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地球連邦軍様、異世界へようこそ 〜破天荒皇女は殺そうとしてきた兄への復讐のため、来訪者である地球連邦軍と手を結び、さらに帝国を手に入れるべく暗躍する! 〜  作者: ライラック豪砲
第五章 ワーヒド星域会戦

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第18話―4 戦場の様子

 ルニ宿営地は狂乱と言っても過言では無い程の騒がしさの中にあった。

 ありとあらゆるSSとSAが動き回り、倉庫や格納庫からありとあらゆる兵器を運びだし、防衛施設や揚陸艦に積み込んでいる。

 未だに半ば工事中の滑走路からは航空機が飛び立ち、哨戒活動と制空権確保にも余念が無い。


 この騒ぎの半分は予定調和の出撃準備だったが、もう一方は違った。

 七惑星連合の攻撃に備えた防衛準備のためだ。


 そのために、必要性が薄いと格納庫にあった対空兵器や対軌道兵器などの起動作業が急遽行われているのだ。


 だが、そんな中司令部だけは沈黙の中にあった。

 モニターに映し出された宇宙空間の戦況図を前に、誰もが身じろぎすらせずにいた。


 そんな沈黙を破ったのは、オペレーターの報告だった。


「一木司令、月軌道のポリーナ大佐も戦闘に入りました。先鋒部隊を撃破して今は補給中です」


 報告と同時に戦況図にも変化が起きた。

 戦闘中を示すアイコンが、シャフリヤールと重巡洋艦部隊のいる場所に加え、月軌道にも設置されたのだ。


「……サーレハ司令達の乗った軽巡洋艦ヨドが脱出した後なのはいいが……このままだと退路を断たれるな」


 それを見た一木は重苦しい口調で呟いた。

 一木の言う通り、月軌道を抑えられれば月の裏側にある空間湾曲ゲートを抑えられたのと同義だ。

 どんなにシャフリヤールと重巡洋艦が奮戦しても、退路を断たれれば一木達に待っているのは敗北だ。


 だが、これに対してシャルル大佐が反論した。


「大丈夫です一木さん。ポリーナちゃんがいる限り月は……そして退路は安泰です」


「それは……先ほどポリーナ大佐の強さは聞いたが……単機で、敵の新型艦の艦隊相手だぞ?」


 自分の事に様に胸を張って主張するシャルル大佐に、一木はモノアイだけを動かして反応した。

 シャルル大佐はそんな一木のモノアイに不安と怯えを感じ取り、励ますようにいつもの笑顔を浮かべた。


「ポリーナちゃんは異世界派遣軍……いえ、宇宙空間なら地球連邦軍で最強なんです。だから、みんなの帰り道を守るため、あの()はいつだって空間湾曲ゲートの近くにいるんです」


「その上、ワーヒドの月は小さな岩石群に囲まれている。立地条件としては最高だ。ああいう小惑星地帯における空間ゲリラ戦闘ならポリーナの力を最大限発揮できる。その上相手は大型艦が主力だからな。今はまず、あっちの心配はしなくていい」 


 殺大佐も同調すると、一木はゆっくりとモノアイを正面へと戻した。

 しかし、一木のモノアイはキュィィンと音を立てて動き続けている。

 理解はしたが納得はしかねているのだ。


「ポリーナ大佐の戦闘能力については、みんながそこまで言うのなら何も言わないが……」


 一木がそう言うと、その場にいた三人の艦隊参謀は気まずそうな表情を浮かべた。

 ポリーナ大佐が人間に対して殺意を抱く事は可能な限り秘密にしておきたかったからだ。


 一方の一木としても、ポリーナ大佐がそこまで強力な戦闘能力を有しているのなら同型のアンドロイドがもっと大量に配備されて然る筈であり、そうなっていないという事は何かしら言いずらい理由があると分かっていた。


 そんな双方の事情から再び沈黙が生じたが、現状はそんな悠長さを許してはくれない。

 宇宙の戦況はどうあれ、サーレハ司令からの命令であるルーリアト統合体への攻撃を成功させなければならない。


 だが現状、あある事情が一木達を悩ませていた。

 それは、グーシュの脱出だった。


「揚陸艦……ムーンを人員移送用にする準備は整ったのか?」


 サーレハ司令の最期の命令は、ルーリアトからの撤退……とりわけ一木とグーシュの確保というものだった。

 一木に関しては当然問題はない。当人が師団と一緒に退避すればいいのだ。

 

 だが問題はグーシュだ。

 彼女に故郷である帝国を捨てる事を納得することが最大の問題だったのだ。

 それに対する一木の方策が、ルーリアト統合体への攻撃から揚陸艦を一隻外して、グーシュに近い者達の避難に充てる事だった。


「すでに完了していますわ。けれども、他の三隻の収容率はギリギリ……ここまでする必要がありまして? あの皇女様なら事情をおもんばかってくれたのではなくて?」


 クラレッタ大佐が肯定と共に疑念を示す。

 イセクト戦闘団を当初の四隻から三隻の強襲揚陸艦に搭乗させたため、積載状況が悪化した事を責めているのだ。

 とはいえ、一木としてはこれは必要な事だと考えていた。


「グーシュの事だからそうかもしれないが、それに甘えるのはよくないな。話を提示するのと同時に揚陸艦を準備している事実を示すことで、こちらの配慮を最大限表す事が大切なんだ。ここで変に拗らせると面倒だ」


 一木の方策としてはこうだ。

 まず揚陸艦三隻にイセクト戦闘団を乗せて出撃させる。

 その後でグーシュ派の人間避難用の揚陸艦一隻を材料にしつつ、グーシュにルーリアトからの避難を了承させる。

 あとは避難してきた艦隊主力に避難民を移送して、足の遅い先発艦(軌道空母や輸送船等)と共にゲートから退避させる。

 

 そして、最後に攻撃を終えたイセクト戦闘団と共に一木とグーシュもルーリアトから退避というものだ。


(グーシュから残存人員への配慮に関する希望なんかはあるだろうが、そこは聞いて見ないと……だが、グーシュの事だ。案外地球に行けると聞けば非難を簡単に受け入れてくれるかも……)


 一木はグーシュにルーリアトからの退避を提案することに関して楽観していた。

 その上で、揚陸艦による避難準備というダメ押しの交渉材料を用意することで万全を期したつもりだった。


「一木司令、イセクト戦闘団出撃します」


「了解。イセクト中佐に通信繋いでくれ」


 オペレーターからの報告に応え、メインスクリーンに映し出されたイセクト中佐に答礼をしながらも、一木の心は深刻さとは無縁だった。


 シャフリヤールとミユキ大佐は負けないと言う信頼。

 重巡洋艦部隊の戦況の良さ。

 ポリーナ大佐への艦隊参謀たちのお墨付き。

 グーシュリャリャポスティは話の分かる人物だと言う信用。


 全て甘すぎた。


 クラレッタ大佐、殺大佐、シャルル大佐の配慮が裏目に出ていた。

 一木弘和のメンタルを心配するあまり、彼女たちはあまりにも状況を甘く伝え過ぎていたのだ。


 彼女たち自身、姉妹の力を過信していたし、過信したいと思っていたことも裏目だった。


 だからこそ、現状の均衡が優位ではなく薄氷の上だという事に一木は気が付かず、そして最大の誤算が事態を最大限に悪化させた。


「わらわは逃げない」


「は?」


 メインスクリーンの向こう側で、帝城にいるグーシュリャリャポスティは力強く断言した。

 一木のモノアイが凄まじい勢いで回りだした。

更新予定、またもや遅れてしまい申し訳ありません。

最近本業の影響で予定が遅れがちです。

そのため、あくまで予定は予定と思っていただければ幸いです。


今夜もう一回更新予定です。

恐らく短い、です。

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