第一話 ~黄金の輝きは、血の匂い~
「金なら、山ほどあるぞ!」
俺は袖から黄金色に輝く塊を取り出した。まさかの黄金の出現に周囲の喧騒は止み、顔を見合わせる者ども。
そう、金ならある。山ほどある!
俺は、この金の力で戦国乱世を生き抜いてやる!
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目覚めるとそこは、みすぼらしい屋内。
柱、藁、囲炉裏。それくらい。ほぼ何もない。
囲炉裏の中で微かな炎がパチパチと音を立てているくらい。静かだ。
ぼんやりとしていると、屋内の一部が開いた。
「あー、やっと起きたっちゃ」
粗末な服、ざんばらな髪をした女の子が、こちらを覗き込んでいる。
5歳くらいだろうか、笑顔が可愛い。こんな小さな子に心配をかけてしまうとは。
「もう3日も寝込んでたから、大丈夫かと思ってたっちゃよ」
3日も? 何が原因だったか……思い出そうとしても頭が痛くて思い出せない……
ガラガラガラッ!
「ふん、生きてたかい。この糞ガキ」
いきなり大柄の太ったブタのようなババアが扉を開けて部屋にズカズカと入ってきた。
「お前みたいな奴は、死んじまった方がよかったんだよ!」
そういうなり、俺の胸倉をつかんで俺の頬を殴った。
ガスッ!
……
いてぇ……
「今日からまた朝から晩まで働くんだ。少しでもさぼったらまた前みたいにぶっ叩くよ! オラは本家の嫁だ。分家のお前がオラのために働くのは当然なんだ。これが当たり前。口答えは許さないよ。・・・何だい、そのツラは。分かってないようだね」
そういうなり、またブタは俺を殴った。金槌で殴られたような感じだ。
…… 何だ? こいつは?
「シズエ様! もうやめて! 照詮がもう死んじゃう!」
「うるさい! レン! お前も分家の娘っ子のクセにオラに指図すんな!」
ガスッ!
レンと呼ばれた娘がブタに殴られて吹っ飛んだ。
「年貢に出す分、それ以上を稼がねえとオラが贅沢できねえべ! オラが正しい! オメエらが間違ってる! 本間の本家が一番大事なのは間違いねえ! オメエらはオラの奴隷だべ! 苦労してるオラのために死ぬまでコキ使われて死ぬのがオメエらの役目だべ!」
…… こいつ、狂ってやがる。
人のナリをしたブタだ。
汚らしい目を俺に向け、また俺を睨みつけた。
「おら、照詮、もう一度死んでみっか!」
ボコッ!
丸太のような腕で力一杯殴られ、俺の上半身が囲炉裏の中に吹っ飛んだ。
ジュゥ!!!
熱い! 肉が焦げる匂いがする!
無我夢中で囲炉裏の灰の中から何かを掴んで灰の中から抜け出した!
「へっ、そのまま焼ければ死体を焼く手間が省けたんに」
ブタはゲラゲラ笑うと気が済んだのか、踵を返して出ていこうとする。
……許せない。
血の涙を流した俺は、手にもった熱い何かを持って走り出した。
後ろを向いて歩くブタの後頭部目掛けてその熱く焼けた塊を、両手で力いっぱいに殴りつけた!
ゴス!!!!
想像以上に重いその塊がブタの後頭部に突き刺さった!
尖った部分がブタの頭にしっかりと当たったようだ。
塊が俺の手から離れ、ブタの頭から床に落ちていく。
すると、
プシュウウ
鮮血が部屋中に四散する。
「こ、小僧・・・本家の・・・ワシを・・・」
そう言って醜い目を俺に向けながら、ブタが倒れた。丸々と太った体が大地に汚らしく崩れ落ちた。
熱く焼けた手で掴んだその塊は・・・途方もなく美しく黄金色に輝いていた。
初めまして。たらい舟と申します。
ノクターンからの引っ越しです。よろしくお願いいたします。
戦国時代の資料を読み漁り、学びつつ所々修正していきまする。
なかなか戦場が遠いですが、☆☆☆☆☆評価のチェック、ブックマーク等、お付き合いいただけたら幸いです('ω')ノ