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地球連邦軍様、異世界へようこそ 〜破天荒皇女は殺そうとしてきた兄への復讐のため、来訪者である地球連邦軍と手を結び、さらに帝国を手に入れるべく暗躍する! 〜  作者: ライラック豪砲
第五章 ワーヒド星域会戦

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第37話―6 帝都決戦

 アウリン(アイン)の心は怒りで満ちていた。


 ただ、その怒りが何によるモノなのか。

 そんな当たり前の事が分からない。


(心が……脳が、焼けそうだ……)


 何か、大切なモノが奪われた、気がした。


 気が、していた。


 だが、今の彼女にあるのは怒りとそれによって生じる衝動のみ。

 焼く。

 手にしたエクスカリバー対艦刀で、焼く。


 敵を。

 巨大な、敵を。

 接してきたのものを。


 アウリン(アイン)は、だから動き続ける。

 自らを武装し、守り、律していた機動甲冑を脱いだその瞬間から。


 彼女の心はアウリンではなく、ベルフへとなっていた。







「やっぱりだ!」


 帝都をアンカーランチャーと自らの足で駆けていたジークは嬉し気に叫んだ。

 姉妹達と通信を行った直後、アウリン(アイン)の出方を探るべく銃剣での近接攻撃を仕掛けたのだが、その結果が想定通りだったからだ。


「効果が無いのは同じだ。けど、あの正気とは思えない荷電粒子砲の連続攻撃。敵味方お構いなし……化け物らしく暴走してる……」


 ジーク大佐は背後で上部構造が切断、炎上している七惑星連合の強襲揚陸艦をセンサーで走査した。


 先ほどアウリン(アイン)が放った荷電粒子砲の一撃でああなったものだが、発射時の位置関係から言って誤射ではない。

 明らかに標的の一つとして狙ったのだ。


「それなら手はあるぞ。市街地で敵の歩兵やアイアオ人と連携されたら厄介だったけど、単体なら……」


 ジーク大佐は効果の無い弾丸と銃剣のひび割れたマテバを名残惜しそうに地面に落とした。

 先ほどの攻撃で大半の装備を失い残りは少ない。


(自作のナイフに予備の高周波ブレード……30mmサブマシンガン一丁……アンカーランチャーはオリハルコンが少ないから後一回が限度……後は手榴弾二個……そして)


 ジーク大佐のは腰のサイドアーマーにある切り札にそっと手を振れた。

 カルナーク戦の際敵戦車の装甲から自分で削りだして作った愛用のナイフに次ぐ愛着ある武器。


 S&W社製の強襲猟兵用大口径単発拳銃。

 専用弾に加え小改造で様々な砲弾を撃つことが出来、鹵獲した敵の砲弾すら使用可能という特殊な拳銃だった。


 ある種のイロモノ武器ではあるが、単独で敵地に飛び込む強襲猟兵という兵器にとっては非常用の武器として一定の人気がある銃だった。


(こいつが無事でよかった……いや本当に。下手したら……)


 そこまで思考したところで、再びの荷電粒子砲による攻撃がジーク大佐を襲った。

 拡散モードで放たれた荷電粒子の奔流は回避困難な一撃だが、ジーク大佐は体操選手さながらの跳躍と空中回転を用いて難なく回避した。


「さて、と……行きますか! 姉さんたち! いまの詳細な状況は?」


「ジーク……現在私と殺は城門に入ったあたりで敵のサイボーグ部隊と交戦中だ。敵の一般隊員は何隊か倒したが、隊長格が強くて攻めあぐねてる!」



 ジーク大佐の問いにクラレッタ大佐が叫ぶように返答した。

 データによると、クラレッタ大佐はどっしりと腰を据えて巨漢と殴り合いを演じている。


 対して殺大佐は人型サイボーグとは思えないような速度で動き回る敵相手に苦戦しているようだった。


「……わかった。で、なんでシャルルは外にいるんだい?」


 そしてジーク大佐は先ほどから気になっていた事を聞いた。

 この状況下で単身で帝都の外にいる、正直言って何をしているのか分かってはいる。


 それでも、ジーク大佐は聞かざるを得なかった。


「……あいつは……アイオイ人部隊の帝都侵入を阻止するために単身的陣地に突撃している」


 わずかな言い淀みの後クラレッタ大佐は言った。

 アイオイ人は遠距離もさることながら市街戦でも厄介な連中だ。

 確かに帝都侵入を阻止する必要はあるだろう。

 だが、それでも。


「一人で行かせる事はないよね……兄さん、僕が助けに行くよ」


「ジーク!? お前……その巨人はどうする気だ?」


 ジーク大佐の突然の言葉にさすがのクラレッタ大佐も驚きの色を隠せない。

 とはいえ、ジーク大佐のその反応は想定していた。


 ジーク大佐の作戦ならば……むしろアウリン(アイン)を倒すためにはシャルル大佐の力が必要なのだ。


 だからこそ、アウリン(アイン)を切り札が使える帝都の外までおびき出したついでにシャルル大佐を支援できるこの作戦が最適だ。


 ジーク大佐は何も言わずにクラレッタ大佐と喋る余裕もない殺大佐、そして殺大佐と同じく返答の余裕もないシャルル大佐に作戦の概要を送信した。


「……馬鹿者が」


「お前馬鹿だろ!?」


「……いいよ。助けに来て頂戴」


 三人の姉妹から短い返信が来た。

 これまた想像通りの内容だった。


 しかし、否定もされなかった。

 口の無い強襲猟兵の体で、ジーク大佐はニヤリと笑みを浮かべた。

 当然強襲猟兵の体は何ら笑みを浮かべないが、代わりにロボットアニメのように頭部のメインセンサーが少しだけ明滅した。


「さあて、行きますか」


 自信を鼓舞するように小さく呟くと、愛用のナイフとサブマシンガンを構えてジーク大佐は再びアウリン(アイン)に突撃した。

次回更新は9月26日の予定です。 

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