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地球連邦軍様、異世界へようこそ 〜破天荒皇女は殺そうとしてきた兄への復讐のため、来訪者である地球連邦軍と手を結び、さらに帝国を手に入れるべく暗躍する! 〜  作者: ライラック豪砲
第五章 ワーヒド星域会戦

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第2話―1 謁見準備

 消火剤塗れのグーシュ達がシャワーを浴び、指揮所代わりの部屋に戻ってくる頃には一木はすっかり落ち着き、いつも通りの態度だった(下半身がイカれて上半身だけ歩兵に抱えられているのを見て、グーシュは思わず爆笑したが……)。


 笑うグーシュを見てマナ大尉がムッとした表情で睨んできたが、面白いものはどうしようも無くグーシュはしばらく笑っていた。


「……ああ、グーシュ。それで、その……」


 そんなグーシュに、一木は怒るでもなく、バツが悪そうにモノアイをユラユラ動かしながら話しかけてきた。

 グーシュはそんな一木を見てため息を小さくつくと、甲冑から着替えた黒いジャージの上着を脱いで近くのテーブルに置いた。


「いいから一木、いったんそこに置いてもらえ。そのまま歩兵っ子に抱えられていると面白くて話にならない……ぷ、くくく……」


「……ありがとう、グーシュ」


「礼などいいから早くしろ」


 グーシュの言葉の後、一木の指示で抱えていた歩兵たちにより、一木はグーシュのジャージの上に載せられた。

 南方蛮地産の高級木材を使用したテーブルは軋み、ジャージを物ともせずに傷を作ったが、どうせガズルは気にしないだろうとグーシュは見ないふりをした。

 一木だけがモノアイを回して焦っていたが、先ほどあれだけ脅かしたのだ。いい気味だとグーシュはまたケラケラと笑った。


「あ、どもどもお揃いで……」


「悪かったな。部屋の掃除ととミラー達を綺麗にするのは整備班に任せて来たよ」


 そんな風にグーシュと一木が談笑していると、これまたバツの悪そうな顔をしたシャルル大佐と殺大佐が部屋にやってきた。その後ろにはむっつりとした顔のクラレッタ大佐と、そんなクラレッタ大佐をジト目で睨むジーク大佐がいた。


 きっと聞こえないだけで一木の尻を壊したことを散々攻めているのだろうとグーシュは検討をつけ、その直後に『クラレッタ大佐が一木の尻を壊した』という言葉の意味を考えてまたもや笑いを抑えられなくなった。


「……グーシュ殿下、なにかわたくしに関して随分と失礼な想像をしていませんか?」


「いやいや、とんでもないクラレッタ大佐! わらわは何も……さ、さあ! それよりも今後の事だ。幸いわらわの腕は痛み止めとナノマシン治療で実生活には影響ないそうだしな、今後の方策を練っておくべきだ」


 グーシュの態度にクラレッタ大佐はまだ不満そうだったが、ジーク大佐に小突かれるとしぶしぶと言った様子で歩みを進め、部屋に設置された液晶モニターの前に立った。


「グーシュ殿下の言う通りですね……わたくし達にのんびりする余裕はありません……火人連の介入が明らかになった今、早急に事を進める必要があります」


 クラレッタ大佐の言葉と同時に、ジーク大佐がモニターに帝都周辺の地図を表示した。

 それには部隊配置も表示されており、それによると現在帝都には一個護衛戦隊八隻の航宙艦と、二百名規模の特務課混成部隊。ジア少佐率いる暴徒鎮圧装備の憲兵連隊が一個大隊五百名。ルニ子爵領から進軍した機械化連隊二千名に、同乗してきた子爵領領民から徴募したグーシュ親衛隊が百五十名。

 

「そう。本来なら慌てる必要なく、ゆっくり確実にルーリアト帝国に地球連邦への帰属を働きかける余裕があったけど、状況は変わってしまった。何せこの通り、帝都には現地人による親衛隊まで入れても三千名以下の兵力しかいない。機甲部隊や強化機兵部隊も不足しているし、状況は芳しくない」


 ジーク大佐が淡々と、しかし少し焦ったような声で説明した。

 そして説明が終わると同時に、モニターの隅に『enemy RONIN 1』と表示された。


「急ぐという方針に文句は無いが……その、火人連のサイボーグというのは、そんなに脅威なのか? わらわの知る異世界派遣軍の戦力は強大だ。それが三千名、空には護衛艦と軽巡洋艦。ルニ宿営地と軌道空母からは戦闘機も飛んでくるのに、たった一人のサイボーグがそこまで脅威か?」


 グーシュが疑問を呈すると、アンドロイド達がちらりと一木を見た。

 視線に気が付くと、一木は小さく頷いた。

 ギニラスの襲撃事件が関係するのだと、グーシュは悟った。


「いい機会なので、グーシュに説明しておこう。火星陸軍特殊部隊について……」


 情報参謀である殺大佐が口を開き、モニターに資料を表示した。

 そこには、人間の視界と思しき映像が映し出されていた。

 少々背の高い人物の視界の様で、周囲にいる人影……歩兵型アンドロイド達が随分と小さく見える。

 周囲の街並みは石造りで、建築様式は異なる物のルーリアトと同様か少々遅れている印象の文明のものだ。


『どうした、何かあったか?』


 映像から聞き覚えのある若い男の声が聞こえた。

 グーシュは思わず、身を震わせた。


「これは……」


「そうだ……俺の視界……俺の記録映像だ」


 一木が陰鬱な声で答えた。

 そして映像の声に応えて、視界の主の前に盾を構えて経っていたアンドロイドが振り返った。


「あっ」


 グーシュは思わず息を呑んだ。

 そこにいたのは、美しいアンドロイドだった。

 銀色の髪を分厚いヘルメットのから少し覗かせた、絹の様に美しい、白い肌のアンドロイド。


『ヒロ君! 前方に妙な反応があるの、後ろに下がって!』


 凛とした、涼やかな声。

 見た目も声もマナ大尉に似ているのに、胸に沁みるような美しさを持つアンドロイドだった。

 マナ大尉は少し悔しそうに、そしてすこし悲しそうに映像を見ていた。


「これは地球連合軍内では誰でも見る事の出来る資料映像だ……042艦隊(うち)ではみんな気を使って人前では見てなかったみたいだけど……そんな事言ってられないし、俺も向き合わないとな」


 一木の声の直後、映像に小さな人影が映った。

 その二つの影は、石造りの街を目にも止まらぬ速さで立体的に機動しながら瞬く間に接近してきた。

 映像に注釈が表示され、それによると推定速度は時速三百キロ。


 グーシュがその速度に驚いている間にも、数百メートル程前方にいた歩兵型の分隊が黒い影と接触した。


「なっ!? こ、これほどか……火星のサイボーグというのは!?」


 グーシュは思わずのけ反った。

 一個分隊八名のアンドロイドが一秒も掛からずに両手足を切断されて行動不能ににされるのを見ては当然の態度だった。


 映像の中の影はいよいよ形状を視認できるほどに近づいてきた。

 艶の無い全身真っ黒な細身の人影が、背部からの噴射炎を微かに輝かせながら猛スピードで突っ込んできていた。

火人連のサイボーグについて、ついに情報を明かします!

次回お楽しみに。


次回更新予定は2日の予定です。

よろしくお願いします。

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