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地球連邦軍様、異世界へようこそ 〜破天荒皇女は殺そうとしてきた兄への復讐のため、来訪者である地球連邦軍と手を結び、さらに帝国を手に入れるべく暗躍する! 〜  作者: ライラック豪砲
第五章 ワーヒド星域会戦

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第44話―1 決着その四 一木弘和と神来華子

 宇宙での戦闘が開始され、すでに薄暗くなりつつある地上からも流れ星としてそれが観測できる中……帝都でも戦いが再開された。


 口火を切ったのは七惑星連合軍だった。

 彼らは休戦前に得た情報から異世界派遣軍の防御陣地をいくつか割り出していた。

 そのうち最も頑強でカルナーク、火星両軍にとって脅威となる仮称3-1Bに対してベルフ族のゴッジ将軍に協力を仰ぎ、一撃を加えたのだ。


 彼はアウリンを上回る巨躯をゆっくりと前傾姿勢にあらため、口から垂れ下がるような独特な牙を解放、口腔内にある透明なレンズの様な部位を露にした。


 先ごろジーク大佐と語らった時の笑顔ではない。

 かつてハイタが見せた過去の映像同様の、古代文明の装甲兵器をも一撃で融解させる強力無比な生体レーザー砲だ。


 標的の陣地を中心に帝都中心部を薙ぐように照射されたこの一撃は、異世界派遣軍の貴重な物資集積所やカルナーク軍が補足した数か所の拠点ごと3-1Bにある地中に車体を埋めた50式歩兵戦闘車を中心とした重防御陣地を溶かしつくした。


 照射された後には炭化したセラミックと解けた金属……そして有機素材が燃えた後の独特の匂いだけが残った。


「……うむ。さあ行くがよい友よ」


 ゴッジ将軍が膝を付きつつ流暢な英語で軍師長に告げた。

 小さく頷いた軍師長は右手を斜め上に上げ、叫ぶ。


「総員前へー! 代表集中(ヤー・ラシュ)!!!」


「「「「「 代表集中(ヤー・ラシュ)!!!」」」」」


「俺たちも行くぞ! イヤイヤハスター!!!」


「「「「「イヤイヤハスター!!!」」」」」


 軍師長の叫びと共に中銃を抱えたカルナーク軍の兵士とアイオイ人達、そして自らが信奉する神の名を叫んだ火人連のサイボーグ達が駆け出していく。


 臨時に組まれたサリュガートと呼ばれる大ぶりな斧を装備したアイオイ人を一個分隊のカルナーク軍兵士と二人の火星陸軍サイボーグが支援する特編小隊と呼ばれる編成だ。


 この編成は猛威を振るった。


 異世界派遣軍は引き続き頑強に構築した陣地に籠り、射撃精度と火力を活かした戦闘を行おうとした。

 これは休戦前は絶大な効果を発揮し、数多のカルナーク人とサイボーグの命を刈り取った。


 しかし今度はこれがまるで機能しなかった。


 サイボーグと歩兵に護衛されたアイオイ人によって陣地の場所や動きを完全に把握されたサイボーグ達は射撃精度も火力も活かすことなく郊外に布陣したアウリン(アイン)とニールストライフルを構えたアイオイ人狙撃部隊による支援攻撃によって陣地を追われた。


 そうして別の陣地に、あるいは敵に接敵しようとしたアンドロイド達は、今度はアイオイ人に誘導されたサイボーグと歩兵による射撃に曝され、みるみるうちに数を減らしていった。


 少数のアンドロイド達が敵の要であるアイオイ人を倒そうと攻撃を仕掛けたが、それらはサリュガートを構えたアイオイ人によって両断され散っていった。


 交戦からほんの十数分で七惑星連合軍先鋒はかつて国葬会場だった中央広場に到達。

 帝城を中心とした最終防衛圏と分断されることを恐れた異世界派遣軍はニールストライフルと荷電粒子砲に背中から撃たれつつも最終防衛圏へと撤退を余儀なくされた。


 そうして、帝都での戦闘は最終局面へと移る。


 最終防衛圏には王道作戦で投入された特務課と呼ばれるアンドロイドの精鋭部隊が布陣しているとの情報があり、七惑星連合軍はここまでRONINNとンヒュギの生体機械兵、そして騎士長ジロード・ルモンを温存していたのだ。


 未だに何の動きも無い異世界派遣軍側を警戒して最終防衛圏際で足を止めた七惑星連合軍は、自分たちも精鋭の到着を待ち始めた。


 この奇妙な静寂の最中、帝城にある塔の一つから巨大な航空機が飛び立った。


 カタクラフト。

 異世界派遣軍が誇る強力な輸送攻撃機だ。


 すわ異世界派遣軍指揮官の脱出かと七惑星連合軍は色めき立ち、予定を覆して絶対防衛圏へとなだれ込む。


 しかし、そんな彼らの予想とは異なりカタクラフトはゆったりと帝城上空を旋回し始めた。

 カタクラフトを操るSAのアウンと搭乗者たちにはまだやる事が残されていたからだ。


 なだれ込んだ七惑星連合軍が特務課と残存部隊の大歓迎を受け先鋒壊滅の憂き目を見る中、旋回していたカタクラフトはゆっくりと帝城にある城内でもっとも重要な場所へと近づいていった。


 彼らの目的はたった一つ。


 休戦終了から今までジンライ・ハナコと戦闘を続ける一木弘和の()()()()である。







 一木弘和とジンライ・ハナコの戦闘は一木救出を試みるグーシュ達、そして当人たちの想定を超えて長引いていた。


 グーシュ達は当初即座に飛び立ち一木救出を試みるつもりだったが、七惑星連合軍の攻勢が予想以上に激しいことから戦闘が小康状態になるのを待たざるを得なかった。


 一木の相手がジンライ・ハナコであることから「これは終わった」という絶望の空気が彼らを包んだが、最も性能の高いセンサーを搭載したカタクラフトのアウンから驚きの報告が上がったのだ。


 曰く「未だに戦闘音継続」である。


 ジーク大佐を一瞬で倒し、アンドロイド部隊を一騎当千が如く蹂躙するRONINNのサイボーグ相手になぜ体が機械なだけの一般人が相手できているのかと、状況に安堵しつつもグーシュ達は訝しんだ。


 これはひとえにハイタのお陰であった。

 ジンライ・ハナコの消耗具合は想像を超えていたのだ。

次回更新は明日の予定です。

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