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地球連邦軍様、異世界へようこそ 〜破天荒皇女は殺そうとしてきた兄への復讐のため、来訪者である地球連邦軍と手を結び、さらに帝国を手に入れるべく暗躍する! 〜  作者: ライラック豪砲
第五章 ワーヒド星域会戦

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第6話―7 星の海向こうの国

「いい、グーシュちゃん。皇太子が不在になった状態で、第二皇女が懐妊した状態で離縁した、つまり皇族に復帰したのよ? この場合、過去の慣例では……」


「ああっ!」


 グーシュは思わず声を上げてしまった。

 なぜ気が付かなかったのか。致命的な失策だった。


 グーシュは現皇帝の元で、ルイガ亡き後皇太子の地位を得て改革の主導権を握るつもりだった。

 というのも、皇帝を入れ札で選ぶようになってなお、皇太子の地位には特別な意味があるからだ。


 皇太子と言う地位は、ルーリアトでは次期皇帝と言う立場以上に、”筆頭皇族”として政務に携わる資格を有することを表すのだ。


 これは次期皇帝として政務に慣れる、いわば練習の機会を与えると言う目的で設けられた慣習だが、言ってしまえば筆頭皇族の地位を利用すればあらゆる政治、行政、軍事に関する活動をほぼ自由に行える強大な権限を有している事と同義なのだ。


 もちろん限度はあるが、事実ルイガはこの筆頭皇族の地位を以って様々な活動を行っていた。

 だからルイガを倒した後、グーシュは当然の様にこの地位を利用して改革を行うつもりだったのだ。


 だが、ここでシュシュが妊娠した状態で皇族に復帰すると話は変わってくる。


 こうなると皇太子の地位はシュシュのものになり、その上シュシュの子供が生まれれば次の皇太子の地位はその子供の物になるのだ。

 つまり、グーシュは皇帝が生きている限りルーリアト帝国内で改革を行う政治的立場を失ってしまうのだ。


 勿論皇帝や地球連邦の後ろ盾があれば活動自体は不可能ではないが、帝国内の正規の活動名目を失ってしまう。

 そうなれば、いちいち官吏や軍人、属国会議とやり取りをする際に権限を得てからでなければ身動きできない。となれば、改革の速度は大幅に低下してしまう。


 だが、ここでグーシュに疑問が浮かんだ。


(わらわを妨害するつもりで妊娠後離縁したのだとすれば……なぜルイガが死ぬことを……いや、そもそもわらわが皇太子の座を狙っていた事をなぜ知っていたのだ?)


 すると、グーシュの疑問を見通したかのようにシュシュがグーシュの方を見返した。

 それだけで、グーシュは心臓が破裂するような怒りを感じた。

 シュシュの一挙手一投足が、グーシュの心を煮立たせるように怒りを湧かせてきた。


「グーシュちゃんは、なんで私が的確にグーシュちゃんを邪魔するような事が出来たのか、疑問に思っているんでしょう?」


 ギリィッ!


 グーシュは歯をむき出しにしてシュシュを睨み返した。

 歯が砕けんばかりに軋みを上げる。


「ふふふ、怒った顔もカワイイ♪ あ、話が脱線したね。ここからが一番大切な報告にして、私がグーシュちゃんの情報を詳しく知っていた理由……そして、最初の言葉の意味……」


「最初の、言葉?」


「そうそう。言ったでしょ、グーシュちゃんは地球連邦大統領にはなれません♪ ってね」


 グーシュとガズルは改めて聞いたその言葉に、警戒心を最大限に高めた。

 なぜなら、間違いなくシュシュとジンライは……。


「さて、グーシュちゃん、そしてお父様。ご報告致します。ダスティ公爵家及びルーリアト帝国属国会議全会派は、秘密裏に次の秘密協定を結びました」


「秘密、協定だと?」


 呆けていた皇帝が、ようやくまともな反応を返した。

 もっとも、ここまで不穏な話題が出ないとまともになれなかったという事だが……。


「ダスティ公爵家及び属国会議全会派は、大陸統治機構ルーリアト統合体を結成。共同してルーリアト帝国からの分離独立及び大陸全土の統治を目指します」


「な、なんだと!?」


「ヨイティ様、正気ですか!」


 皇帝と宰相が驚愕し、叫ぶ。

 だが、今の情報などほんの序の口だった。


「無理だ、とお思いでしょうね? ですがご安心ください。我々ルーリアト統合体はとある組織に参加致しました。その組織からの支援により、我々は速やかなる独立を目指します。すでに、軍事支援もそれなりに受けていますので、ご心配なく……」


 皇帝と宰相は疑問顔だが、グーシュとガズルには見当がついていた。

 だが、ここに至っても否定したかった。

 だが、それは叶わない。


「その組織とは、七惑星連合という組織です。偉大なるハストゥール、暴の覇王ベルフ、統率されし者ンヒュギ、魔法帝国エドゥディア、カルナーク代表者集中共和国軍、火星民主主義人類救世連合、そしてルーリアト統合体。これらからなる、反地球連邦組織……これが、七惑星連合(我々)です」


 一息で言うと、シュシュはグーシュの方を見た。

 そして、凄まじいドヤ顔でグーシュに言った。


「だからね、グーシュちゃんごめんなさいね? 地球人になるのは諦めてちょうだい。あなたには、七惑星連合の一員になってもらうわ」


「シュシュゥ……お前……」


 グーシュの憎悪を物ともせず、シュシュは妖艶に微笑んだ。


「馬鹿な……シュシュ、お前のしている事は不法行為だ! 反乱だ、反逆だ! 帝国の権威をないがしろにして、どういうつもりだ! 帝国法に則っているグーシュとは違うぞ!」


 シュシュに呑まれかけたその場で、一番早く立ち直ったのはガズルだった。

 果敢にシュシュに対して反論するべく声を上げる。


 だが、シュシュは動じない。


「ああ、おじ様。いえいえ、いえいえ……確かに一見すると帝国に仇する行為ですが、違うのです……むしろ、地球連邦こそすべての文明の敵、と言えましょう。そういう点では、おじさまも騙されているのです」


「ふ、ふざけるなシュシュ! だいたい、その七惑星連合とかいう妙な連中に加入したなどと、いきなり言われて納得できるわけがないだろう」


『ならば、ご説明いたしましょう』


 ガズルの言葉を待っていたように、凛とした声が響いた。


 誰だ?


 という疑問を皆が抱いたのと、シュシュの隣に一人の女がいきなり姿を現したのは同時だった。


 その女は青を基調とした複雑なかつ様々な装飾の施された不思議なデザインのドレスを身に着け、さらに宝玉の埋め込まれた縦長の帽子を被っている。


 いずれもルーリアトはおろか、グーシュが知る限り地球の様式とも異なる、異様かつ異常なほど華美な服装だった。

 

 実用性を度外視した薄く透けた布地に、金糸や見事な染色の意図で刺繡を施されたその衣装は、身体のシルエットや肌着が丸見えだった。


 さらに少女は右手に巨大な杖を持っていた。

 こちらも実用性は皆無で、どうみても体を支えたり何かを殴打するのに向いた形状には見えなかった。


 杖は青く透き通った石のような材質で出来ており、さらにその先端には幾何学的な構造の金属によって保持された、人間の拳ほどの青い宝石が付いていた。

 あれでは、持って歩くだけで一苦労であろうことは想像に難くない。


 そんな奇妙極まる女が、瞬きする程の間に突然姿を現したのだ。

 誰もが、驚きのあまり反応すら出来ず、呼吸すら忘れていた。

 そんな中、女が手にしている巨大な宝玉のついた杖をコツリ、と音を立て床についた。


『お初お目にかかります。七惑星連合の盟主、ニュウ・ヴィクトール神官長と申します。以後お見知りおきを……』

 

 透き通る程白い肌の美女は、部屋にいる全員を一瞥した後、吸い込まれるような瞳を怒りに湯立つグーシュに向けた。

神官長登場。


次話ではついに、あの二人が出会います!

お楽しみに。


次回更新予定は2月2日の予定です。

よろしくお願いします。

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