第33話―2 さようなら
戦闘中なら聞き取れる筈の関節部の駆動音がしなかった。
そのことに驚愕しつつも、ジンライ・ハナコは即座に抜刀し一木弘和の腕を切断しにかかった。
肩を掴まれながらの抜刀は無理のある体勢となるが、様々な姿勢での抜刀術を治めているのがジンライ・ハナコだ。
”月下美人”。
RONINNにて剣で最強。
そう称される彼女はその力量をいかんなく発揮した。
地球連邦軍の強化機兵の一般的な動作速度を凌駕する速度で抜き放たれた対人刀は当然ながら避ける事など不可能。
オリハルコン製の刀身に大電圧をかけて極限まで鋭さと強度を持たされたその刀身は完全に一木弘和の腕を捉えた。
(獲った!)
ジンライ・ハナコは確信した。
強化機兵のカタログスペック上の動作よりも早く動いているのだ。
表面装甲にまで至った刃を回避する事など、不可能。
しかし、止まった。
体内の極小空間湾曲ゲートを通じて流れ込む縮退炉からの膨大な電力によって、RONINNのサイボーグはフルオリハルコン製という特徴を最大限に活かすことが出来る。
圧倒的な強度。
常識を超えた柔軟性。
人知を超えた透明度。
状況に合わせて同一部品の部位ごとにまで性質を変化可能なこの究極の構造体がもたらす超速度に、型落ちの強化機兵が反応して見せた。
この驚嘆する事実を、ジンライ・ハナコは一木弘和が右手の指さきで対人刀の刀身をつかみ取っている様を見てようやく認識した。
「ば、化け物……」
口をついて出たその言葉はあまりにも直情的だったが、ジンライ・ハナコと一木弘和のスペック差を意識すればそう思わざるを得ないものであった。
本格SVUに軽自動車が悪路走行で勝つと言えば感覚的には近いだろうか?
そしてその直情的発言に対し、一木の反応は……。




