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グラップラーポンポンー2

※エピローグ 状況その3年後「火星」 読了後にお読みください。

「ほざけ!」


 噛みつかれている左手の小指と薬指に力を込める。

 対して、ジンライ少佐は一瞬目を見開いた後、素早く顎に力を入れる。

 サイボーグの咬合力で一気に指を食いちぎるつもりなのだ。

 だが、アイアオ人の肉はそう安くはない。


『うっ』


 呻くようなジンライ少佐の声がスピーカーから漏れる。

 強化セラミック製のサイボーグの歯にヒビが入り、顎の骨格から金属が軋む音が響いたからだ。

 しかし……。


(頑丈なサイボーグめ……下あごを引きちぎってやるつもりが歯にヒビだけか……だがな!)


 意識が逸れればそれでいい。

 ポンポンにはジンライ少佐の電子頭脳……その思考が自信の口元に集中し、身体の動きに関するモノが疎かになっているのが感じ取れていた。


「シャッ」


 今度は反応を許さないつもりで、速度を優先し右足でローキックを放つ。

 だが、ジンライ少佐はまたもや凄まじい速度で対抗するようにカウンターで蹴りを放ってきた。


 次の瞬間。

 

 大木がへし折れたような轟音が響いた。

 そして誰にも聞き取れなかったが、肉がつぶれる様な音も同時に鳴っていた。


 そして、ジンライ少佐は……。

 ポンポンのローキックへのカウンターに放った左足がへし折れ、片足で立っていた。

 先ほど手刀を食い止めた顎も関節が外れたのか、ぶら下がる様にユラユラと揺れている。


 だが、ポンポンも無傷では済まなかった。


 サイボーグの足をへし折った右足は骨が脛から飛び出す程の重傷。

 さらに、噛まれていた左手の小指と薬指は千切れてしまっていた。


(くう……一見痛み分けだが、手と足が使えないこちらに対してあちらの方が優位……だが、負けん!)


 ポンポンは尚も闘志を燃やし、寝技に持ち込むべくタックルを仕掛けようと……。


『やめなさいこのバカ! ポンポン亜人大佐も……私が悪かったから、謝罪するからおやめになってください』


 その闘志に水を差す様な声が響き、ポンポンは思わず力が抜けてしまった。

 同時に、この戦いの原因を思い出す。

 そう、食ってかかってきたのはジンライ少佐だったが、そもそもはこの女が原因だったのだ。


「……蛮族のおん」


『だがシュシュ、こいつは君を侮辱して』


『あなたは黙っててハナ! だいたいなんであなたがポンポン亜人大佐に喧嘩吹っ掛けるのよ! そんな……カワイイ顔を壊しちゃって!! 私が謝れば済む話だったでしょう!?』


 今度はポンポンより先に、ジンライ少佐が蛮族の女に反論しにかかった。

 だが、あっという間に蛮族の女に押し負ける。


 と、またもやポンポンは思い至る。

 確かに自分の名を可愛いというのは侮辱だが、そう言うものだと知らないのであれば、一度は仕方のないことだ。

 にもかかわらず、自分は相手になんといっただろうか?


 蛮族の女、と言った。


 例え事実を述べたとしても、見方によっては最初に侮辱したのはポンポンという見方も出来る。

 なにせ、向こうはポンポンという名前を可愛いと評するのが侮辱だとは知らなかったのだ。


 それに……。

 ポンポンはジッと、目の前で口論という名の一方的な説教を見る。


(……なんだ、ジンライ少佐め……あの蛮族の女……いや、シュシュとかいう女と出来てるのか。ならば、私の侮辱に対し怒るのも必然……)


 そうして、ポンポンは全てを悟った。

 だから、この度の侮辱に関する一件を収めることにした。

 むしろ悪いのはこちらだ。


「……ルーリアト統合体の頭目シュシュ……私が悪かったようだ。蛮族の女などと言った事は謝罪する」


 そうしてモニターに向けて頭を下げると、部屋にいたカルナーク人からどよめきが漏れた。

 ポンポンが頭を下げるのがよほど珍しいのだろう。


『いえいえこちらこそ、あなたの名を侮辱してしまい……申しわけございませんでしたわ。カワイイというのが侮辱にあたるなんて……』


「そうだ。その点だけは注意してほしい。ポンポンは敵の首が地面に落ちる勇猛な音を現した名だ」


 鼻息荒く言うと、ポンポンは片足で飛び跳ねる様にジンライ少佐に近づき、ずいっと顔を近づけた。


「どうやら喧嘩の理由は無くなったようだ。水に流してくれるか、強きサイボーグジンライ・ハナコ」


 ポンポンがそう言うと、ジンライ少佐は少し面食らった様子だった。

 それでも言葉を飲み込み、小さく息を吐き、頷いた。


『……今度はちゃんとした訓練施設で、きちんとした装備でやろう』


 それを聞きポンポンは思わず胸が熱くなった。

 なるほど、RONINNの第一種兵装と自身のサリュガート(アイオイ人伝統の戦斧)。

 双方が得意の得物を持てば、戦いはさぞかし盛り上がるだろう。


「望むところだ」


 そう言いつつ、ポンポンはさらに顔をジンライ少佐に近づけた。

 互いの鼻先が触れあうほどに。

 ジンライ少佐、そしてモニター向こうのシュシュが怪訝な表情を浮かべる。


『……さっきから何の意味だポンポン亜人大佐? まさか……キ……口づけでもしろという事か?』


 ポンポンはムッとした。

 唇と唇をくっ付ける文化は知っているが、それは恋愛絡みのものだ。

 当然自分にそんな意思は無い。


「馬鹿な事を。戦士が互いに認め合ったなら、互いの眼球をなめあう。知らないのか?」


 シュシュがヒステリー気味にやめろと叫ぶ声が響いた。


 そして、ポンポンはアイオイ人の風習が思ったより特殊な事を今更に思い知ったのだ

という訳で短編でした。

設定解説面としての側面が強く、もう少しおもろさに振った方がよかったと反省……。


最後に主要登場人物に関する部分を投稿して、締めとさせていただきます。


次回更新は、本文と自作準備……あと体調不良のため少々時間を開けさせていただきます。


今月末には次回作についての報告と合わせて投稿しますので、よろしくお願い致します。

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