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地球連邦軍様、異世界へようこそ 〜破天荒皇女は殺そうとしてきた兄への復讐のため、来訪者である地球連邦軍と手を結び、さらに帝国を手に入れるべく暗躍する! 〜  作者: ライラック豪砲
第五章 ワーヒド星域会戦

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第44話―5 決着その四 一木弘和と神来華子

「グーシュ様!?」


「大丈夫だクラレッタ大佐。このような立派な騎士が剣を投げるような事をしたのに、それを疑っては……」


 ジンライ少佐の脚を踏みつけ構えを解かないクラレッタ大佐を通り過ぎ、グーシュはハン少尉の第三種兵装のすぐ前まで歩いていった。


 巨大な機動兵器も、殺気立ったサイボーグにも動じず、グーシュは落ちた剣を両手で抱え上げるとウェポンアームの上のルモン騎士長にそれを差し出した。


「騎士殿、あなたの心意気しかと受け取った。騎士の魂である剣を投げ捨てるような事をさせて……それを疑う事わらわには出来ぬ。そちらの申し出を受ける故、どうか剣を受け取られよ」


 グーシュの言葉を聞き、ルモン騎士長はウェポンアームから飛び降りた。

 そのまま片膝を付きグーシュに礼を取る。


「グーシュリャリャポスティ皇女殿下とお見受けいたします……」


「いかにも。グーシュリャリャポスティである」


「我が名はジロード・ルモン。元エドゥディア帝国連合カルコサ王国神器継承者ニュウの騎士にして、現在は七惑星連合軍騎士長を務める者。こちらこそ、皇女殿下座上の機体を脅しつけるが事く所業、誠に申し訳ありませぬ。ですが我らが部隊長ジンライ・ハナコ少佐は既に戦えぬ身体。どうか、その身の安全を保障頂きたく……」


「わらわこそ、眼前にて起きた非道な行為を見過ごし誠にすまぬ。クラレッタ大佐、ジンライ少佐から離れるのだ」


 この時間の無い状況で行われている悠長なやり取りにやきもきしていたクラレッタ大佐は、グーシュの言葉に強い反感を覚えた。

 このような茶番で身の安全を保障する切符を捨てるような事を……。


「クラレッタ、大丈夫だ。ここでの戦いは無意味だ。その者は必要ない」


 このグーシュの言葉には、抗いがたい奇妙な力があった。


「~~~!!!……りょ、……了解しました、ですわ……」


 クラレッタ大佐の心中には言いたいこと、反論したいことが山ほどあった。

 しかし、もはやノブナガとの合流まで猶予は無い。

 もはやここに至っては……。


 諦めたクラレッタ大佐はゆっくりとジンライ少佐から踏みつけていた足を離した。

 それを見たRONINNの二人は一瞬動こうと身じろぎするが、ルモン騎士長はそれを制するように手を上げ、二人を睨みつけた。

 騎士長の眼力に、一騎当千のRONINNの二人も動きを止める。


「ご配慮、感謝いたします。さすればその剣はもうしばしお持ちください。機に乗る際に床においてくだされば……」


「……騎士長殿、誠にすまない。さすれば言葉に甘え、この剣はこの約定の証としてしばし預かる」


 グーシュはそう告げると聖剣アルダーバを重そうに抱えたまま歩きだした。


 その様子を、RONINNの二人とクラレッタ大佐以下アンドロイド達は押さえ付けられた犬のように凝視していた。


 グーシュがカタクラフトまでたどり着くまでの長い長い十数秒の間それは続いた。


 グーシュが剣を床に置き、静かに一礼すると同時に騎士長も礼で応えた。

 グーシュがゆったりとカタクラフトに乗り込み、次いでクラレッタ大佐が警戒しながら飛び乗ったと同時にカタクラフトは飛び立っていった。

 あまりに急いだままだったので搭乗口が開いたまま、しかし各銃座やテールターレットの機関砲はしっかりと騎士長たちを捉えていた。


「なんで逃がした!!!!!!!」


 瞬間上がったのはハン少尉の怒号だった。


「そうだ、仕掛ければ異世界派遣軍の指揮官もグーシュリャリャポスティも……量子通信装置を積んだアンドロイドも全部殺すか手に入ったのに……」


 ヴァルマ大尉も不満げだった。

 ハン少尉もさらに頷き、三種兵装のエンジンを吹かした。


「今からでも……」


「やめよ。無駄な事は」


 ルモン騎士長は静かに彼らを制した。

 そして、床に倒れ伏すジンライ・ハナコの介抱に向かった。


「大丈夫かジンライ少佐?」


 問われたジンライ・ハナコは申し訳なさそうに涙を流した。


「すまない騎士長……すまないみんな……私は……シュシュの敵をとれないばかりか、足を引っ張って……」


 そう言って涙を流すジンライ・ハナコの様子に、ようやくRONINNの二人の怒りも解けつつあった。

 とはいえ、やはり二人は不満げだ。

 

「……そう不貞腐れてくれるな。ワシがあのような事をしたのはな、ここでの戦いが犠牲ばかり多くて無為だからじゃ。だからこそ聖剣を投げ捨てもした。このような戦いの終局で、これ以上の犠牲は避けるが最上。あ奴らのように欲をかいて失うはおろかの極みよ」


 あ奴ら、というのは様々なものを得ようと足掻き、撤退のタイミングを逸した異世界派遣軍の事だ。

 それを察したRONINNの二人はそこまでいうルモン騎士長に疑問をぶつける。


「……騎士長殿、何を知っている?」


「あやつら……たとえ飛び立ってもこの星系からは逃げられん。空間湾曲(ゲート)はエリザベット殿が敵の精鋭を抑えている内に制圧に向かうじゃろう。それにな……」


 ルモン騎士長はグーシュが置いた剣を示した。


「聖剣の輝きが増しておる。ハストゥールの再起動が近い。グーシュリャリャポスティ殿が宇宙に上がろうとも、この星の軌道にいる艦隊は(ゲート)までたどり着く事すらできんじゃろう……」


 憐れむように、騎士長は飛んでいくカタクラフトを見た。

次回更新は1月31日の予定です。

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