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第7話―1 現場にて

またもや二日も休んでしまい、本当に申し訳ございません。

仕事などで帰宅が遅れるとどうしても更新が難しくなってしまいます。


誠に申し訳ございませんが、あくまで毎日更新を目指す不定期更新ということでお願いします。

日に数回更新する方々は本当に凄いなあ……精進します。

猫少佐からの報告によると、皇太子一派の顔役である近衛騎士団幹部のイツシズという男が主導することで暗殺計画を行うことが分かった。

 このイツシズという男。表向きは単なる騎士団の古株だが、いわゆる守旧派の要人に幅広く顔が利き、位自体はそこまでではないものの、皇太子派の中では最も強い影響力を持っているということだ。

 今回の暗殺計画も、子飼いの工作部隊を使って行うという。

 

 しかも、一木達がグーシュ皇女を暗殺計画から救って恩を売ろうとしている時に、よりによって爆殺を狙っているという間の悪さだ。


 帝都から子爵領に向かう途中にあるガイス大橋に爆薬を仕掛けて橋を崩落させ、百メートル以上下の川に馬車ごと落として殺害するという大がかりなものだ。

 ここで問題となるのが、この爆破自体を阻止するかどうかということだ。


 会議で一木は、グーシュ皇女に恩を売る事を目標としたが、これは暗殺が直接的な襲撃や毒殺、遠距離からの狙撃などであった場合を想定していた。

 これらならば、周辺を厳重に監視していれば暗殺自体が行われた後でも無理なく介入して、グーシュ皇女を問題なく助けることが出来た。


 ところがこれが爆殺となると難しくなる。

 爆破前にのこのこ出ていけばなぜ爆破に気が付いたのか、つまりは帝都や周辺でのスパイ行為が露見する可能性がある上に、”暗殺の阻止”という行為自体のインパクトが下がってしまう。


 そして当然ではあるが、爆破後に救助することは大変な困難が伴う。

 正確には救助自体はそこまで難しくないが、さすがに百メートル下へ馬車ごと石造りの橋の残骸と一緒に落下した場合、無事で済む保証がない。


 グーシュ皇女をみすみす死なせてしまっては恩を売るどころの話ではない。

 会議の紛糾間違いなしの難しい判断を迫られる形になった一木だったが、迷っている時間は無い。

 朝にはグーシュ皇女は出発し、その翌日朝にはガイス大橋を通過する。

 どう介入するにせよ、部隊配置や準備を考えれば一刻も早く決断しなければならない。


 悩んだ末に一木が出した決断が、爆破後に救助する事だった。

 当然、反対の意見も出た。


「あんた……みすみす有力な協力者候補を死なせる気なの!?」


 驚きの声を上げたのはミラー大佐だった。

 殺大佐も同様の様だ。


「そもそも情報参謀部がミスったのが原因でこうなってるのにこんなこと言うのもあれなんだが……いくら何でもリスクが高すぎないか?」


 二人の言うことももっともだ。

 爆破ともなればグーシュ皇女の安全は保証できない。落下の衝撃で首を折って死ぬようなことも十分考えられる。

 だが、一木としても決定した理由があった。


「リスクというならば、グーシュ皇女を利用する計画自体がどのみちリスク含みですし、皇太子と交渉する計画でも結局リスクはある……。今回のこの賭けは自棄になったというわけではなく、もっとも確度の高い、グーシュ皇女を協力者に仕立てて帝国に介入していく計画を遂行するための、いわば必要経費と考えました。それにですね……」


「なんだ?」


「今俺たちがやろうとしている事は、いわばこの星の文明の今後を左右する出来事です。そして今後地球連邦との協力者として活動するともなれば、生半可ではない実力や運が必要となる。いわば教科書に載るような英雄的な力が必要とされます」


 そこまで一木が言うと、シャルル大佐がはっと気が付いたように手を叩いた。


「つまり、ここで橋から落ちて死ぬようなら、どのみち今後の活動に必要な天運が足りないと……そういうことですね?」


 シャルル大佐の言葉にミラー大佐は苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべた。

 

「天運なんて非科学的な概念を理由にこんな博打をするの?」


「どのみち! どうあがいてもこの兵力で民衆から敵意を持たれずにこちらの要求をのませようとするなら、博打は必要になるんです。それなら、現状考えうる一番リターンの大きい博打をしましょうよ!」


 この一木の言葉に、反論はなかった。

 とはいえ納得したわけではないだろう。ミラー大佐と殺大佐の表情を見ればわかる。シャルル大佐の表情は、見てもまったく考えがわからなかったが……。


「ひとまず賛同を得られたと判断しますね。もちろんただの受け身ではありません。可能な限りリスクを減らしていきます。ジーク作戦参謀、説明を」


 一木がジークを指名すると、殺大佐とミラー大佐が驚いたような表情を浮かべ、それから一木の方を見て非難するような視線を向けた。


 二人には相談せず、ジーク大佐にだけ考えを聞かせて作戦を練っていたのが気に入らないのだろう。

 一木としては他意はないつもりだったが、正直ジーク大佐が業務上の相談をするうえで一番気が楽だったという要素がないわけではない。


 ジーク大佐は立ち上がると、一木と二人で練った作戦を読み上げた。

 数時間前、「この作戦は二人の初めての共同作業だね」という発言でマナをキレさせた曰く付きの作戦だ。


「簡単に言うと皇女様の救助体制を地上、空中、衛星軌道できっちり構築するだけなんだけど、作戦の肝はそこじゃない。今回一番の問題は、当然だけどグーシュ皇女が橋爆破時の衝撃で死んでしまわないかということだ」


 この発言を聞いた殺大佐が嫌そうな顔をした。

 さすがに付き合いが長いだけあって、もうジーク大佐の作戦が読めたのだろう。


「そこで、この爆破時のリスクを最小限にするため、諜報課と工兵からなる特別任務班を結成。仕掛けられた爆弾を秘密裏に撤去します。そしてグーシュ皇女が死亡する可能性の最も低い、理想的な崩落と落下をシミュレートして高性能爆薬を設置、行列が来たタイミングで爆破します」

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