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地球連邦軍様、異世界へようこそ 〜破天荒皇女は殺そうとしてきた兄への復讐のため、来訪者である地球連邦軍と手を結び、さらに帝国を手に入れるべく暗躍する! 〜  作者: ライラック豪砲
第五章 ワーヒド星域会戦

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第3話―6 師匠

「川の騎士よ、あたいを助けた礼だ! あんたの子供を産んでやるよ!」


 その言葉を聞いて、私はなんだか目の前の生き物が好きになってしまった。


――加藤シユウの定番会話ネタより

 悲鳴を聞いた私とダビダ教授は思わず立ち止まったよ。

 そりゃあそうだ。


 あの時の悲鳴はまさに命が危機に瀕した時の、本能からの叫びだった。

 おおよそ子供部屋から聞こえるものでは無かったからね。


 そうしていると、勢いよく女官が部屋から飛び出してきた。

 あんまりにも慌てていて、扉を蹴破らんばかりだったのを覚えているよ。


 飛び出してきた女官と目が合うと、その女官の顔は恐怖に歪んでいた。

 理由はすぐに分かったよ。

 彼女の右耳は千切れかかっていて、血があふれんばかりに流れていた……。

 私とダビダ教授が唖然としていると、彼女の背後からペタペタという足音が聞こえてきてね。


 すると女官は目をむいて半狂乱で立ち去って行った。


 あの瞬間、私はダビダ教授を抱えて逃げ帰ろうかと本気で考えたよ。

 一体、どんな化け物が部屋の中に居るのか、本気で恐ろしいと考えた……。

 

 だが、結局その考えを実行に移す間もなく、私はその部屋の主と対面したのだ。

 そう。

 五歳の時のグーシュ、君だよ。

 女官の血で真っ赤になった両手に、花瓶の鋭い破片を手にした君と、私は出会ったのだ。






「……はっ? いや、その……本当に、わらわそんな事したか? アイムコとの出会いって、もう少し穏便では無かったか?」


 アイムコの回想を聞いたグーシュの口から困惑した声が漏れた。

 一木としては、実態を知らないだけにどうにも反応がしづらい。

 アイムコの顔を見ると、相変わらずの気味悪い笑顔のままだ。


「覚えては無いだろうね。君が覚えている記憶は、恐らく君になってからのものだ。まあ、もう少し聞きたまえ」





 唖然とした私に、血まみれの幼女は舌ったらずな口調で尋ねてきた。


「おんな、どこ?」


 私は何も言えなかったよ。

 怖かったからだ。

 知的生命体の行いを見て恐怖した事は何度もあった。

 おぞましい風習の種族も見て来た。


 それでもなお、あの時のグーシュの姿を見て私は恐怖した。

 悪意の一切ない無垢の害意というのかな。

 そんなものを感じたのだよ。


 だがね、君の先生。

 ダビダ教授は違った。

 

「素晴らしい!」


 そう叫ぶと、君の両脇に手を差し入れて抱きかかえた。

 そして頭上に君を抱え上げえ、クルクルとその場を回り始めた。


 グーシュの両手の血があたりにまき散らされ、ダビダ教授とグーシュの顔にまで飛び散った。

 あの時、私はこう思った……。


 人間って、オモシロ! っとね


 ……いやあ、一木司令。そう睨むなよ。

 ちょっとした冗談だよ。

 あれ、デッドノート。グーシュはまだ読んでないのか?

 私の三作目の殺意の説話の元ネタだよ。今度読んでみるといい。


 ああ、本題に戻ろうか。


 そんな感じで、私がドン引きして帰りたいのとは逆に、ダビダ教授は凶暴な皇女殿下を見ていたく気に入ったんだ。


 曰く、記録で見たボスロ帝の幼少期にそっくり、だそうだ。


 正直それを聞いてもどこがいいのか私には疑問だったよ。

 いくら国父とはいえ、大陸人口を半分にした人間と同じだからと喜ぶのはどうかとね。


 その後、部屋にグーシュを抱きかかえて入ったダビダ教授について行った私は、女官の耳を斬りつけた理由を聞いてまた絶句した。


 ニコニコ顔で尋ねるダビダ教授に、グーシュはこう言ったんだ。


「おみみがなくなったら、どうするかみたかった」


 それを聞いてダビダ教授はますます喜び、私は冷めた。

 嚙まれたり殴られたりしながら狂喜するダビダ教授が理解できなかった。


 それまで賢者だと思っていた人間がとんだヤバい奴だったと知って、正直ガッカリしたよ。

 この星とも今日で最後だ。

 本気でそう思った。






「え、いや待てよ。そこからどうしてわらわの教育係を続けて、その上帝国に居ついたのだ?」


 グーシュが少し慌てたように口を挟んだ。

 一木としても、アイムコには共感しかない。

 そんな状況でグーシュと教授にノコノコついていくなど、常人に出来る判断ではない。


 ……目の前のナンバーズを名乗る機械生命体を人扱いしていいのかは疑問だが……。


 だがそこで、アイムコは君の悪い笑みを歪めた。

 まるで料理の中に髪の毛が入った時の様な、そんなひきつった顔だ。


「結果オーライ……と言えるが……単純に言って、横やりが入ったんだよ。当時は内心怒り狂ったが、今こうしているのを考えると、まあ奴には感謝するべきなんだろうな」


「横やり? 奴?」


 グーシュが首をひねる中、一木にはその横やりの内容に予想が付いた。

 ルーリアトの伝承を考えるに、この星には馴染みのあるナンバーズがいる。


「シュー、ですか?」


 一木が口にすると、アイムコは決定的に顔を歪めた。

 まるで想像したくないような汚い言葉を聞いたような、そんな嫌悪のこもった表情だ。


「その通りだ。私がルーリアトの状況を心中で愚痴っていると……まあ、オープン領域で愚痴った私も悪かったのだが……」







『コミュニス! お前、今ルーリアトにいるのか!?』


 ルーリアトの家を引き払うことを考えていたら、突然脳裏に声が響いた。

 他のナンバーズが通信してくることなど珍しくもない事だが、あの時は驚いたよ。

 なにせ、数千万年の付き合いのある相手から、聞いたことの無いような激しい口調で叫ばれたのだからね。


 いやー、今考えると傑作だったな。

 スルトーマの腰巾着を勤めながら、いつも冷静沈着な策士顔しているあいつが、あんなに声を荒げるのは……。


 おっと失礼。

 そう。一木司令の言う通りだ。


 ナンバー3、シユウ。

 グーシュに分かりやすく言うと、川の騎士シュー。

 奴が興奮した様子で私に通信を入れてきたのだ。


 私がそうだ、と答えると奴は感覚を私と一体化させた。

 それでダビダ教授を割と本気で殴っているグーシュを見るとその後は……私の脳内に奴の泣き声が響いて……思わず意識を失ったよ。

 

 だってなあ、信じられんよ。

 あのシユウがだぞ! 泣き叫ぶなど……信じられなかった!


 いや、失敬……。

 それくらい信じられない事だったのだ。


 しばらくそうした後、シユウは嬉しそうに言った。


「コミュニス、この娘はまさにグーリャリャの生まれ変わりだ! 俺たちで立派に育ててやろう!」


 あの言葉を聞いた瞬間、私の意識は再び暗転した……。

いつもありがとうございます。

という訳でグーシュの過去編です。


次回、ナンバー3の親ばかっぷりが明らかに。


※お知らせ

最近後書きでポロポロ漏らしているように、本業が色々とヤバいことになっております。

とうとう十二月のシフトがまっさらになり、休日は状況を見て前日ないし当日に全休ないし半休を決定するという酷い状況になってしまいました。


そのため従来の投稿予定を告知する方法が出来ません。

そのため、試験的に毎週水曜日に投稿日を固定しての週一回の投稿を試してみたいと思います。


投稿頻度的には今までよりも減少しますが、試験的&暫定的な措置ですのでご了承ください。


という訳で、次回の更新予定は1日の予定です。

何とか、頑張って執筆しますのでよろしくお願いします。

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