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第11話―3 会談へ

次回で一木君のパートナー事情一旦完結。

勢いでジーク大佐を恋愛キャラにしたのは失敗だったかな……。

というかこういう話はみんな好きなのかな。

よろしければ教えてください。

「一木司令。あなたは優しいから、マナ大尉の事を考えて行動していると思う。けれども、それがマナ大尉の事を傷つけている」


 ビシリ、と指を指しながらジーク大佐は告げた。


「俺の、何が?」


 一木としては問題ないとまでは言わないものの、マナの事を考えているつもりだ。

 こうまで言われるとは思ってもいなかっただけに、困惑した。


「一木司令はまだ前のパートナーの事が好き、だろう。けれどもマナ大尉がかわいそうだからパートナーにしている。それがマナ大尉にはわかるんだよ。それじゃあ、彼女は一木司令に負担を与えるだけで必要とされていないじゃないか。それはアンドロイドにとって何より辛いことだ」


 図星だった。

 ただ、きっかけはそれでもマナという個人をゆっくりとでも好きになっていこうと、一木は努力していたつもりだったのだ。


「俺は……ただ俺のためだけに作られたあの子がかわいそうで……それが…」


 だが、この一木の行動は地球連邦で用いられる感情制御型アンドロイドにとっては間違いだった。

 アンドロイドの個を尊重して、その立ち位置を定めるという行為は、一木にとっては正しい行動に思えたが、彼女たち感情制御型アンドロイドにとっては、自らの役割を人間が決めてくれないことに他ならない。

 

 同期の前潟に言われた通り、マナとの距離を縮めた一木だったが、そこで満足してしまったことで結局のところ、自覚なくマナに負担を与えていた。


「なあ司令、別にパートナーアンドロイドだからってそれしか生き方が無いわけじゃないんだぞ。シャフリヤールを見たろ。別にパートナーがいなくなったってアンドロイドが終わるわけじゃない。別の生き方を見つけることだって出来る。変な同情心で求めもせずに近くにいる方がつらいことだってある」


 思わず、といった様子で殺大佐が口をはさむ。

 一木はなおも考え込んでいた。


 確かに、そうなのかもしれない。

 一木はかわいそうだからという自己中心的な理由で彼女を近くに置いていたのだ。

 その気持ちが伝わっていたとしたら、残酷なことだ。


「だからこそ僕は、マナの立ち位置をはっきりさせるためにあえて一木司令に無理なアプローチをしていたんだけど。すまない、逆に一木司令に負担をかけていたようで……」


『……いや絶対に』


『ミラー……黙っておこう』


 しおらしく謝罪するジーク大佐をよそに、殺大佐とミラー大佐は冷めた目で見ていた。

 最も、一木だけはジーク大佐の言葉を真に受けていたようだが。


「俺は……なんてことを……」


「整備終わりました。失礼します」


 司令官の精神的動揺をよそに、整備員たちが会話の流れを気にすることなく撤収していく。


「……司令官。無理はしなくていいんだよ。君はどうも僕たちを人間として、個人として扱おうと努力している。それも自分を犠牲にしても、だ」


「それには同意するわ」


「俺も」


 うんうんとミラー大佐と殺大佐も同意する。

 これについては一木としても分かろうとはしていた。同期、上司、そして今、部下の参謀にまで言われ続けている事だからだ。


「所詮僕らは地球人類の奉仕種族なんだから、気にせず好きなように扱ってくれればいいんだ。その役割に僕らは甘んじるよ」


「限度はあるけどね」


「一木司令は気を使いすぎ」


「……努力してみるよ」


 一木はポツリとつぶやくと、排熱口からため息のように熱風を出した。


「自分は皇女様たちの様子を聞いてから動画の作業に取り掛かるから。みんなも適度に休みながら作業に取り掛かってくれ。マナの事はデフラグから戻ったら、しっかり話してみるよ」


「ま、それがいいわね」


 ミラー大佐らしからぬ優しい物言いに一木が狼狽える。


「すいません。個人的なことで時間を……」


「いやいや、副官は司令官の非常時には師団の指揮を限定的に執ることもある重要な役職だぞ。それがあんな有様だと大問題だ。さっさと落ち着かせてやれよ」


 殺大佐の指摘にペコペコと頭を下げ、一木は医務室へと去っていった。


 それを見送る三人の艦隊参謀。

 一木が見えなくなると、ぼそりとジーク大佐が口を開いた。


「よし、作戦は順調」


「やっぱり何か企んでんのか?」


「企むとは何だよ。司令官と副官の中を取り持とうという僕の優しさだろう?」


 平然と言ってのけるが、断じてジーク大佐が善意で動くSSで無いことを二人は知っていた。


「だいたいあんたねえ。マナ大尉のために無理のあるアプローチをしてた? 嘘。絶対に本気でアタックして、それであの真面目朴念仁に拒否されたから作戦をかえたんでしょう」


「そうだよ」


 やけににあっさりと認めるジーク大佐。

 表情もさっぱりとしたものだ。


「最初は愛人的ポジションになろうと思ったんだけど、どうもそういう事をストレスなく出来る人間じゃなさそうだからね。別口で攻めることにしたんだ」


「あー、作戦参謀殿の権謀術数には勝てませんよっと。勝手にやってくれ……」


 そうして、気合を入れるジーク大佐を残してミラー大佐と殺大佐は事務室へと向かって歩いて行った。


 一方、医務室でニャル中佐から二人の容態を聞いた一木は……。


「じゃあ、命に別状はないんですね?」


「ええ。目立った外傷もありません。グーシュ殿下は今ぐっすりと眠っている所です。電気毛布で体を暖めてあげたらぐっすりと。ただ……」


「ただ?」


「騎士ミルシャが暴れていて……殿下に会わせろとうるさいので拘束しています」


「大丈夫なのか!?」


「問題ありません。鎮静剤を点滴してますから、いずれ眠るでしょう。司令もどうぞ、お休み下さい」


 一木はそのニャル中佐の言葉に甘え、自分の部屋に戻ることにした。

 これから動画作成に取り掛からなければならないからだ。

 と、そこで一木は忘れていたことがあることを思い出した。


「しまった。殺大佐やシャルル大佐に白い女や女神の事聞くのを忘れたな……」


 だが、まあいいか。

 所詮は自分の見た幻覚か幻……あとで時間があるときで良いだろう。

 一木はそう決めると、ゆっくりと自室へと向かっていった。 


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