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地球連邦軍様、異世界へようこそ 〜破天荒皇女は殺そうとしてきた兄への復讐のため、来訪者である地球連邦軍と手を結び、さらに帝国を手に入れるべく暗躍する! 〜  作者: ライラック豪砲
第五章 ワーヒド星域会戦

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第48話―1 光

「奴ら突っ込んでくる……ははっ! 無策に突っ込んでくるぞ!」


 火星宇宙軍ゲート方面派遣分艦隊司令のクワベナ少将は旗艦の標準艦ウメタロウ艦橋で歓喜の雄たけびを上げた。


 敵艦隊の残数は僅か17隻で、しかも大半が損耗している。

 対して彼の指揮する分艦隊にはいまだ150隻を超える標準艦がいるのだ。


「ここまで散々にやられたが、ようやく運が向いてきたな。イワノフの野郎とカルナークのチョコレート女が逃した連中を俺たちが倒せば功績は総取りだ」


 状態はクワベナ少将達に有利だった。

 本来標準艦では無人艦である異世界派遣軍側の艦艇に対し真っ向勝負では不利だが、ゲートの突破を図る相手に対してゲート周辺の守備を固めればいい火星艦隊は砲撃に徹すればいいのだ。

 となると、数と火力を活かせる彼らの方が優位なのだ。


「しかし、本当に運が向いてきました。エリザベットも奴らに倒された。となれば責任だけ奴に押し付けて、その上で敵の指揮官を撃破すれば……」


 幕僚の一人が笑顔で言うと、クワベナ少将も嬉しそうに笑った。

 ポリーナ大佐に倒され脳を搭載した胸部だけで脱出したエリザベットを、クワベナ少将は戦闘が近いことを理由に回収していなかった。

 無論、このまま放逐しつつ戦闘終了後に始末して責任を押し付ける気なのだ。


「くくく……我々火人連主流派をコケにした報いは受けてもらうぞ……地球人だろうが機械だろうが異世界人だろうが……な」


「敵艦隊突撃隊形にて高速航行! 恐らく中央部にいる指揮官座上の重巡洋艦を突破させる狙いだと思われます」


「よし! ゲートの向こう側への偵察は一旦中止し、監視部隊を二、三隻残して迎撃態勢だ。戦力を遊ばせずに一気に火力を以って撃破する。オールウェポンズフリー! 全艦対艦核ミサイルを一斉射だ! その後は敵艦隊の旗艦及び指揮官の座乗艦を優先攻撃」


 クワベナ少将はゲート向こうに逃げたアセナ大佐率いるゲート守備隊を追撃するべく行っていた強行偵察作戦を中断するように命じると、ゲートから飛び出してきた敵に対応するための最低限の戦力を残して全艦艇を戦闘配置に付けた。


 ゲートから放射状に丸く広がる陣形を組むと、全艦艇から対艦核ミサイルを撃ち放った。

 1ギガトンという宇宙空間で広域破壊をもたらすために搭載された巨大な水爆搭載ミサイルが100以上高速でワーヒド最後の異世界派遣軍艦隊へと飛翔していく。


 惑星が崩壊する程の破壊力が瞬く間に一木達に襲い掛かった。






『敵艦隊より大型ミサイル発射! 数114!!』


 最前衛の軽巡洋艦モリオカから警告が発せられる。

 しかし、これは予想通りの動きだった。

 火星艦隊が用いる対艦核ミサイルは破壊力が大きすぎて、異世界派遣軍艦隊が近づきすぎてからでは使えなくなるうえに近接戦闘では重しになるからだ。

 撃つならばこの距離以外にはない。


『モリオカ及びミケ両艦は前衛にて全力迎撃! 撃ち漏らしはマンダレーとオダ・ノブナガで防ぐ……他艦は後続にて待機、突撃陣形を維持せよ!』


 メフメト二世はこの読み切った攻撃に対して、軽巡洋艦と護衛艦を前衛に立たせての迎撃を命じた。

 この点は一般的な対応だが、次いでの判断は異質だった。

 なにせ、本来最も守るべき旗艦のマンダレーと一木達が座上するオダ・ノブナガを前に立たせ、前衛の撃ち漏らした核ミサイルを迎撃する役割を任せたのだ。


「だが効果的だ。あのメフメト二世という重巡洋艦やるなあ」


 オダ・ノブナガ艦橋でグーシュが感心したように頷く。

 戦闘配置のために再び対Gスーツと保護マットに包まれた彼女を、隣にいる一木が心配そうに眺めていた。


「大丈夫かグーシュ……こわ、怖くないか?」


「お前の方がヤバそうだな。まあ、大丈夫ではないが……どのみちわらわにはどうしようもないし、どうしようもないことはすぐに諦める質でな。まあ、大丈夫だろう。今言った通りメフメト二世はヤリ手だ。護衛対象ながら戦力的には役に立たないマンダレーとオダ・ノブナガ両艦をミサイルの迎撃と言う危険の少ない役割に充て、突破に必須の重巡洋艦部隊を温存する。こういう割り切りが出来る奴は強い」


 グーシュの言う通り、マンダレーは地上支援装備のため宇宙空間ではあまり役に立たず、オダ・ノブナガは流石に主戦力として戦わせるわけにはいかない。積極的に使うなら今しかないのはこちらも同様だ。


 寝袋に包まれたようなグーシュのドヤ顔をしばし眺めていた一木は小さく頷くと、正面のモニターにモノアイと顔を戻した。

 メインモニターには戦況図と敵ミサイルの残数が表示されており、流れる様に減っていくその数値はあっという間にゼロになった。映画やアニメの様な至近弾で艦が揺れるような事もなく、なんら戦闘らしい事は起きずに迎撃は終わった。


「おお、これなら……」


 一木が希望に満ちた声を上げるが、メインモニターからは再びモリオカの警告が響いた。


『敵艦隊、主砲にる遠距離砲撃を開始。250mmレールガンによる攻撃と思われます』


『陣形そのまま。距離8000までは維持せよ』


 メフメト二世はそれに対して維持を命じた。


「ノブナガ、クラレッタ大佐、あと殺大佐……いや動けるアンドロイドは全員近くに来てくれ」


「グーシュ?」


 それを聞いたグーシュは突然艦橋内にいたアンドロイド達を全員呼び集めた。

 マナ大尉は既に一木の脇に控えていたので動かなかったが、他の面々は下半身だけの殺大佐まで全員が何事かと近寄ってきた。


「……怖いから手を握ってくれ」


 対G装備にグルグル巻きにされたままでグーシュははっきりと言った。


「グーシュ!?」


 一木が驚いて声を上げた。しかし、グーシュは真顔のまま続ける。


「言っただろ、どうしようもない事はどうしようもないと。敵と主砲の撃ち合いになれば万が一もある。どんなに鎧甲冑来ていても死ぬ時は死ぬのだ、ましてやな……」


 それを聞いた面々は何も言わずにグーシュにそっと触れた。

 殺大佐は意趣返しの様にグーシュの身体に足を乱雑に乗せたが、グーシュは少し重そうにしただけで何も言わなかった。

 しばらくその様子を見ていた一木も、すこし迷った後にマナ大尉に顔を寄せた。

 その時のマナ大尉の表情は凄まじいモノがあったが、幸か不幸か誰も見ていなかった。


 光の雨の様なレールガンの猛射の中を、艦隊は高速で突き進んでいく。

 オダ・ノブナガへの命中弾は無かったが、先頭を進む軽巡洋艦モリオカはみるみるうちに命中弾を受けていく。

 レーザーやバルカン砲による迎撃が行われているため直撃弾ではなく破片や至近弾ではあるが、決して軽くは無い損傷はその戦闘力を削いでいく。


 それでも、メフメト二世は命令を変えなかった。

 彼の貴下の重巡洋艦達も、歯を食いしばって仲間と一木達が危険に晒されるのを黙ってみていた。


『命令あるまでそのまま……全力で進め』


 艦首で仁王立ちするメフメト二世の端末が握る指揮刀であるヤタガンの柄にヒビが入った。

ちなみに標準艦ウメタロウの艦名の由来は農芸化学者の鈴木梅太郎氏です。


次回更新は3月6日の予定です。

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