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地球連邦軍様、異世界へようこそ 〜破天荒皇女は殺そうとしてきた兄への復讐のため、来訪者である地球連邦軍と手を結び、さらに帝国を手に入れるべく暗躍する! 〜  作者: ライラック豪砲
第五章 ワーヒド星域会戦

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第43話―4 空間戦闘

 重巡洋艦部隊は散り散りになり、旗艦と思しき軽巡洋艦と護衛の駆逐艦と護衛艦は逃げ出すようにイワノフ艦隊の正面へと動き出していた。


(指揮官脱出の要である帝都軌道をやけにあっさりと……罠か?)


 イワノフ提督は一瞬訝しんだが、散った艦隊に帝都軌道への未練の様なまごついた動きを感じ取った事でその懸念は消失した。


「惨めなものだ。優秀なアンドロイドだったが、足掻こうと圧倒的な戦力差は覆せないのだ」


 イワノフ提督は満足げに呟いた。


 そうしているうちにそのままアウリン隊は艦隊を突破。

 しかも、陣形中央にいたため逃げ遅れた重巡洋艦一隻を追い詰め、今まさに撃破しようと集中攻撃をかけていた。

 重巡洋艦部隊と旗艦及び随伴艦が逃げ腰になっている今、逃げ遅れた重巡洋艦さえ撃沈すれば挟み撃ちの完成だ。

 イワノフ提督はアウリン隊に仕上げの命令を下した。


「重巡洋艦初の撃沈だ。アウリン隊に通信! そいつを仕留め次第反転。敵を挟み撃ちにして撃滅する!」


 異世界派遣軍は風前の灯に見えた。

 もはや艦隊として機能するのは旗艦の軽巡洋艦とわずかな護衛のみ。

 重巡洋艦は散らばり、しかもそのうち一隻はアウリン三個中隊に包囲されている。


「勝ったな」


 イワノフ提督が呟いたのと、今まさにエクスカリバー対艦刀による一斉射撃を受けようとしていた敵の重巡洋艦が一気に高度を下げて大気圏内に降下するのはほとんど同時だった。


 必殺の荷電粒子の雨が空しく虚空を照らし、標的だった重巡洋艦は流れ星のように地に降りていく。


「なんだ? 重巡洋艦は大気圏内に降りれないはずでは……墜落したのか?」


 イワノフ提督の認識は誤っていた。

 重巡洋艦自体は実のところ大気圏内での飛行や戦闘を行う事の出来る艦艇で最大のサイズを誇る艦であり、むしろその主任務に地上での対地支援があげられる程だ。


 あくまでそれを行わないのは、一度地上に降りてしまえば宇宙空間に戻るのにマスドライバーや巨大な打ち上げ施設と追加ブースターの取り付けなど大掛かりな設備が必要になるからに過ぎない。


「逃げたのならまあいい。アウリン隊反転。予定通り挟み撃ちに……」


「敵重巡洋艦部隊加速! 本艦隊に一気に突っ込んできます!! あっ、集結及び陣形を……矢じりのような……突撃陣形です!」


「アウリン隊に敵の護衛艦が突っ込んで……殴り込みです! 乱戦に持ち込まれました」


 オペレーターから矢継ぎ早に報告が入る。

 唐突な敵の動きに一瞬イワノフ提督は唖然とするが、すぐに我に返る。


「無駄なあがきを……敵の最期の悪あがきに過ぎん。このまま前進しつつ挟み撃ちにして撃滅を図れ」


 しかし、提督の命令は実行されなかった。

 いや、出来なかった。


 アウリン隊三個中隊は護衛艦部隊による乱戦により足止めをくい、少数のそこから脱したアウリン達も殿に残った重巡洋艦スパルタクスによって身動きが取れなくなった。


 つまり、イワノフ提督艦隊は防護艦すらない丸裸で異世界派遣軍と近距離戦闘に追い込まれてしまったのだ。


「……ぬぅ……後ろの輸送艦内で補給整備中のアウリン隊二個中隊を出せ」


「しかし提督……」


 オペレーターは思わず反論しかかった。

 今後方の艦で休んでいるアウリン達は整備補給……というより、負傷の治療中だ。

 しかも無理に出せばそれだけで生死に関わるような重傷者ばかりなのだ。


「私が責任を取る、すぐに出せ!」


 まんまと罠にハマった自分を呪いながら、イワノフ提督は命令を下した。

 すでに眼前の敵には必死にしがみ付いていた帝都軌道への未練は全く感じられない。


「アンドロイドが……人間の指揮官を見捨てる選択をしたというのか? 馬鹿な……」


 ロボットの反乱という言葉がイワノフ提督の脳裏をよぎるが、すぐにそれどころではないと意識を改めた。すでに状況は刻一刻と悪化しつつあった。


 手足を無くしたような重傷のアウリン達がヨタヨタと発艦して前線へと急行する最中にも、重巡洋艦の砲撃によって投射艦がみるみるうちに爆散していく。


 無論、投射艦による強烈な弾幕も健在だ。

 一心不乱に突撃する重巡洋艦達も無傷では済まず、今まさに先頭で突撃を図っていた重巡洋艦張良が無数の命中弾によって火だるまになった。


『今です!!!』


 次の瞬間、火だるまになった重巡洋艦から若い男の声がオープン回線で流れた。

 かと思ったその時、その重巡洋艦……艦名は張良。

 劉邦に使えた高名な軍師の名を冠したその艦が、反物質を用いたと思しき自爆を決行したのだ。


 クーリトルリトルのセンサー類とモニター映像が途絶えるほどの強烈な爆発が生じ、不幸な投射艦が破片や衝撃波で轟沈する。


「状況報告!!!」


 イワノフ提督が叫ぶが、オペレーター達の反応は無い。

 艦長も状況把握に忙殺され、艦の姿勢制御で精いっぱいだ。


 そうして焦りと緊張に塗れた恐怖の十数秒が明ける。

 ようやく対消滅の爆発の影響が明けた眼前には……。


「敵駆逐艦接近!! 対艦魚雷を確認……発射体制に入ります!」


「迎撃急げ!! 全艦撃ちまくれえええええ!!」


 イワノフ提督の叫びと共に、ワーヒド星域会戦で最も苛烈な激戦。


 ”脱出地点の戦い”が始まった。

次回更新は1月21日の予定です。 

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