第24話―2 増援
が、そこまでだった。
斬り飛ばされた首がボールのように跳ね飛ばされた瞬間、オルドロの手がその首をお手玉を掴むようにキャッチしてそっと元の場所に戻した。
「これは親愛の証と取っていいのか? 私に魔力の籠らない斬撃が意味を成さない事を忘れたわけではあるまい。それとも……あれか」
オルドロはそこまで言うと押し黙り、抜刀した姿勢のまま息荒く構えを解かないルモン騎士長をジッと見つめた。
「本当に老いたのだな。あんなクリスタルゴーレム以下の兵器相手にそこまで消耗するとは……人間は、本当に……すぐ……」
心底悲しそうにミイラは嘆息した。
ルモン騎士長もその様子を見て、ようやく構えを解き剣を降ろした。
「すぐ、などとよくもまあ。あの決戦からもう50年以上だぞ……で、結局何の用だ。年寄りをあざ笑いに来たのか?」
ルモン騎士長は構えを解いたものの、尚もその声には憎しみとも怒りとも取れる棘があった。
だが、オルドロの方には相変わらずそういったものはなく、尚も友人に相対するような柔らかい空気のまま話し続けた。
「言っただろう? 友の気配がしたから来ただけだと……」
そう言いながら、オルドロはしばし地面をキョロキョロと見回していた。
数秒程そうすると、目的の物を見つけたのか数歩歩き、先ほどまでルモン騎士長が操作に悪戦苦闘していた火人連製の携帯端末を拾った。
どうやら、ここまでのゴタゴタで地面に落ちていたようだ。
「まあ、この感情を理解してもらうのは難しいだろうからしょうがないのだろうな。我々の愛情や好意はどうも生命体の……特に個体には伝わりずらい……」
ブツブツと言い訳するかのように呟きながら、オルドロは携帯端末を何やら操作していた。
そうして数回タップすると、耳障りなアラーム音が鳴り始めた。
「貴様何を……」
ルモン騎士長が困惑半分に問うと、オルドロは携帯端末を騎士長に投げてよこした。
「勇者ジロード・ルモン。通信先に繋げておいたから早く目的を果たせ。そして、早くエドゥディアに帰ってこい」
「お前何を……」
本格的に困惑したルモン騎士長が端末の画面を見ると、オルドロの言う通りハストゥールの艦橋へと通信が繋がっていた。
画面を見ていたルモン騎士長がハッとしてオルドロの方を見ると、そこにはすでに誰もいなくなっていた。
「………………あ奴……一体……」
呆然とするルモン騎士長の耳には、ハストゥールのオペレーターが慌ててルモン騎士長に尋ねる声が聞こえてきていた。予定時間はとっくに過ぎていたため、かなりの慌てようだ。
「……こちらルモンだ。ダーガ草原に進撃中だった敵軍は予定通り撃破した。ニュウに伝えてくれ。先行部隊の転移を開始しろとな」
こうしてルモン騎士長は任務を終えた。
彼の役割は二つ。
ダーガ草原を橋頭保にしてダスティ公爵領へと進撃してくると想定される異世界派遣軍の撃破。
そしてもう一つが、今回の奇襲の原動力となった『万里無の如く』の呪文のテストだった。
『了解しました。あ、騎士長。ニュウ神官長と話されますか?』
「あ……」
ああ、と肯定の返事をしようとして、ルモン騎士長は押し黙った。
これから制御の難しい大軍に対する『万里無の如く』を行うニュウ神官長に対し、心配をかける事を躊躇ったからだ。
(ニュウは……ワシが隠し事をすればすぐに気が付くからの……)
「ああ、よい。少々疲れたでな、ワシは休ませてもらう。ニュウにはよろしく伝えてくれ……」
そう返答すると、ルモン騎士長はまだ何か言っている携帯端末の電源を切った。
無論、そんな乱暴な操作をしたのは、アプリの操作方法が相変わらず分からなかったからだ。
「オルドロ……いったい何のつもり……いや、それよりも。あいつは一体……何なのだ。エドゥディアの魔王が、なぜこの世界のこの星に……」
故郷の古の魔王が、遥か星の彼方にいると言う事実。
そして、その魔王が異世界の機械を軽々と操作する事実。
「いかんのう。話の規模が随分とデカくなってきおったわい……」
暗澹たる気持ちで、ルモン騎士長はニュウ神官長お手製の獣除けの呪符に魔力を込めて起動させた。
航宙揚陸艦とアンドロイドの残骸が散らばる草原で、老騎士は束の間の休息を始めた。
色々と立て込んでしまい、今回も縮小更新です。
申し訳ございません。
次回、猫少佐率いる諜報課視点でダスティ公爵領の様子を描きます。
次回の更新予定は12月18日の予定です。




