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地球連邦軍様、異世界へようこそ 〜破天荒皇女は殺そうとしてきた兄への復讐のため、来訪者である地球連邦軍と手を結び、さらに帝国を手に入れるべく暗躍する! 〜  作者: ライラック豪砲
第五章 ワーヒド星域会戦

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第48話―5 光

『よかった。まだ無事だったんですね』


 空間湾曲ゲートの鏡面が爆炎に包まれたのと同時に、オダ・ノブナガに通信が入った。

 柔らかく、慈愛に満ちた女性の声。


「だ、誰だ……」


 一木の呟きがオダ・ノブナガ艦橋に響く。


 艦隊の誰かの声ではない。

 勿論敵ではない。


 どう考えてもゲートから出現した新手からの通信なのだが、一木に見えるゲート鏡面は今も続く火星艦隊の攻撃により激しい爆炎に包まれている。


「ね、姉さま!」


 そんな中、オダ・ノブナガが端末の身体を震わせながら叫んだ。

 姉さま、というオダ・ノブナガの単語を聞いて思わず一木は対Gマットとアンドロイド達に囲まれたグーシュを見たが、当のグーシュは困惑したように首を横に振っていた。


「違う! 一木……姉さま……ジャンヌダルク姉さまが助けに来てくれたんだ!」


 感極まったオダ・ノブナガが叫んだと同時に、爆炎の中から一隻の大型艦が姿を現した。


 実戦配備艦であるオダ・ノブナガの暗緑色とは違う、試験艦であることを示す灰色の船体の項羽級重巡洋艦だ。艦首に表示された艦名から、それが項羽級重巡洋艦二番艦「ジャンヌ・ダルク」だと知れた。


 しかし、その様子は異様だった。

 艦首の本来重巡洋艦ならば粒子ビーム砲がある位置の、開いた傘の様な形状の装備。

 その装備の先端から広がる光の幕が艦の正面を完全に覆っているのだ。


「なんだあれは……粒子シールドなのか?」


『いいえ、一木代将。これは私が試験中の新装備、『陽電子シールド』です』


 一木が呟いた疑問に対し、通信が安定したのか先ほどよりもはっきりした声で返答が来た。

 一木がメインモニターを見ると「通信先 項羽級重巡洋艦ジャンヌ・ダルク」とあった。


「君は……増援、なのか?」


『無論です一木代将。ですが詳しい事は後程。まずはゲート周辺の敵を追い払います』


 力強い声色でジャンヌダルクが言うが早いか、陽電子シールドを展開したジャンヌダルクはゲート鏡面から勢いよく飛び出した。

 異様な防御能力の新手に驚いていた火星艦隊は、泡を食ったように再び一斉に砲撃を開始するが、陽電子シールドという新装備はそれらを受けても揺らぎもしない。


「凄いな一木……戦列艦のシールドは展開するとほとんど動けなかったのに、あの艦はシールドを展開したまま機敏に動いているぞ。しかも凄い防御能力だ。」


 グーシュが感心したように言う間に、ジャンヌダルクはシールドで砲撃を防ぎつつ連装120mmレールガンや90mmレーザー砲と言った副兵装による攻撃でゲート鏡面のすぐそばにいた標準艦を追い払った。


 鏡面から敵が出てきた場合に備え、火力の集中のために密集していた火星艦隊はひとたまりもない。

 攻撃された艦の損傷は比較的軽かったが、慌てて退避しようとして衝突する艦もいるなど惨憺たる有様だった。


「けど、決定打が無い。ジャンヌダルクはあの新装備のせいで主砲が使えないみたいですわ。メフメトに言って早く支援しないと……」


 希望に満ちたその光景に警鐘を鳴らしたのはクラレッタ大佐だった。

 彼女の言う通り、ジャンヌダルクには重巡洋艦最大の武器である粒子ビーム砲が搭載されていないらしく、副兵装のみでの攻撃では明らかに決定打に欠けていた。


『心配無用。俺がいる』


 野太い男の声で新たな通信が入った。

 通信先は項羽級重巡洋艦一番艦「項羽」とある。


「兄さま!」


 オダ・ノブナガが再び嬉しそうに叫ぶ。

 その叫びに応える様に鏡面から姿を現したのは、艦首にメフメト二世同様に端末を仁王立ちさせた重巡洋艦だった。

 だが、ジャンヌダルク同様ただの重巡洋艦ではない。

 ただでさえボリバル級よりも一回り大きい粒子ビーム砲を搭載している項羽級にあって、一番艦項羽が搭載しているそれはさらに一回り大きく、そして長かった。


『異世界派遣軍残存艦隊及び搭乗者に告ぐ、衝撃に備えよ!』


 項羽が叫ぶと同時に、ゲート鏡面に船体を半分ほど埋めた状態のまま項羽は主砲の発射体制に入った。

 同軸レーザー砲の無い独特の形状のその主砲は、まるでアニメの巨大ビーム砲の様に周囲に放電を起こしたのち、砲口から徐々に光を放ち始めた。


「おい、一体あれは……」


「なんなのだ……」


 一木とグーシュが疑問を口にしたと同時に、周囲のアンドロイド達があたりから対Gジェルやマット、そして乗員への緊急時用電磁波、放射線防御装備をありったけ二人に被せ、そしてその上から自分たちも覆いかぶさった。


「もがが!」


「い、一体なんだ……あれは……」


 一木とグーシュが困惑して慌てる中、聞いたことが無い程慌てたクラレッタ大佐の叫び声が聞こえた。


「おそらく試験中の反陽子砲です! 命中した標的を対消滅させる兵装ですが、一体どれほどの被害が出るかわかりません……グーシュ様は口を半開きにして目をつむってください!!」


 お嬢様口調が無くなる程慌てているクラレッタ大佐を見て、一木とグーシュは好奇心以上の恐怖を感じた。


 オダ・ノブナガ艦橋がバタつく中、項羽は放電現象と無数のエラー、船体の揺れと軋みに耐えながら真っすぐに標的を睨みつけた。


 空間湾曲ゲート正面に位置し、火星艦隊全体に通信を飛ばして項羽とジャンヌダルクを撃滅せんと奔走する、火星艦隊ゲート分派艦隊旗艦標準艦ウメタロウを。


「我が戦友達、そして妹を痛めつけた礼だ。たっぷり受け取れい!!!」


 古代中国の武将がそのままタイムスリップしたような見た目のアンドロイドが真空下で聞こえない咆哮を上げる。

 同時に文字通り宇宙を切り裂く巨大な光の渦が艦首から放たれた。

次回更新は3月22日の予定です。

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