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地球連邦軍様、異世界へようこそ 〜破天荒皇女は殺そうとしてきた兄への復讐のため、来訪者である地球連邦軍と手を結び、さらに帝国を手に入れるべく暗躍する! 〜  作者: ライラック豪砲
第五章 ワーヒド星域会戦

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第39話―3 決着そのニ クラレッタと殺

 帝都の空気が一変した。


 そのことにもっともはやく気が付いたのはヴァルマ大尉だった。

 彼はRONINNで一番のベテランであり、いくつかの非公式での戦闘や地球や異世界への潜入経験もある老獪な男だった。


 そんな彼だからこそ、帝都内に急激に満ちた死臭とも言うべき気配に気が付くことが出来た。


「ハン! 気を付けろ……」


「ああ? 今更……こいつらがどんだけヤバいかなんて」


 ハン少尉へと警告を発するが、上手く伝わらない。

 無理もない。

 ヴァルマ大尉自身がその以上を本質的には理解できていないのだから……。


「違う……いや、違わないのだが……何かがおかしい。そいつらが何かしたのは……」


 ヴァルマ大尉がそこまで言った時だった。

 無数の銃撃がそこら中からRONINNの二人に襲い掛かった。


 二人は咄嗟に力場を展開しつつ回避機動を取る事で難を逃れたが、アンドロイドらしからぬ銃弾の雨に面食らった。


「なんだこりゃ!? 大雑把な乱射……皇女の手下の現地勢力か?」


 ハン少尉が叫ぶ。

 彼らもシュシュからある程度の情勢は聞いている。

 それ故に、脅威度としては低いが親衛隊や銃の供与を受けたお付き騎士達の事はある程度警戒していた。非精密な銃撃という要素はまさに情報通りなのだが、ヴァルマ大尉はいよいよ異常に気がついた。


「違う! 数が多すぎる……ぬお!?」


 武人然として豪放磊落、慌てる事などほとんどないヴァルマ大尉が驚愕する。

 数秒の銃撃の後周囲の物陰や建物から姿を現した存在に気が付いたからだ。


 状況から言って間違いなく先の銃撃の実行者であるそれら……コアユニットを撃ち抜かれ、あるいは酷く損壊した異世界派遣軍のSS達だった。


「ぞ、ゾンビ!!」


「慌てるなハン! さっきのハッキングの応用だ、あいつが撃破されたアンドロイドを動かしてるに違いない」


「察しがいいなあ! ご名答さ」


 ヴァルマ大尉が一瞬でゾンビアンドロイドのカラクリに気が付いた事に、若干の不満と落胆を含んだ口調で殺大佐が賞賛する。


 だが状況は一気に好転している。

 ヴァルマ大尉はある程度状況を把握し冷静だが、あまりにも想定外の状況に置かれたハン少尉は見るからに慌てている。


 さらに……。


「殺……ありがとう。おかげで補給出来ましたわ」


 クラレッタ大佐が口元を拭いながら礼を述べる。

 彼の周囲には数体のSSが……もちろんゾンビ化してここまでやってきた撃破済みの個体、が倒れていた。


 この個体は銃撃に応じて素早くクラレッタ大佐の元に駆けよると、体内に残留していた有機バッテリーを吐き出したのだ。

 通常SSはこの有機バッテリーと呼ばれる固いゼリー状の握りこぶし程の球体を口から飲み込むことで電源としている。

 当然、非常時にはこうして吐き出すことでバッテリーが切れかかった個体に給電することも可能なのだ。


「絵面は悪いですが……さあ、ヴァルマ大尉。続きとまいりましょう! そちらの殿方は殺……あなたに任せますわ」


「ははっ、任されて!」


 オリハルコンを形状変化させるためには膨大な電力を消費する。

 当然、ヴァルダ大尉との壮絶な乱打戦においてクラレッタ大佐は腹内の有機バッテリーの大半を消費しきっていた。

 しかもその上、先ほどの奇襲の際腕を鞭状にしての攻撃を仕掛けた事で無線送電が無ければ機能停止する程に電源状態は悪化していた。


「なるほど……あのゾンビ共を動かした真の目的はそれか……だが、今更私に勝てるなどと思わんことだな!」


 ヴァルマ大尉は叫ぶと同時に光学で視認できるほど強い力場を背後に浮かび上がらせた。

 ヴァルマ大尉はの不可視の拳……その正体である六本の力場で出きた腕が現れる。


「凄い出力……」


 思わずクラレッタ大佐は口に出して感心した。

 力場が視認できるほどの強度を持つなど、地球の技術では知られていない事象だったからだ。

 一応そういった噂自体は無かったわけでは無いが、ある種の異世界派遣軍内での都市伝説の様なものだった。それほどまでに、こういった分野での地球の遅れは深刻だった。


「そう……そうだ! 先の貴様の腕を鞭にした奇襲……それから察するに私の拳を砕いた不可視の攻撃! あの正体も検討がついたわ! 何のことはない。オリハルコンをごく細い針状に変えて力場の拳に差し込み、その直後に腕を元の形状に戻して砕いていた、それだけの事! オリハルコン技術の初歩の初歩であれほどまでの技前を見せた事は認めてやる……だが知るがいい! 我ら七惑星連合の英知は貴様らを遥かに超える事を!!!」


 大音声での宣言と同時にヴァルマ大尉はクラレッタ大佐に襲い掛かった。

 たった一歩、ごく自然な踏み出し。

 その当たり前の動き一つで、十数メートルを一瞬で移動しクラレッタ大佐へ肉薄すると、六本の力場の腕で強烈なパンチを放った。


 この刹那の動きとまったく同時にこちらでは殺大佐の方が仕掛けた。

 ゾンビたちに驚愕し、慌てて雷足で空に逃げようとしたハン少尉に殺大佐が両手に持った中華刀が襲い掛かる。


 異世界派遣軍と七惑星連合軍の死闘の最中、帝都の内外での機械と生身の決戦は最後の時を迎えようとしていた。

次回更新は11月18日の予定です。

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