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インタールード01

申し訳ありませんが、仕事が多忙のため本日の更新はお休みします。

お詫びにジーク大佐が一木の部屋を後にした後の場面をお送りします。

『ダグラス』


 旗艦シャフリヤールで作業していたダグラス大佐の元に、ジーク大佐から通信が入った。


 地上からわざわざ量子通信で秘匿回線で、だ。


『どうしたジーク? 何か問題か?』


『一木司令の仮想空間に行ってきた』


『はあ!?』


 ダグラスは思わず大声を上げてしまった。

 ダグラスが驚くのも無理はない。

 一木の仮想空間への侵入方法は、例の白い女絡みの調査の過程で分かったもので、さらなる調査の後、実際の侵入を試みる予定だったのだ。


 それをどこからか嗅ぎつけてきたジークに、核心部分をぼかしたとはいえ伝えてしまったのはダグラスの落ち度だ。しかし、まさかこんなすぐに実行するとは思ってもいなかったのだ。


「お前な……そういう抜け駆けみたいな事はやめろよ。ただでさえ危ない橋渡ってるんだからな」


 ダグラスの言う通り、この行為は様々な規約や法律に触れる危ういものだ。


 それでも、白い女の正体を知ることがサーレハ司令の秘密に近づく鍵だと感じたダグラスは、必死に白い女の侵入経路の洗い出しを行った。

 その結果、やっとその経路が艦隊のメインシステムを経由したものだと分かったのだ。


『それでどうだったよ? 白い女の痕跡はあったか?』


『確かに師団のSS用仮想空間の一角に枝が伸びてて、そこから一木司令の仮想空間にアクセスが可能になってた。やったのはかなりのやり手だと思うよ。あんまり自然だから、不正アクセスの痕跡じゃなくて元からの仕様かと思うくらいだった』


 一木が仮想空間として自らのコンピューターにアパートの部屋を模した空間を持っているように、師団の歩兵たちにも、師団用のサーバーを用いた待機用の街を模した空間が用意されていた。

 ジークはこの街にアクセスしてから、そこに巧妙に隠された枝、つまりは一木のコンピューターから秘密裏に延ばされたアクセスポイントをたどり、先ほどのように一木の仮想空間に入り込んだのだ。


『それならよし。今度……まあそれはいい。それよりも目的は達したのか?』


 そのダグラスの問いに、ジークは嬉しそうに答えた。


『ああ。完璧に達成した。これからは一木司令とマナ大尉が、僕の居場所になってくれる』


『居場所? お前の言っている事はいつもよくわからないな。ちょっと情報共有させろ……』


 そして数秒後、事情を理解したダグラスは涙を流しながら言った。 


『そうか……あの二人がな。首席参謀としてお前の気持ちに気が付いてやれなかったことは本当に悪かった。アタックしてた男が振り向いてくれないからって、いきなり女の方を落とすお前には少し引いたけど、そうやって前に進めた事は素直に祝福するよ』


 微妙に褒めていない言葉を用いた祝福だったが、ジークは気にしない様子だった。


「ありがとう、ダグラス。じゃあ僕は仕事に戻るよ。皇女様の見学ツアーを作らなきゃ」


『ああ、頑張れよ。姉妹(きょうだい)


 そう言って通信は終わった。


 ダグラスの頬が自然と上がっていき、ニヤニヤとした表情を作り出す。


 あの空回りした師団長と、むっつりジーク大佐がくっつけばいいと思っていたが、どうやら予想以上にいい関係を築けたようだ。


 今の体に違和感を抱えたジークの事を、どうか救ってほしい。

 ダグラスがそう感傷に浸っていると、ダグラスの目の前では会話と通信を中断していたミユキ大佐が不貞腐れていた。


「ジーク大佐と秘匿回線で仲良しトークでやんすか、仲がよろしいっすね」


「いや、すまんって。大したことじゃないんだが……」


 ダグラスの言葉にミユキ大佐はすっかりへそを曲げて、頬を膨らませた。


「あっしが一生懸命反物質弾頭の配備状況を説明してるのに、情報共有を切断までするなんて。どうせあっしの事なんて艦隊雑用係くらいにしか思ってないんっすね」


「違う違う。ジークとな、相談してたんだよ」


 ダグラスは意地の悪い表情を浮かべながら話した。


 その笑顔の対象は実のところミユキ大佐ではなく、他でもない一木なのであるが。


「一木代将の仮想空間に突撃しようって話をな」


 それを聞くと、ミユキ大佐はニヤリとサメの様に笑った。


「……一木師団長の仮想空間に入って……アレをするんっすね。もしやクラレッタも?」


「とっくに知ってるよ。だがこれがアセナにばれるとうるさいだろ? だからこっそりと通信してたんだよ……」


「フフフフフ……楽しみっすねえ」


 こうしてまた一つ、預かり知らぬところで企みに巻き込まれる一木であった。

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