血相を変えてこちらを見つめている。それほどに危険ということね。


「分かったわ。言葉は分からないけれど、何とかやってみましょう。そして3人でモスクワまで戻りましょう!」


決して諦めない。ロマノフ家の「双頭の鷲」に誓おう。

アナスタシア・ロマノヴナ。極東の地から私はきっと生き延びてみせる!



<???>


うだるような暑さ。高い波。

しかし、海の色は透き通るように美しい。帆は白く、風がどこまでも私達を運んでくれる。


リスボンを離れ、喜望峰を渡り、インドへ到達。そして目指すはジャカルタ。東南アジア。

香料諸島と呼ばれる島々はすぐ目の前だ。ナツメグやクローブ、メースが私を待っている。


1511年、アフォンソ・デ・アルブケルケ率いるポルトガル人がマラッカを占領した。それから二十

余年。マレー人の水先案内人の案内のもと、テルナーテ、アンボイナなどの香料諸島は我々ポルトガルへの協力を惜しまなくなっていると聞く。持ってきている火器や織物を上手く捌き、香料を満載して帰れば大きな富と名声を得ることができる。


・・・だが、イスパニアやイングランド、他の国々もこの香料諸島を狙っている。

さらにフィリピンのマニラ、台湾の淡水・安平、明の澳門などにも手を伸ばしている。

我らとは異なる文化を持ち、異なる言語を話す人々。顔は平たく髪は黒い。背は低く、貧しい者が多いが、瞳は輝き、生きる力に満ち溢れている。


諸外国との交渉の場を一早く開拓することは、その後の交流や交易にとって非常に大きな利点がある。こちらからすれば二束三文のトンボ玉を夢の宝石のように扱い、生糸や金銀、特産の工芸品など、我らには大きな益のあるものと交換してくれると聞く。者によっては奴隷を手に入れているが、私は好かんな。あれは船を腐らせる。


聞けば、明やフィリピンより奥、東の端には黄金に輝く島々の国があるらしい。黄金郷(エルドラド)とは眉唾物(まゆつばもの)ではあるが、話半分としても魅力は大きい。ナツメグ・メースなどを積んだらインドで卸し、ゴアの商人仲間に運んでもらうか。そしてアルケブス銃や最新式のマスケット銃、カルバリン砲やカロネード砲を多めに積んでいこう。もし武力衝突になれば遺憾なく使えるし、相手が欲しがれば交渉の材料となる。そしてそれらは火薬がないと使えないから、定期的な交易の機会を作ることに繋がる・・・


・・・人生は一度きり。


よし、行ってみるか! 幻の黄金郷(エルドラド)へ!

金髪を風に靡かせたその女は、碧色の瞳を輝かせ、まだ見ぬ島々へ思いを馳せた。

今後のキーになりそうな人の現状です。


4月に入り、忙しくなりました。

更新も遅れそうです。楽しみにしてくださってる方、申し訳ありません。

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― 新着の感想 ―
[一言] 前の章ですこぶる有能な能吏と医師が佐渡のような僻地にいること、モスクワ公国からどういう航路で来たって話と逃亡してもなんでまた極東の島国まで来るか…というか知ってるの?情報収集能力すごくない!…
[良い点] 更新の度に読ませてもらってます [一言] >>モスクワ大公国に戻る 当時まだシベリアを持たないモスクワ大公国でなんでそんな事になるんだ。。。(困惑) >>決して諦めない。ロマノフ家の「双頭…
[良い点] 連投すいません。 感想へのご返信で、一部ネタバレしていただきありがとうございました。 追手は「赤い」人たちではなく、アナ嬢とその旅路にSF要素はなし、と。 日本に迫りつつある金髪女性が…
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