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第11話―2 会談へ

さっさとグーシュちゃん出せよ、という方も多いかと思いますが、この話題を今ある程度解決しないとヤバいと私の貧弱なプロットが申しております。

もうしばらくお付き合いください。

「その格好だと決まらないわね」


 ミラー大佐から冷たいツッコミが入る。

 無理もない。宙吊りになって、両手足と装甲を外され内部機構が丸見えになったロボットが偉そうなことを言っても威厳も何もない。

 おまけに背中の方からヨジヨジとマナが登って来て、しがみついている。

 作戦中までは年上のようにふるまっていたのに、まるで出会った頃に戻ったようだ。


「時間が無いんですから整備中なのは許してくださいよ」


「それはいいわ。詳しい交渉に関する事柄は決めてあるし。けれども、治療明けにすぐ交渉するの?」


「さすがにすぐには。会談と言っても、こちらの素性や状況説明。あとは顔見世ですね。自分が軽く挨拶をしたら、休んでいただきます。そのあとはもてなしと施設の案内、あとはルニ子爵にも会っていただきます」


 一木の提案を聞いて、殺大佐が顎に手を当てながら呟いた。


「確かに。好奇心旺盛な皇女様と聞いていたからな。見たこともない食事や物品を見ればこちらへの印象もよくなるかもしれん」


 それを聞くと、横にいたシャルル大佐もぴょんぴょん飛び跳ねながら声を上げた。


「料理ならお任せです! 絶品献立考えましたよ!」


「ならば僕は施設の……マナ大尉降りろ! 案内を担当……こら! しよう」


 背後でマナを下ろそうとしていたジーク大佐も同意した。しかし何をやっているのか……。


 最後にミラー大佐が火のついていないたばこをちゅうちゅうと吸いながら声を発した。


「なら私は見させてもらうわ。豪放磊落で民思いで、行動原理不明でお付きが大事なのに火中に一緒に突っ込む皇女様の本当の姿と考えをね」


 参謀各々の意見と提案を聞いて、一木は満足げに頷いた。

 すると高圧ガスで水分を飛ばしていた整備員が「動かないでください」と注意する。

 一木は申し訳なさそうに頷く代わりにモノアイを動かした。


「とりあえず今後の流れはそれで行きましょう。自分は皇女様に見せる予定の動画を完成させてしまうので、みんなはそれぞれの準備をお願いします」


「動画?」


「データでみると、異世界の人間に地球連邦とか宇宙の概念をわかってもらうのって大変なんですよ。それで、動画を作ってみてもらえばどうかと思って、作っていたんですよ」


「また妙な事を……」


「いや、悪くないんじゃないか? 出来たら師団のサーバーに上げておいてくれ」


 ミラー大佐はあきれ顔だが、他の参謀達からは好評のようだ。

 気をよくした一木は、自分の整備が終わり次第作業に取り掛かる事を伝えると、この場はいったん解散となった。


 だが。


「すまないシャルル。マナ大尉をデフラグ部屋に連れて行ってくれないか?」


 一同が持ち場に戻ろうとしたその時、ジーク大佐がシャルル大佐にマナを連れて行くように頼むと、一木と他の参謀達に目配せをした。

 シャルル大佐だけは気が付いた素振りもなく、マナをひょいと抱えると賑やかに整備室を去っていった。


「はーい。マナ大尉、ゆっくり頭を整理しましょうね♪」


「待ってください……弘和くんが……あんな姿に、ああ、放っておけません……私はあの人のパートナー……」


 二人がいなくなると、途端に静かになった。

 整備室には高圧洗浄機の音と、確認が終わった部位を一木に取り付ける作業音だけが響く。


「それで、どうしたんだジーク大佐? マナには聞かれたくないことが?」


「うーん」


 一木が問いかけると、ジーク大佐は腕組みをして唸った。


「なんで私たちまで……」


「俺たちも聞いていい流れ?」


 ミラー大佐と殺大佐は困惑している。


「一木司令。さっき気が付いたんだけど、もしかして、僕の意図が伝わってないのかな?」


 一木は困惑した。が、すぐに心当たりに行き当たった。さっきマナが泣きついた後、ジーク大佐の言葉をスルーしたことだろうか?


「さっきジーク大佐の言ったことに反応しなかった事か? どういうことだ?」


「僕としては、さっきは僕よりもマナ大尉に優先して声をかけてあげるように仕向けたつもりだったのに、どちらも無視して話を進めちゃったろう?」


「え、あれってそういう事だったのか。変に触れると面倒なことになりそうで……」


「ていうか待ちなさいジーク。あんたもしかして、今まで一木司令にアプローチしてたんじゃなくて、マナ大尉の事をアシストするために悪役を演じてた……って言いたいわけ?」


 ミラー大佐のその言葉を聞いて、ジーク大佐はいかにも心外だといわんばかりの態度をとった。


「当然じゃないか。確かに僕は一木司令の事が好きだよ。パートナーアンドロイドが相手に抱く感情に近い、たぶん恋愛感情に近い物だろう」


 あまりにはっきりとした物言いに一木は恥ずかしくなり顔をそむけたが、再び整備員に怒られた。


「だからと言って、アイデンティティを構築出来ずに苦しんでる幼いSS相手に張り合うほど子供じゃないさ」


 どや顔で言い切るジーク大佐。だが、ミラー大佐と殺大佐は疑わしい表情をしている。

 しかし、一木は違った。


「……そうだったのかジーク大佐……すまないな……俺はてっきり……」


「思ってることは言わないと伝わらない……強襲猟兵と参謀型は違うってことを今回学んだよ」


『おいミラー……こいつら……』


「ジークの意図が読めないからもう少し聞きましょう」


 通信で会話をしつつ、静観を決め込む二人をよそに、一木とジークの会話は続く。

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