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地球連邦軍様、異世界へようこそ 〜破天荒皇女は殺そうとしてきた兄への復讐のため、来訪者である地球連邦軍と手を結び、さらに帝国を手に入れるべく暗躍する! 〜  作者: ライラック豪砲
第五章 ワーヒド星域会戦

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第8話―3 証明

 クラレッタ大佐の発言に驚いているのは一木も同様の様だった。

 モノアイを盛大に回しながらクラレッタ大佐の方を見ている。


 とはいえ、モノアイが感情の機微を表している事を知っているルーリアト人はこの場ではグーシュだけだ。

 そうこうしている内に一木のモノアイの動きは収まり、促すように顔を動かすと正面を向いたまま動かなくなった。


(無線通信で何か相談したか?)


 訝しむグーシュだが、皇帝と宰相の手前クラレッタ大佐を無視するわけにもいかない。


「どうでしょうか、と言われてもな。先ほど言った通りだ。わらわとしては、中立化などというほぼ不可能な事に注力すべきではないと考える……第一、帝国の転覆を企む勢力と最初から交渉するなどという行為自体が政情不安を招きかねない行為だ。ここは強硬にいくべきだ」


 クラレッタ大佐の意図が分からず、グーシュは慎重な言い回しに終始した。


(まさかとは思うが……切られた、のか?)


 グーシュの心に小さな焦りが浮かんだ。

 地球連邦と自分との関係は盤石だと、うぬぼれていたのではないか……。

 自分自身が唯一無二だと油断していたのではないか……。


 そんな疑念が染み出すように心の中に広まっていく。


「とはいえ……伝手の無い七惑星連合相手に縁を持ち、上手くいけば仲介者を得られる宰相殿の案は我々地球連邦としては中々に魅力的な案ですので……」


 クラレッタ大佐はゆっくりと言い聞かせるようにグーシュに。

 そして背後の宰相に語り掛ける。


「その通りです。試してみる価値はある、そうでしょう?」


 そして、感触を得たためか余裕のある宰相の声が聞こえてきた。

 胸が締め付けられるような思いでグーシュはそれを聞いていた。


 裏切られたからではない。

 自分が失敗したからではない。

 自分が一木達の期待に応えられなかったからではない。


 もう、遠くには、行けない。


 その思いが強まっていくからだ。


 この、未開の、生まれた場所で。


 死ぬまで、生きていく。


(そんなのは、嫌だ!)


 そう思い至った瞬間、考え無しに声が出ていた。 


「悔しく、ないのか……」


「そう言う事であれば我が国として……」


 グーシュが発した小さな声に反応して、宰相と話していたクラレッタ大佐が発言を中断した。

 

「殿下、一体何を……」


 唐突なグーシュの発現に宰相が警戒した様子で問いかける。

 しかし、グーシュはそれを無視した。

 今語り掛けるべきは、後ろの男ではない。


「悔しくないのか!!! 一木弘和! クラレッタ! (シャー)! シャルル! ジーク! マナ!」


 一人一人名前を叫ぶたびに、皆グーシュを見返した。


「ミラーを殺した連中を……このまま野放しにするんだぞ? いいのか? お前たちの妹を。お前の部下を。わらわの友をあんなにした連中に媚びると言っているんだぞ! 悔しくないのか!!」


 演説の際いつも意識する細かい演技などそっちのけでグーシュは叫んだ。


 まるでおいて行かれそうになった子供が癇癪を起すようだと、どこか冷静な心でグーシュ自身が感じながら叫んでいた。


 だが、だからこそ……。


「ふざけんなよ! 悔しいに決まってんだろうが!!」


 殺大佐と。


「ミラーちゃんを殺した人たちと仲良くなんてしたいわけないじゃないですか!」


 ミラー大佐がその叫びに反応した。


「一木、お前もだ! 悔しくないのか? お前に斬りつけたあいつはシキを殺した奴だぞ? あいつをこのまま野放しにするのか? ようやく目の前に復讐の相手がやってきたのに、むざむざミラーを殺され、ジークを壊され、その上放っておくのか?」


 さらに一木に水を向けると、一木は露骨に狼狽した。

 モノアイが盛大に回りだし、よろめいた一木はマナ大尉に支えられながら一歩後ずさった。


「俺は……俺は……」


「事情があるのは分かる。だが、お前たちがやらなければ誰がシキとミラーの無念を晴らす? 生きて、動いているお前たちだけだ!」


「ええ、そうでしょうとも、殿下……」


 グーシュの叫びに対して、クラレッタ大佐の冷たい声が突き刺さった。

 熱を帯びたまま、グーシュはクラレッタ大佐を見つめ返した。


「ですが、どうしようも無いではありませんか? あなたが我々に何を叫ぼうと、我々がどんなに怒りと悔しさに身を焼こうと。ルーリアトの皆々様が和平を望むのであれば、どうしようもありません。それとも……」


 その時のクラレッタ大佐の目を見た瞬間、グーシュは理解した。


「あなたが、我々に復讐の機会を与えてくれる……そう言うのですか?」


(なるほど。馬鹿げた芝居だ。だが、必要な……芝居……)


「そうだ。わらわが与えよう。復讐の機会を、わらわが与えよう! シキとミラーを殺したサイボーグの五体を割く機会を、わらわが与えよう! 反逆者を焼く機会を、わらわが与えよう!! わらわだけが、お前たちにそれを与える事が出来る!!」


「ポスティ殿下!? 一体何を言っているのです?」


「グーシュ……落ち着け……煽ってどうする? 平和こそ……姉妹仲良く過ごす事こそが……」


 グーシュの叫びに対して、背後から老人たちの声が聞こえるが、もはやそれはグーシュの耳には入っていなかった。


 今はただ、この芝居を演じ切る事だけを考える。


「そうでうすか……あなたがそれを……俺の可愛くて愛おしくてふわふわした妹の敵を獲らせてくれると。一木司令の大切な人の敵を獲らせてくれると……そうおっしゃるのですね?」


 クラレッタ大佐の口調が男のそれに変わる。

 それまでの貴婦人の様な所作が、武人の様な威圧感ある物に変わる。


「そうだ。わらわが獲らせる」


 その威圧感を正面から受け止めて、グーシュは応じた。


「ならば殿下。グーシュリャリャポスティ殿下。そのお言葉、証明して頂きたい……一介の第三皇女殿下には、とうていその言葉を実現させる事は出来ますまい……」


「クラレッタ大佐、よかろう。わらわ自身の手で、証明しよう」


 クラレッタ大佐に応じると同時にグーシュは振り返った。


 そこには困惑した二人の老人と、意図を悟り顔を伏せるガズルがいた。

 ガズルの方を一瞥すると、グーシュはゆっくりと老人たちの方へと近づいていった。

二日連続の投稿遅れ、誠に申し訳ございません。

今日の夜にもう一回投稿します。

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