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地球連邦軍様、異世界へようこそ 〜破天荒皇女は殺そうとしてきた兄への復讐のため、来訪者である地球連邦軍と手を結び、さらに帝国を手に入れるべく暗躍する! 〜  作者: ライラック豪砲
第五章 ワーヒド星域会戦

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第11話―3 籠絡

『第445護衛戦隊先発します』


『輸送艦隊への搭載作業は現在定刻より04の遅れ』


『ルニ宿営地に強襲揚陸艦ツキ、及びムーン到着しました』


 艦隊指揮所のオペレーターSL達から無数の報告が上がってくる。

 サーレハ司令はそれらに目を通しつつ、進捗を確認しミユキ大佐に指示していく。


「準備は順調……ですがサーレハ司令……本当に勝算はあるのですか?」


 予定通り進む艦隊の戦闘準備だが、ダグラス大佐にはどうしても晴れない疑念があった。

 ミユキ大佐とデータリンクをすすめてみると、どうやらミユキ大佐も同様の様だ。


 火人連の艦隊は、地球とは全く別の思想で構築されている。

 即ち、徹底した長距離戦闘だ。


 無論地球連邦軍も戦列艦という長距離戦闘専門の艦を保有しているが、あくまでそれは重巡洋艦と駆逐艦による殴り込みからの乱戦に至るための隙を作るための物であり、艦隊戦闘の主眼はあくまで近距離の殴り合いがメインだった。


「不安かね?」


「それは不安ですよ。情報によれば火人連の艦隊は徹底した訓練により、統制艦と投射艦による連携時の十万キロ圏内の主砲命中率は八割を超えるそうです。この数字は戦列艦による同条件下のそれに迫る物です。物量差を考慮すれば、間違いなくこちらが重巡洋艦で殴り込みを駆けるより先に擦りつぶされます」


 火人連の艦隊は猛訓練により高い命中率を誇る。


 この事実は異世界派遣軍を始めとする地球連邦各軍はおろか、民間の軍事ジャーナリストやマニアの間でも広く知られた()()だった。

 これ以外にも、火人連の陸軍や宇宙軍には数多くの伝説じみたいわれが多く存在し、地球人はおろかアンドロイド達も恐れる程だった。


「わたしもッス。艦隊戦術を預かる身としては、このまま正面からの殴り合いは避けるべきッス。ジブリールとアズラエルを始めとしたワーヒド軌道の艦船と一木司令達地上戦力を一旦脱出させて月まで一時撤退。敵がワーヒドの軌道を制圧して地上部隊の第一陣を下ろした段階で戦列艦による超長距離射撃で敵を牽制。反物質魚雷によるハラスメント攻撃をはじめとした駆逐艦による奇襲を繰り返して敵を攪乱。隙を見ながら地上部隊を軌道砲撃で漸減し、徹底したゲリラ戦法で行くべきッス」


 データを示しながらミユキ大佐は彼女の作戦概要を説明した。


 もっとも、この内容自体は先ほどサーレハ司令と議論し、その上でサーレハ司令が押し切って却下したものだ。

 どちらかといえば、ここはダグラス大佐に”助け船”を求めて再度口にしたのだろう。


「まあまあ、ミユキ大佐。話は済んだだろう? とはいえ、いい加減理由も言わずにこの見事な作戦案を却下しては申し訳ないな。ミユキ大佐、ダグラス大佐。このデータを見てくれ」


 そう言ってサーレハ司令は手元の端末からとあるデータを二人に送信した。

 怪訝な表情を浮かべながらも、二人はそのデータを確認する。


「これは……火人連艦隊の演習結果と……戦術?」


「個艦データや評価まであるッス。……うそ、これ……よ、弱い!?」


「出どころは信用できるものだ……なにせ、火人連を陰から長年操ってきたコリンズ・ケイン上院議員の提供だからね。まあ、常識で考えれば技術の劣る彼らが、君たちアンドロイドに努力だけで勝てる道理も無いのだよ。猛訓練が技術に勝てない事は、太平洋戦争で実証されているのだからね」


 ミユキ大佐が驚いたのも無理はない。

 データによれば、火人連艦隊の能力は異世界派遣軍の常識からしても非常に低かったのだ。


 レーダーやFCS、艦隊統制システム等の性能は劣悪で、大半がアナログなシステムに依存していた。

 単一目的に絞る事で少人数で最大のパフォーマンスを発揮すると言われた防護艦、投射艦、統制艦の三艦種は低い技術力を人間に負担を被せて補うと言う最悪の設計思想で設計されており、あまつさえそれでも異世界派遣軍に及ぶべくもない。


 そして最大の脅威と見なされていた艦隊の長距離射撃命中率にも欺瞞があった。

 確かに演習時の命中率は八割だった。

 だが、その八割という数字は統制艦十隻以上、投射艦二百隻以上による一斉射撃時に一発の砲弾が命中する確率であり、一隻一隻の個艦命中率では無かったのだ。


 つまり火人連艦隊は同距離での砲撃戦の場合、二百隻以上そろえて初めて異世界派遣軍の戦列艦単艦と同様の命中率を発揮するのだ。これでは到底脅威とみなすことは出来ない。


「こ、これが本当なら……目の前のあいつらはなんであんな自信満々に進撃してくるんッスか!?」


 ミユキ大佐が困惑したように叫ぶと、ダグラス大佐も首を傾げた。


「……こちらが物量と過大評価の圧に負けて引くことを狙っている?」


「まあ、それもあるだろうがね。向こうにも一応切り札があるのだ。これを見てくれ」


 そう言ってサーレハ司令はさらにデータを送信した。


「これは……重宇宙戦闘機アウリン?」


 そうして閲覧を始めるダグラス大佐とミユキ大佐だが、みるみるうちに二人の表情は苦悶に歪んでいった。

 アウリンという兵器が脅威だからではない。

 そのあまりにも残酷なあり様にだ。

次回更新予定は未定です。

予定日時が決まり次第Twitter等で告知します。

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