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第13話―5 ファーストコンタクト

今回で第二章最終話となります。

次回から第三章。ついに帝国と連邦の本格的接触が始まります。

 一木達が盗賊の集団に歩兵一個小隊。降下挺でじゃれついてきたSSや、先程護衛についたSSが所属する小隊を差し向けてから十分程して、彼女たちは帰還してきた。

 両手に各々三つずつの生首を抱えてだ。


 それを見て絶句する一木を、殺大佐は横目で見ていた。

 生首を持ってくるように命じたのは殺大佐だが、正直これは必要な事だった。

 ルニ子爵をどうやってこちら側につけるかについては、他の参謀たちや一木とも意見を出し合い決めてある。

 基本的にアメとムチで言う所の飴をたらふく食わせる方針だが、殺大佐としてはムチも必要だと考えていた。

 そのムチにはこれが丁度いい。

 事前の調査ではこの連中は実質的な子爵領の手駒だった。

 領民を徴兵した連中が騎士団の主力なのを考えれば、腕っぷしで生きていたこの連中は重要な戦力だったはずだ。

 盗賊を退治しておきました、と言いつつこの首を見せれば、ちょうどいい威圧になる。


 だがそれは副産物でしか無い。

 一木弘和という新米師団長に、SSの本質。戦い、殺す者だという姿を見せつける。

 これをやっておかないと、土壇場で甘っちょろい事を言いかねない。

 その結果がどうなるかは、長年の経験で殺大佐はよく知っていた。

 戦いを忌避して、殺しを阻害する救いようのない軍人になるのだ。


「一木師団長。 第三小隊敵を殲滅、命令通り首を切断し持ってまいりました」


 血まみれの小隊長が敬礼すると、背後で感情をオンにした部隊員がニコニコして飛び跳ねながら一木に近づいていった。褒めてほしいのだろう。


(さて、どうする? )


 近づいたSS達に、一木はゆっくり近づくと、指で顔についた血を拭ってやった。


「みんなよくやってくれたな」


(ありゃ? 予想外だ)


 殺大佐は驚いていた。随分とアンドロイドを人間扱いして、あまつさえ歩兵を猫可愛がりしていたものだから、てっきり以前いた師団長のようにいきなり気味悪がるか、諌めるのかとと思ったのだが。


(こいつは本当にめっけもんかもしれん。サーレハのおっさんの人を見る目も侮れないな)


「損傷がないか整備班に見てもらうんだ。その生首は衛生課長に渡しておくんだぞ」


 そういって一木は小隊員を送り出した。

 見送ると、静かに、少し怒った様な声で話し始めた。

 

「これも俺の試験ですか? 随分と回りくどいと言うか……やるならもっとスマートに素早く出来たんじゃないですか? あんなに血で汚しちゃって……かわいそうに」


「悪かったよ。だがこれもあんたを成長させようっていうサーレハ司令の親心さ。感謝するんだな」


 殺大佐の言葉に、一木はモノアイをキュインと音を立てて反応した。マナ大尉の顔を見て一木の感情を推し量る限り、納得しているわけでは無いようだ。


「まあ何にしろ、俺だってある程度覚悟は決めてますから。この程度であの娘達や、もちろん殺大佐、ジーク大佐、シャルル大佐、ミラー大佐、マナ……みんなの事を嫌いになったりはしません」


 一木のこの言葉を聞いて、殺大佐はこの妙なサイボーグの師団長の事が少し好きになってきた。

 勿論、ジーク大佐のそれとは違うが。

 単に修羅場をくぐった経験があるだけでは無く、単にアンドロイドに優しいだけではない。

 胡散臭い疑問点やら札付きやらサーレハの企みやらは、この師団長の人柄とは別問題だ。

 まずは認めてやろう、殺大佐はそう決めた。


「感動の場面の所申し訳ないんだけど……」


 苛ついた様子でミラー大佐が声を上げた。


「そろそろルニの街にアミ中佐が着く頃よ。もう移動はじめたほうがよくないかしら? 」


「そうですね。よし! 」


 一木は掛け声を上げると、60式機兵輸送車に乗り込んだ。

 この車両の強化機兵搭乗部分はオープントップ、つまり屋根が無い。

 一木はそこから師団の面々を見回すと、音量を最大にして叫んだ。


「幸先良くD大隊所属の小隊が敵偵察部隊を撃破してくれた! この勝利に乗って、我々地上降下部隊はルニの街に進撃する! 極力戦闘は避けつつも、地球連邦軍の力を見せつけて、この地に橋頭堡を築く! 総員乗車だ。各員の奮闘を期待する! 」


一木の声に、師団と衛生、憲兵の二個連隊の面々が素早く歩兵戦闘車や輸送車両に乗り込んでいく。


 するとタイミングよく、アミ中佐から通信が入った。街に付き、城門前で子爵の到着を待っているという。

 幸先がいい。殺大佐は笑みを浮かべると、一木の乗る機兵輸送車の車体に飛び乗り、一木の腕を掴んだ。


「危ないですよ、殺大佐には乗る予定の車両が……」


「硬いこと言うな」


 ムスッとした顔のマナ大尉にウインクしていると、ジーク大佐も一木の背中に飛びついてきた。


「師団長の背中は僕が守ろう」


 再び火花を散らすジーク大佐とマナ大尉を見て、殺大佐は思わず声を出して笑った。


 まるで人間の様なこういう関係も、悪くないのかもしれない。


 月と、軌道上の艦隊が見守る中、車列は一路ルニの街へと向かっていった。

正直第二章が長くなりすぎた……大変申し訳ありません。。

実のところ、この小説は二章の内容を頭の中で整理するために始めたものです。

結果的に設定がまとまっただけではなく、グーシュとミルシャという個人的には面白いキャラクターが生まれたので試みは大成功でした。

いずれ全体的な手直しが必要かとは思いますが、キリが良いところまでは出来る限り現在の更新ペースを維持していきますので、これからも応援よろしくお願いします。



御意見・御感想・誤字・脱字等の報告、いつもありがとうございます。


皆さんの閲覧、ブックマーク含め本当に励みになっています。

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