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地球連邦軍様、異世界へようこそ 〜破天荒皇女は殺そうとしてきた兄への復讐のため、来訪者である地球連邦軍と手を結び、さらに帝国を手に入れるべく暗躍する! 〜  作者: ライラック豪砲
第五章 ワーヒド星域会戦

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第28話―1 天空の砲火

 一木を乗せた車両は程なくして戦闘の音が聞こえない地点まで到達することが出来た。


 その頃には周囲を警戒しながら時速100キロ以上で疾走していたクラレッタ大佐とシャルル大佐も一木の乗る60式に再び乗り込んでいた。

 

「大丈夫ですか一木司令?」


 乗り込んで早々、クラレッタ大佐は一木に尋ねた。

 ジーク大佐達の行動によって命からがら逃げだして以降、身じろぎ一つせず宿営地があった方向を見続ける一木を案じたのだ。


 そして当の一木は、問いにも答えられない程動揺していた。

 モノアイは盛大にクルクルと回り、マナ大尉が心配そうに頭を撫でても反応を示さない。


(……お人好しの一木司令には酷だったか)


 クラレッタ大佐は一木の性格を考え、ため息をついた。

 だが、この状況下でいつまでもウジウジしている暇は無いのだ。

 ましてやこの星系最後の人間の指揮官ならばなおさらだ。


「しっかりしてくださいまし、一木司令。ジークの命がけの思いを受け取ったのです。先を見据えてください」


「命、がけ……ジークには……勝算は無いのか?」


 クラレッタ大佐の言葉にようやく一木のモノアイは止まり、ゆっくりとクラレッタ大佐の方を向いた。

 その事に安堵しつつ、クラレッタ大佐はこの愛すべきお人好しを前向きにさせる特効薬を与える事にした。


 即ち、今しがた見捨ててきたジーク大佐()の覚悟のほどを伝える事にしたのだ。


「……無いでしょうね。一木さん気が付きましたが? あの強襲猟兵達の背中にあった大きなミサイルキャリアー、ようはミサイルを収納した筒ですが……」


 怪訝にモノアイを揺らしながら、一木は脳内のコンピューターで自身の視覚情報を検索した。

 たしかに15機の強襲猟兵……中国軍の最新鋭強襲猟兵、三皇と五帝というらしい、の背中には巨大なミサイルが搭載されている。


 さらに詳細を調べると、大気圏内外共に使用可能な高性能ミサイル『スペースアロー』というミサイルの物のようだ。

 そのスペックを何気なく見た一木は驚いた。素晴らしい高性能ミサイルだ。大気圏内外共に射程も長く、誘導には通常の熱源や赤外線、レーダーやレーザーなどに加えてAIによる独立自動追尾機能もある。

 この性能ならば、せいぜい時速300kmのあんな兵器などいちころなのは間違いない。


「凄いじゃないか! これがあればあんな奴ら……」


声を弾ませる一木。

 しかし、クラレッタ大佐は事実を淡々と一木に伝えた。


「あれはダミーです。私達を逃がすため、敵の動きを牽制するために自分たちの機動性を犠牲にしてまで搭載した、ね」


「ダミー……犠牲……」


「ジークの事ですから、ある程度の勝算自体はあったのでしょう。しかしそれだけでは意味が無かった、その意味がお分かりですか?」


「……俺たちか。俺たちを守るために、ジーク大佐達に敵が引き付けられる必要があった……」


 一木の言葉に対し、クラレッタ大佐は軽く頷いた。

 そして頷きながら、妹とその部下たちが死闘を繰り広げている宿営地の方角を見つめた。


「それで選んだのがあのミサイルキャリアー……の箱だけという訳です。あのミサイルはですね、一木司令。確かに高性能ですが使用するためにはかなり大型のシステム一式が必要なのです。搭載AIの管理、整備するための装備類だけでも大型の搭載車両と指揮車……それか艦船が必要になります。どう足掻いても単に運ぶだけならともかく強襲猟兵にあのミサイルが詰める訳が無い」


 カタリと小さく一木が震えた。

 慟哭のためか、悔恨のためか、それとも両方か。

 とはいえ泣きも叫びもしないだけクラレッタ大佐としては優秀であったし、何よりもその震えの後の一木のモノアイは真っすぐにクラレッタ大佐を見ていた。


「でも敵にはそんな事は分からない。宇宙で味方を倒したヤバイミサイルを俊敏な強襲猟兵達が搭載際して周りをウロチョロしている……だからこそ敵はジーク大佐達を無力化しない限り距離を取る……つまり俺たちの車列を攻撃したり帝都に行くことはできない、か……」


「そう言う事です……」


 ある程度納得してくれた一木をジッと見つめながら、その一方でクラレッタ大佐は艦隊全体のデータを見ていた。

 急速に数を減らす五帝達に一瞬心が囚われかけたが、実のところ現状の艦隊の状況を考えればジーク大佐達の動きは些事に過ぎない。


 いくつかの重要視する地点の状況こそが、この後の作戦と一木の未来を決定づけるのだ。

 そしてその重要なうちの一つにして、一二を争う重要箇所にいよいよ動きがあった。


 ジーク大佐達が降下して以来、必死に支援攻撃を求めても行えない程風雲急を告げる事態になっていた場所。

 即ち、ルーリアト大陸の軌道上に展開している主力艦隊の目の前についに火星宇宙軍の艦隊が現れたのだ。


「……一木司令……ようやく前向きになっていただいた所悪いのですが……」


 また一木が落ち込んだりしたら、今度はどう励まそうかなどと考えながらクラレッタ大佐は一木に状況報告をするべく声を掛けた。


 しかも、重要かつ状況把握や方針を決めねばならない場所や状況は多い。


 軌道上の主力艦隊。

 帝都の部隊とグーシュの動向。

 空間湾曲ゲートを防衛しているポリーナ大佐とアセナ大佐の部隊。

 ダスティ公爵領に潜入していて音沙汰の無い猫少佐。

 

(ああ、動向が分からないハストゥール級や連絡のない(みゃお)もか……猫の事言えば今度は殺が落ち込むだろうし……)


 暗澹たる気持ちでクラレッタ大佐は口を開いた。

ちょっと状況を整理する回です。

恐らく作者にも読者にも必要な話だと思います。


次回更新予定は2月15日の予定です。

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