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地球連邦軍様、異世界へようこそ 〜破天荒皇女は殺そうとしてきた兄への復讐のため、来訪者である地球連邦軍と手を結び、さらに帝国を手に入れるべく暗躍する! 〜  作者: ライラック豪砲
第五章 ワーヒド星域会戦

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第32話―1 姉妹

「は、え、あ……姉上?」


 グーシュは思わず素っ頓狂な声を上げた。

 目の前に……鼻先が触れる程すぐ近くに忌まわしい姉が突然現れたからだ。

 声を上げた後、思わずグーシュは意識が停止した。


 一瞬前まで目の前にいたのは一木とマナ大尉だった筈なのだ。

 隣にいたミルシャが一緒なのは幸いだが、瞬きすらしていないのに一木達が姉になっているなど、理解の範疇を越えていた。


 まるで……。


「魔法か!?」


「ご名答。移動魔術に『転移せよ(テレポート)』ってのがあるんだけど、応用すればこうして二つの対象の居場所を入れ替えたりも出来るわ。まあ、移動対象の詳細を知っている必要があるけどね」


 ほぼ反射的に叫んだグーシュの言葉にシュシュリャリャヨイティは自慢げに返答した。

 忌まわしい姉の移動魔術という言葉に興味は湧くが、グーシュとしてはそれどころではない。


 想像を超える手段によって一瞬にして追いつかれることとなってしまったが、これは好機でもある。

 先ほどの言葉からすると、グーシュとジンライ・ハナコの居場所を入れ替えたという事だろう。

 とすれば、今目の前にいるシュシュリャリャヨイティは単身だ。

 厄介な護衛であるサイボーグがいなければ、グーシュと言えども対処できる可能性がある。


「悪いがとっとと片付けて一木を助けにいかせてもらうぞ姉上!」


 目の前の姉に叫びながら、ミルシャの腰に回していた手に力を込めた。

 

 グーシュはその時、異様な程震えるミルシャの体にようやく気が付いた。


「ミル……シャ」


 愛おしいミルシャの名を呼びながら、ゆっくりと顔を向ける。


 一秒も掛からないその動作にやたらと時間がかかった。

 そして、その最中グーシュの心を様々な疑問がよぎった。

 

 そもそもなぜ、シュシュリャリャヨイティはこんな眼前にいたのだろうか。

 魔法で位置を入れ替えたと言っていた。

 つまり、シュシュリャリャヨイティはもっとも優位な位置関係を保った状態でジンライ・ハナコとグーシュ、ミルシャの入れ替えを行ったはずだ。


 つまり、シュシュリャリャヨイティは……。


「…………ぇ……ヵ」


 顔をミルシャの方へと向けると、羽虫の羽音より小さな声をミルシャが上げた。

 無理もない。


 シュシュリャリャヨイティが持っていた小さなナイフが、彼女の喉を貫いていたからだ。


「ミルシャ!!!」


 グーシュが叫ぶと同時に、シュシュリャリャヨイティはナイフをミルシャの喉から抜いた。

 大量の血がごぼごぼとあふれ出る。

 喉を抑えて膝を付くミルシャを、グーシュは力いっぱいに抱き締めるが、脱力しきったグーシュより体格の大きいミルシャを支えきれず、グーシュは床に倒れ込んだ。


「ああ、そんな……ミルシャ……ミルシャ……」


 グーシュは必死に対処方法を考える。

 普段なら書物や最近携帯端末で見た様々な情報から得た知識で素早く最適な行動がとれる自信が彼女にはあった。


 だが、今まさに消えようとする最愛の女騎士を前にして、皇女グーシュリャリャポスティはただの無力な少女に成り下がってしまった。


 そんなグーシュ()を見下ろしながら、シュシュリャリャ()ヨイティは恍惚とした表情を浮かべ、まるで飴でも嘗める様に手にしたナイフをゆっくりと口に含み、数秒ほどしゃぶった。


「はぁ、あぁん……。本当に……私と同じねえ、グーシュ? ああ、ミルシャちゃんの事は諦めなさい。ナイフに『致命を与えよ(ウィークポイント)』の魔術を掛けて攻撃したからね」


 その言葉を聞いたグーシュがシュシュの顔を睨みつける。

 消えかかった命を抱えて泣き叫ぶ妹が愛おしくて仕方が無いのが、シュシュリャリャヨイティはニコニコと満面の笑みを浮かべた。


「さあさあグーシュちゃん。ちょっと姉妹でお話しましょう?」

次回更新予定は6月9日の予定です。

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