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地球連邦軍様、異世界へようこそ 〜破天荒皇女は殺そうとしてきた兄への復讐のため、来訪者である地球連邦軍と手を結び、さらに帝国を手に入れるべく暗躍する! 〜  作者: ライラック豪砲
第五章 ワーヒド星域会戦

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第43話―1 空間戦闘

『あああああああああああああああああ!』


『きぃえああああああああああああああ!』


 スピーカーの音が割れるほどの絶叫がオープン回線でゲート周辺の空域に流れる。

 ポリーナ大佐とエリザベットが激しく鍔迫り合いしながら絶叫しているのだ。


「ええい、やかましい」


 火星宇宙軍ゲート方面派遣分艦隊司令のクワベナ少将は顔をしかめながら呟いた。

 彼のいる旗艦ウメタロウの中枢にある艦隊司令部には三十名ほどの司令部要員が勤めていたが、ほぼ全員が同じように顔をしかめていた。


 だがなにもこれは絶叫がやかましいから、というだけではない。


 そもそもだが彼らは当初、ゲートの制圧を自分たちだけで行う腹積もりだった。


 彼らはポリーナ大佐によるゲリラ戦に翻弄され、月基地制圧も自爆により失敗した上大損害を受けると散々な目にあってはいたが、それでも新鋭艦を扱う火星宇宙軍最精鋭という自負があった。


 それだけに開けた場所で劣勢かつ固定施設を抱え込んだ異世界派遣軍のゲート守備隊を相手取るこの戦闘に対する意気込みには並々ならぬものがあった。


 そんな意気込みをぶち壊しにしたのが、今眼前で人間離れした絶叫を上げるエリザベットだった。


「私がまずお単体でいきますわ。おフリートの皆さま方はその後で……私があの航宙アンドロイドを撃破した後でいらっしゃってくださいまし」


 アニメから飛び出してきたような青みがかった髪におおよそ軍人らしからぬ長く複雑な縦ロール。

 人間同様の形式のボディに装備を着込んだ他のRONINNとは違い、競泳水着の様なボディから生える手足はごつごつとして重厚な全金属製。


 RONINN三番隊隊長”魔王”エリザベット・リシュリュー少尉は帰還するなり戦闘用サイボーグの極致と呼ばれた重厚な身体を惜しげもなく晒しながら少将も所に直談判しに来たのだ。


 もちろんたとえRONINNであろうと階級は絶対である。

 このあまりにも非常識で無礼な行為に少将と司令部要員たちは激怒したが、エリザベットは涼しい顔で言ってのけたのだった。


 そもそもの話、エリザベットが本気になれば艦内の人間に押しとどめる事などできはしなかったのだが……。


「あなた方……いえ少将閣下は先の苦戦をアステロイドベルトでのゲリラ戦にあるとお考えの様ですが……それは違いますわ。もしゲート攻略ならばいけるなんてお思いですのなら、また大損害をお受けになりましてよ?」


 あまりの物言いに激昂しかけた少将だったが、寸前で思いとどまった。

 標準艦は火星宇宙軍機体の新鋭艦だ。

 従来の単独機能を備えた小型艦を統制艦で従えて大艦隊でしか動けない宇宙軍から脱却するための、重要な存在だ。


 それが初陣で戦果も上げられずに大損害……非常にマズイ事態だった。

 だからこそ挽回のためのゲート攻略だったが、同時にポリーナ大佐という強力な個体が懸案事項として残っている、これも事実だった。


 事態は既にゲート攻略は出来て当たり前、という状態にある。

 この上さらに被害を積み増す事は、なんとしても避けなければならない。


「……いいだろう」


 司令部要員たちから一斉に司令!? という声が上がる。

 しかしそれを手で制する。

 押し黙る司令部要員をよそに、エリザベットはニコニコ笑顔で高笑いを上げた。


「おーほっほっほ! ありがとうございますわー♪ それではごめんあそばせー……あ、そうそう……皆様方は決して敵を倒すまで私が設定した範囲内に入らないようにお願いいたしますわー! 入られてしまっては……ご無事は保証できませんわー!」


 最後までやかましい声を上げてエリザベットは去っていった。


 当然エリザベットがいなくなれば少将へは司令部要員達からの疑問の声が上がるが、少将は何事も無かったようにとぼけた表情を浮かべた。


「なにか、したかね? 私は何も聞いていないが……ああそうそう。戦闘開始後私が指示したら一時停止するように艦隊に伝えておいてくれたまえよ?」


 少将はエリザベットからの要請を無かったことにした。

 つまり、彼女が行うポリーナ大佐との一騎打ちを、あくまで独断専行の無断行動という事にする気なのだ。


 首尾よくポリーナ大佐を撃破出来ればよし。

 万が一負けたのならば、それこそ好都合。

 一連のゴタゴタをRONINNに押し付けるつもりなのだ。


 サイボーグのエリザベットがある程度の情報を記録したり送信している可能性は高いが、新鋭艦部隊の指揮官である少将はそんなものは政治力で握りつぶせる自信があった。


 だから、今眼前で繰り広げられる両者の激しい戦闘を見るにとどまる現状にはそもそも不満があり、さらに言うならばポリーナ大佐を撃破することもあっさりとやられる事もせずに互角、というのは最も面倒で嫌な展開だったのだ。


「どっちにしろとっとと終われば我々の出番が来たものを……」


 少将が苦々しく言うと、司令部要員の一人が口を開いた。


「閣下、いっそ()()なされては?」


 嫌な笑みでの発言だった。


「……そう、だな。苦戦しているようだし、独断行動とはいえ友軍だ。助けてやるか」


 少将も悪い笑みを受かべた。

やっと更新できました。

明日も更新しますので、よろしくお願いします。

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