第24話―1 増援
一木達が宿営地を脱出し、アウリン1達がルニ半島西方約5000キロの海上に降下したその頃。
ドローンによる最低限の監視が行われるているダーガ草原では、戦闘の消耗からようやく最低限の回復した老騎士が地面に座り込み、懐にしまっていた通信機を用いてハストゥールとの通信を試みていた。
「えーと……ここを指で……たっぷ。? ありゃあ……また絵が最初に戻っちまった。やっぱり魔力消費の事を考えても長距離通信魔法の準備をしておくべきじゃったか……」
だが、それは戦闘から一時間以上経った今でも成功していなかった。
ただでさえ操作性に難のある火星製の通信端末をルモン騎士長はうまく扱う事が出来ず、通話アプリを起動してから通信先を選択するという単純な操作を行うことが出来ずにいたのだ。
「いかんのう。これでは手早く敵の地上軍主力を倒しても意味が……早い所先発隊を送ってもらわんと作戦が……えーと、この青い通信印をたっぷ……」
そうしてルモン騎士長が困難な作業に再び戻ったその時だった。
騎士長が嗅ぎ覚えのある腐臭に気が付いたのは。
「馬鹿な!!」
騎士長は胡坐をかいていた足を即座に片膝立ちに改めると、端末を地面に落とし剣に手を掛けた。
だが、即座に戦闘態勢に移りつつも心中は有り得ないという言葉と気持ちで埋め尽くされていた。
それほどまでに、この腐臭はあり得ない香り……の、筈だった。
「老いたな、我が友よ。あーあ……せっかくの高性能端末が泥まみれではないか……火人連国営工廠の端末は地球のマニアの間で大人気だ。もう少し大事にした方がいいぞ?」
「そんな……なぜ、なぜ貴様がここに!?」
ルモン騎士長は呆然としつつもとうとう問いと共に剣を抜き放った。
強化機兵中隊との戦闘は老騎士の体力を大幅に削り取っていたが、それでも抜かずには、構えずにはいられなかった。
「まあ、そう猛るな。今日は娘とその友人達の手伝いがあったのでこの星に来ていたのだが、懐かしい気配がしたのでね。ちょっと来てみたのだ。老いたとはいえ、中々の戦いっぷりだったなジロード・ルモン」
「何が友だ……ふざけるなよオルドロ! エドゥディア帝国を蝕む魔王が何様だ!!!」
魔王オルドロ。またの名をナンバー7 オールド・ロウ。
地球を支配する七体の機械が一つにして、エドゥディア帝国最大の脅威である魔王であるミイラの様な姿をした怪物は、ルモン騎士長からほんの数メートル程離れた場所に唐突に立っていた。
「……そう怒るな友よ。確かに私は帝国への侵攻を長年続けているし、なんならこうしている最中にも留守番を任せた六魔将が謀略と悪逆を尽くしている……が、それはひとえに君たちエドゥディア人の事を思っての事で……」
オルドロが何気なく語った言葉はルモン騎士長の逆鱗に触れた。
聖剣アルダーバは速やかに振るわれ、オルドロの首を容易く切り飛ばした。
ちょっと忙しくて今回短めです。申し訳ございません。
24話ではルモン騎士長とダスティ公爵領に潜入中の猫少佐の様子を書きます。
よろしくお願いします。
次回更新予定は12月15日の予定です。




