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地球連邦軍様、異世界へようこそ 〜破天荒皇女は殺そうとしてきた兄への復讐のため、来訪者である地球連邦軍と手を結び、さらに帝国を手に入れるべく暗躍する! 〜  作者: ライラック豪砲
第五章 ワーヒド星域会戦

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第21話―6 風の騎士

 逃した。


 そのことにルモン騎士長が気付いたのは揚陸艦を撃破した瞬間だった。

 聖剣アルダーバから放たれたまばゆい光の帯が敵艦を包み込んだ瞬間、最後尾の艦から影が飛び降りたのだ。


 人間でもアンドロイドでもない。

 武骨な機械の人型が見事な身のこなしで地上へと着地していく。

 一瞬の事だったが、それだけでルモン騎士長は悟った。

 全身を歓喜にも似た強い感情が包み込む。


 次の瞬間にはルモン騎士長は駆け出していた。

 膝が折れんばかりに力を込め、全身全霊で駆ける。


 あれは強者だ。

 機械だが武人だ。


 ならば、行かねばならぬ。


 膝の痛みなど忘れ、がむしゃらに駆ける。


 だがそれでも足りない。


我が足よ風の如く(ヘイスト)


 魔力を全身にいきわたらせ、速度を増す。

 だが、足りない。

 あの敵相手には、足りない。


我が足よ風の如く(ヘイスト)!」


 まだだ!!


我が足よ風の如く(ヘイスト)!!!」


 まだだ!!!!


我が足よ風の如く(ヘイスト)!!!!!」


 速度は馬を遥かに超え、自動車に匹敵するまでに加速したルモン騎士長は真っすぐに駆けていく。

 自然魔力消費は膨大なものになるが、手加減して勝てる相手ではない。

 ルモン騎士長の目は脱出した敵の力量を見抜いていた。


(身長およそ人間の1.5から2倍……たしか強化機兵とかいう連中だが、身のこなしが軽い……精鋭じゃ……地球の機械は成長する。なるほど、話は本当じゃった)


 ルモン騎士長は生まれてこの方武に生きてきた人間だ。

 そんな彼だからこそコナ大尉以下6中隊の残存12機の技量をしっかりと見抜くことが出来ていた。


 火星やカルナーク人が言うような邪悪で心の無い殺戮機械ではない、血の通った人間と同様の心を持った、”武”に触れた存在特有の何かを感じたのだ。


「ならばこそ……ワシが相手せねばならぬ! 機械の武……この風の騎士に見せてみよ!」


 もはやここには、戦う理由に迷う老人はいない。

 ルモン騎士長は若い時と同じ、剣と武に生きるはつらつとした一人の武人へと戻っていた。


 そんなルモン騎士長の心情など当然ながら知らないコナ大尉たちは、突如として時速100キロ以上の速度で駆け寄ってきた生身の人間に対し、最大限の警戒態勢に入り、そして攻撃を開始した。


 ルモン騎士長に対して、15mm自動小銃と40mmライフルによる斉射が行われる。

 高性能FCSによって確殺を約束された必殺の銃撃。


 だが、騎士長も当然射撃による攻撃は予測していた。

 魔力を再び滾らせ、言の葉と共に展開する。


我が武具よ壁となれ(ディフェンダー)」 


 銃撃の閃光を視認した瞬間にはスキルは発動していた。


 次の瞬間には人体を真っ二つに割いて余りある威力の銃弾が飛来してくるが、ルモン騎士長はそれらを聖剣で悉く弾いていった。

 あまりの速度に、ドローンや監視衛星から再現した映像ではまるでルモン騎士長がバリアでも張っているかのように見える程だ。


 しかし、コナ大尉たちの実力はルモン騎士長の想定を超えていた。


「気が付いておるのか!?」


 最初は頭部や内臓などを狙っていた銃撃が、数回弾いた後には足を集中して狙ってくるようになった。

 当然、疾走しながら剣で弾くと言う行為がやりづらい部位を狙ってきているのだ。


 ルモン騎士長の全身に痺れるような興奮が溢れる。


我が目よ鳥の如くあれ(ファーサイト)」 


 魔力を両目に集め、敵をはっきりと視認する。

 12の機械の武人達がはっきりと見え、そして瞬きする程の間に射撃を中断して散会した。


 いや、違う。

 一機だけ短距離の移動にとどめ、15mm小銃を連射(フルオート射撃)している。


 足を狙い続け転倒や減速を狙い続ける事を接敵を許すリスクと比べ即座に断念。

 散会して距離を取りつつ、一機だけ残し牽制の射撃を継続しているのだ。


「集団としても、見事。ならば!! 我が刃絡めとれ矢玉(ディフレクション)!」


 ルモン騎士長が用いたスキルによって、フルオートで放たれた13発の15mm弾が聖剣の周囲に絡めとられた。

 膨大な魔力によって聖剣の表層に浮かび上がる銃弾。

 それはまるで蜘蛛の糸に絡めとられたような光景だった。


 地球の常識からすると驚愕するしかない現象だが、さらに驚くべきことにこの銃弾には、未だにその破壊力が保持されているのだ。


刃よ災いを反せ!(リフレクション)


 ルモン騎士長がスキルと共に聖剣を一閃すると、13発の15mm弾は慌てて離脱しようしていた足止めの強化機兵のボディへと叩き込まれていた。


 矢玉や魔法による害を相手に返す、ルモン騎士長必殺の技の一つだ。


 無論、強化機兵の防御性能であれば自身の小銃による射撃のみで致命になる事はあり得ない。

 しかし、魔法によって高速走行するルモン騎士長にとって、その事によるダメージとは致命的な隙を生んでいた。


「た、たいちょ」


 ルモン騎士長にとって唯一想定外だったのは、強化機兵から漏れ聞こえた声が少女のものであったことだったが、それも些末な事だ。


 強者を倒す愉悦を感じながら、ルモン騎士長はその強化機兵を頭部から股座まで真っ二つに切り裂いた。


「まず、一機……」


 少年のような笑顔で老騎士は呟いた。

 背後で真っ二つになった強化機兵が左右に分かれ、草原に倒れた。

次回更新予定は11月12日の予定です。

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