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地球連邦軍様、異世界へようこそ 〜破天荒皇女は殺そうとしてきた兄への復讐のため、来訪者である地球連邦軍と手を結び、さらに帝国を手に入れるべく暗躍する! 〜  作者: ライラック豪砲
第五章 ワーヒド星域会戦

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第18話―2 戦場の様子

 カルナーク戦の最中、とある問題が異世界派遣軍……そして当時の政府内で持ち上がった。


 それがアンドロイドによる軍隊の創設に掛かる膨大なコストだ。


 当時、そして現在でも言える事だが、アンドロイドによる軍隊というものはとにかく多様なアンドロイドを必要とする。


 歩兵型、指揮官型、参謀型、強化機兵、特殊部隊仕様。

 SAとして車両、航空機、大気圏内外の艦船、施設管理用等々……。


 当然ながら製造工場の種類や訓練に要する設備は増加の一途を辿り、しかも相性や個性の問題でごく少数の好成績を収めた個体以外は別タイプへの変更も難しい。


 カルナーク戦という名の一大イベントに向けて議会と政府は莫大な予算を新しい軍隊のために用意していたが、余裕を見ていた筈のその予算があっさりと枯渇するに至り政治家と官僚たちは危機感を抱き、開発メーカーに問いかけた。


 ”異世界派遣軍の能力を維持したままコストを削減した軍用アンドロイドを造れないのか!”


 当然ながらメーカーや技術者の回答は否だった。

 感情制御型アンドロイドの特性や能力を鑑みるに、現状の体制が(戦訓を取り入れる余地はあるものの)ベストである。


 だが、いつどんな時どんな時代でも妙な人間というのはいるものだ。


 この無茶ぶりに応え、ある構想を持ち出した男がいたのだ。


 男の名はデグチャレフ博士。

 構想の名は”要塞歩兵構想”。

 後に狂気のアンドロイド技術者による、最悪の構想と呼ばれることになる悪夢の計画であった。


 とはいえ、彼が軍に示した構想自体は真っ当なものであった。

 彼は要塞歩兵と称する超高性能アンドロイドに様々なオプションパーツを搭載することで、既存アンドロイドが行う全ての作戦に対応させることが可能であると主張したのだ。


 当然ながらそんな都合のいい主張に疑問を呈する者は多かった。

 しかし、彼が行ったプレゼンを聞いた関係者は一気に乗り気になった。


 彼は言ったのだ。

 現状では歩兵型、指揮官型、強化機兵、航空戦力、軌道上の艦船で行う作戦を、要塞歩兵ならば地上戦ユニットと空間戦闘ユニットの二種類のユニットを装備することで対応することが可能である。


 反対者が言う「そんな高性能アンドロイドは不可能」という主張も、強化機兵程度のサイズのアンドロイドを設計し、ペイロードを十分に確保することで十分可能である。


 これによって作戦能力を落とさずに必要なアンドロイドの種類は一種類のみ。

 オプションパーツもせいぜい四から五種類程度に収まり、圧倒的なコスト面での低下が見込める。


 しかも、アンドロイドの技能習熟する特性を考えれば、少数のアンドロイドが多様な戦場に投入されるこの体制の方が練度の向上が早く、むしろ技能面では現状より早く習熟していく。


 デグチャレフ博士は口が上手かった。

 そして残念な事に、彼に反対する急先鋒だったサガラ社の相良社長は職人気質で口下手だった。


 政治家と官僚が乗り気になった事で一気に予算が付き、博士はプレゼンで示した設計図通りのアンドロイドの製造に入った。


 この段階では、前途は明るいと思われていた。

 未だカルナーク戦では異世界派遣軍が優勢で、連日巨大な戦果が報じられていた。

 政治家や官僚たちはむしろ要塞歩兵構想を実戦投入する場が無くならないかと、それだけを心配していた程だ。


 そうして完成した試作型要塞歩兵初号機”ポリーナ”と最初のオプション装備である大気圏内外兼用空間戦闘ユニットはデグチャレフ博士がプレゼンで提示した通りのスペックを示した。


 宇宙空間の艦船を母艦に発艦し、空間戦闘から制天権の確保までをこなし、そのまま大気圏に突入。

 制空権の確保後地上支援を行い、さらには地上戦闘ユニットを装備することで地上戦闘までをもこなす。

 まさに夢の超高性能、かつ万能性をもった究極のアンドロイドであった。


 当初の課題だったコストこそ要塞歩兵単機で航宙重巡洋艦一隻。

 空間戦闘ユニットに至っては戦列艦二隻分という膨大な予算が掛かっていたが、この点は量産すればある程度改善するとして問題なしと判断された。


 こうしてポリーナの見せた性能に、政府と国防省は試作型の少数量産を決定。

 要塞歩兵部隊を結成し、より詳細なデータを取ろうと試みた。


 当初は博士が追加製造分も製造監督すると主張したものの、他メーカーの技術習得も兼ねて試作量産型は設計図を基に数社に分散して行われた。


 だが、順調だったのはここまでだった。

 ポリーナ以外に四機生産された要塞歩兵たちは、その誰もが空間戦闘ユニットを扱う事が出来なかったのだ。


 製造し、基礎教育を行い、データをインストールし、博士の提供したデータに沿って訓練を行った。

 しかしどの個体も満足に飛ぶどころか、下手をすると戦闘ユニットの初期起動すら出来ないありさまだった。


 いくら何でもおかしいと、異世界派遣軍と製造関係者が原因を調べたところ、とんでもない事実が明らかになった。


 空間戦闘ユニットの習熟に要するアンドロイドの技能が、あまりにも高度過ぎたのだ。

 どうにか要塞歩兵達を実戦投入可能な練度にしようと、様々なシミュレーションや艦船、航空機SAのトップエースたちを用いた実験と訓練が行われた。


 しかし、結果は失敗。

 とある軽巡洋艦のSAは、「このユニットを扱えるようになるまでには一般的なSAで15年かかる」と発言した。


 そうして空間戦闘ユニットを扱えなかった要塞歩兵達は、身長230cmのデカくて中途半端なスペックのSSとして宙に浮くことになり、結局ごく普通に地上戦に投入されることとなった。


 ……と、ここまでなら金のかかりすぎた失敗プロジェクトの一つに過ぎなかった。

 しかし、関係者たちはある疑問を抱いた。


 なぜ、デグチャレフ博士の造ったポリーナだけが短期間で空間戦闘ユニットを完璧に使いこなせているのか?


 これは至極当然の疑問だった。

 後になって製造された四機の要塞歩兵達も、当然ながら博士の設計図通りに、かつ最高の部品と設備と人員で製造されたのだ。


 後に空間戦闘ユニットの解析の際に集められたトップエース達も、アンドロイドとして最高峰の技能を持ったエリートかつ天才達だった。


 そんな存在以上のアンドロイドを意図して製造したのならば、当然ながら要塞歩兵構想以上の画期的発明である。


 だが博士はそれに関しては何ら口にせず、それどころか試作量産の際、頑強に自身が製造監督すると言って聞かなかったのだ。

 それどころか、ポリーナの製造に際しても第三者の関与を拒むような行動言動が報告されるに至り、国防省はポリーナの全面的な解析を強制力を以って行う事となった。


 そして明らかになったのは恐ろしい事実だった……。

次回更新予定は8月27日の予定です。


珍しく連続更新です。

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