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地球連邦軍様、異世界へようこそ 〜破天荒皇女は殺そうとしてきた兄への復讐のため、来訪者である地球連邦軍と手を結び、さらに帝国を手に入れるべく暗躍する! 〜  作者: ライラック豪砲
第五章 ワーヒド星域会戦

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第28話―5 天空の砲火

「という感じですね」


「いや待て敵が降りて来るのか!?」「(みゃお)が行方不明って知らねえぞおい!!」


 クラレッタ大佐が星系内の状況を大まかに報告し終えると、一木と殺大佐はおろおろと慌てだした。

 オープントップ式の車上で騒ぎだす上官と妹の慌て顔をしばし眺めた後、クラレッタ大佐は空を仰ぎ見た。


 薄暗くなってきた午後のルーリアトの空には、戦闘の光が見て取れた。

 たまに通り過ぎる光の線はレールガンか何かの光で、その先で生じる丸い点は爆発の光点だろうか。


 時間にして一秒ほどそんな事を考えながら現実逃避という贅沢を味わったクラレッタ大佐は、大切な二人を落ち着かせる作業に戻ることにした。


「落ち着け、いやなさい……一人ずつ説明いたしますから、いいですわね?」


 多少ドスを利かせて。

 それに加えて殺大佐の方は通信で0.5秒ほど怒鳴りつけて黙らせると、クラレッタ大佐はまずは一木の方に向き合った。


「一木司令が慌てるお気持ちは分かりますが、ご安心ください。先ほど言った通りすべて作戦通りですわ」


 クラレッタ大佐はそう言うが、一木のゆっくりと円を描くように回るモノアイが納得していない事を表していた。


「川を敵が渡河するときだって、相手の先鋒を渡らせてから攻撃した方が相手を混乱させられますでしょう? 同じことですわ。それに、一度敵の地上戦力と交戦状態に陥れば、一番厄介な軌道砲撃をある程度封じる事が出来ます」


「それは分かるが、相手の戦力が分からない状況で少々軽率じゃないのか? この車列の事務方のSLが混じった部隊と帝都にいる少数の戦力で戦えるのか? 相手にはグーシュの姉がいるんだし、帝都に立てこもりつつ軌道上を確保して敵地上部隊を降下させないようにした方が……」


 クラレッタ大佐は一瞬考え込んだ。

 その案は一回考慮し、迷った案だったからだ。

 重巡洋艦部隊という最強戦力をほぼ無傷で温存できている艦隊戦力に全力で戦ってもらえれば、わざわざ劣勢な地上戦力を危険に晒し、しかも戦闘中に一木とグーシュを宇宙に脱出させるという危険を冒す必要もない。


 とはいえだ。グーシュの姉が帝都を砲撃しないというのは賭けだ。

 それも住民の避難が終わった今となっては分の悪い。

 敵の地上戦力がどの程度かという賭けと比べてどの程度かと言われれば、判断しがたくはあるが……。


「確かに同じ賭けに出るならその案もアリ、でした」


 クラレッタ大佐の言葉に、一木が小さく「でした?」と呟いた。


「ええ、過去形ですわ。理由は……先ほどボコボコにされた敵の艦載機です。あいつらの存在によって、地上部隊も戦闘に巻き込まれる事が確定してしまいました。どれだけ降下ポイントを死守しても、その向こう側から降下されて超高速軌道で大陸に上陸されてはどうしようもありません。それならば、艦隊により余裕を持った戦闘を行わせることが出来る敵地上部隊をワザと降下させるこの案の方がマシ、と判断いたしました」


 この説明に、今度は一木の方がしばし考え込んだ。

 時間にして十秒ほど経った後、今度は回らないモノアイで一木はクラレッタ大佐の方をしっかりと見ながら音声を発した。


「わかった。クラレッタ大佐の言う通りだ。戦力が絶望的に限られる現状ならば、まだ優位性がある艦隊戦力の方に余力を集めるのは当然だな。リソースを負けないように補填してはダメだ。勝てるところに集中する。基本だな」


 そういう考え方もあるのか、とクラレッタ大佐は思わず感心した。

 要は一木は、弱体化した地上戦力を余力のある艦隊で守るのではなく、弱体化した地上戦力に可能な限界まで負担を受け入れさせ、余力のある艦隊戦力にフリーハンドを与えるという考えをしたのだ。


(勝てるところにリソースを集め、最悪勝てないところは捨てる……こういう考え方がしっかり身に付けば指揮官としてそこら辺の師団長よりも化けるかもしれませんわね)


 もっとも生き残れればの話だが。

 

 クラレッタ大佐は自嘲気味に心中で笑うと、納得した一木の次に妹の方に向き合った。


(みゃお)の事を黙っていたのは……その上情報を遮断したのは悪いと思っているわ」


「そうだよ俺情報参謀なのに」


「黙れ」


「うぅ……」


 ある種当然とも言える抗議の声が殺大佐から上がったが、ややこしい事になるのでクラレッタ大佐はすぐに黙らせた。

 情報参謀を特定情報から遮断するなどろくな事では無いのは確かだが、放っておけばなけなしの戦力から救出チームを派遣するなどと言い出しかねなかったので、仕方のない処置だったとクラレッタ大佐は考えていた。


「さっきも言った通り、猫の状況は現状不明ですわ。ただ、逆に言えば……もうダメと決まったわけでもありません。あの子も諜報課課長としてベテランですし、自分から勝手に言い出した潜入任務なのです。この状況下であの子にだけ構っていられません」


「でもよぉ……」


「そもそも、あの子がやられたとして。()()()()()()()()()()()()()()


「……いや、そうなんだけどさ。つっても強力な送信設備があるわけじゃないから、簡単に俺の所に来られる訳じゃないし……」


「安心なさい。あなたの妹の生存力は折り紙つきですわ。カルナークでも」


「ちょっといいかな?」


 そこで一木が口を挟んできた。

 少し涙目になった殺と一緒に、クラレッタ大佐も一木の方を向いた。


「……どうか致しましたか?」


「いや、明らかに不穏な言葉が聞こえたから。猫少佐が単独調査に向かって行方知れずって情報も気になるけど、その、ほら。入ってくるとか何とか……一体なに?」


 一木の問いに、クラレッタ大佐は妹の方をチラリと見た。

更新が遅れて申し訳ありません。

次回更新は夕方の予定です。

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