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エピローグ1 艦隊合流

 ザンスカール旅団と049機動艦隊の残存部隊はゲートを爆破した直後、一目散にエデン星系へと進路をとった。

 ハストゥールのゲート生成機能を考えれば、ワーヒド行きのゲート固定装置を破壊した事など足止めにしかならないからだ。

 岩石と薄暗い恒星しかない星系を同じように二つ程潜り抜け、その間乏しい燃料と不調を訴える艦艇への補修を航行しながらこなし、必死に逃げる事四日。


 艦隊はようやく有人星系であるガーナレス星系にたどり着いた。

 

 かつて一木がVRでジーク大佐と共に訓練を行ったサディ王国がある星系だ。

 地球連邦傘下になってから20年以上経過した事もあり政情も安定し、それが故に拡張された設備等も豊富だ。

 政情安定がこの場合災いして駐留部隊や艦隊は少ないが、先行したサーレハ司令や子爵領の領民達を乗せた輸送艦隊と合流するにはうってつけの場所だ。


「どのみち艦艇の補修整備を受けないととてもエデン星系まで持ちませんわ。追撃の一回くらい撃退できるようにならないと……」


 疲れた様子でクラレッタ大佐が言った。

 ボロボロの艦隊をまとめるために無事なたった三人の参謀で働き詰めだったのだから無理もなかった。


「あの太鼓腹と領民達にはきちんと説明と、そして詫びを入れないとな」


 グーシュが言葉と裏腹に見るからにウキウキとした様子で言った。

 どうやら好奇心が先に立っているらしい。

 ガーナレスには大きな宇宙基地もあると聞いているのでアニメやSF映画の様な光景を見れるかもしれないと浮かれているのだ。


 元気で何よりだとアンドロイド達はホッとしていたが、一木はマナや故郷の事で落ち込んでいるのを誤魔化すためのカラ元気なのではないかと内心心配していた。


 だが、そう言った態度もまた上に立つ者には必要なのではないかと、先のグーシュの説教を通じて思っていたので何も言い出せずにいた。


 実のところ、吹っ切れたグーシュが自信の心中を今まで以上に隠さなくなっただけなのだが……。


 そんな多少のすれ違いをしつつ、艦隊はいよいよガーナレス星系の中枢である惑星ガーナレスが見える地点までたどり着いた。

 しかし、そこで見た光景は予想外のものだった。


「おおおおおおおおおおおお! うおおおおおおお! 凄い……凄い大艦隊だ!!」


 グーシュが大きな声を上げてはしゃぎまわる。

 彼女が騒ぐ通り、重巡洋艦オダ・ノブナガ艦橋のメインモニターに映し出される惑星ガーナレス周辺には豊富な筈の基地や要塞に入りきらない膨大な艦艇が停泊していた。


 通常の異世界派遣軍一個艦隊は150隻程度なのだが、なんとガーナレスの周囲には1000隻を超える艦艇がいたのだ。


「なんだこれ……まさか、ルーリアト奪回艦隊なのか!?」


 一木が喜びを隠し切れない様子で声を上げる。

 しかし困惑するクラレッタ大佐が慌てて情報を収集し、そして報告する頃には艦橋内の賑やかな雰囲気は沈痛なものとなってしまった。


「地球や複数の異世界が襲撃を受けた!? この艦隊はその知らせを受けて周辺から逃げてきた駐留軍と駐留艦隊……そして逃げてきた現地協力者……これが……全部」


「本当か!? 地球はどうなったのだ!? というかクラレッタ大佐は知らんかったのか? 量子通信はどうしたのだ?」


 一木とグーシュが驚愕して騒ぎ立てるが、状況はクラレッタ大佐も同じようなものだ。

 事実、状況把握が出来なかったせいで停泊している艦隊が輸送艦ばかりで妙な編成な事にも気が付けていなかった。

 大艦隊に見えたものの実情は逃げてきた小規模な駐留艦隊と避難民を乗せた輸送艦の集まりだったのだ。


「本当ですわ……どうか、どうか落ち着いてくださいまし。私や艦艇の量子通信はボロボロで機能が低下しているのですわ。だから、友軍とここまで接近するまで私も何も知らなかったのです。今詳細な情報を集めているのでもう少しお待ちくださいまし」


 クラレッタ大佐はそう言うと、詳細な情報を聞くべく星系内にいる参謀達に片っ端から通信を繋いだ。

 それによるとクラレッタ大佐達049艦隊の残った参謀達の通信能力の低下は彼女達が反物質兵器の影響を受けたためと言う点もあるものの、地球近くでの大規模戦闘の余波で量子通信装置の中枢管理システムが再起動を余儀なくされたのも原因なのだという。


「どうも対消滅爆発と言うのは空間に我々の想像以上に影響を及ぼす様で、量子間の……」


「それはいい! 地球はどうなったんだ?」


 クラレッタ大佐が報告を行うが、興味ありげなグーシュをよそに一木はその道に逸れた説明を遮った。

 不満げなグーシュをチラリと横目に見た後、クラレッタ大佐は口を開いた。


「それでは……。地球で戦闘があったのはちょうど我々がワーヒドで戦闘状態に入った辺りです。火星を進発した火星宇宙軍を中核とする艦隊が、地球めざし侵攻を開始。地球連邦政府は対応として月面ダイダロス基地の宇宙軍主力艦隊を出撃させ、月から40万キロ先で戦闘状態に……」


 一木達はこの説明で、自分たちの認識が甘かったことを思い知った。

 彼らが全てを失ったこの戦いの最中、事態は星系規模を越えて動いていたのだ。

次回より 状況その1 太陽系戦線 が始まります。

以後ワーヒド以外の状況を描いた後、グーシュ、一木、ルーリアト、ナンバーズ達のその後を書いていきます。

次回更新は4月9日の予定です。

お楽しみに。


※毎章最後恒例のキャラクター紹介は少々お待ちください。

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