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第31話-3 特務課

 その後は見事なものだった。

 グーシュは人間に対するものと同様に、アンドロイド達の反応を見ながら巧みに自身の主張を話した。

 

 自分は確かに一木を利用して、自身の政治的野心を満たそうとしている。

 だが、逆に言えば自身の利益を全く鑑みない協力者というものを、どこまで信頼できるのか。

 それを考えた事はあるか?


 グーシュはそう問いかけた。


 グーシュは常に相手の反応をよく見ていた。

 たとえそれが、機械の体を持つ者だろうが、機械そのものだろうが。


 この時も、問われたアンドロイド達の細かな仕草を、よく見ていた。

 特務課のアンドロイド達は、自分たちが糾弾するべき野蛮な異世界人が、まさかここまで堂々たる態度で質問してくるなど、思いもしなかったのだろう。


 喜怒哀楽の様々な感情の影に、困惑の色を感じ取ったグーシュは、一気に畳みかけた。


 協力者とは、互いに利を得る事で信用に足る存在になる。

 自分が一木を助け、地球連邦によるルーリアト帝国の制圧を手伝うのならば、自分にも利が無ければならない。

 仮に、利が無いのにも関わらず手伝うような異世界人がいたとすれば、その時こそあなた達はその異世界人を疑い、糾弾するべく調査するべきなのだ、と。


 ここまで言ったところでグーシュは、アンドロイドと一緒に感心していた一木に声を掛けた。

 素晴らしい部下を持ったな代将閣下、と。


 唐突な事にまたもやモノアイを回しかけた一木だったが、流石にいつまでも狼狽えてばかりではない。

 なるべく威厳たっぷりに見えるように頷くと、その場にいたアンドロイド達に心配をかけた事を謝罪し、グーシュは利害の一致したパートナーであり、信用に立つ存在であることを宣言した。


 こうして、アーティ少佐をはじめとする特務課のアンドロイド達は矛を収めた。

 とはいえ、流石にグーシュの言う事を真に受けたものばかりではないようだったが、流石にここまでされた状態で表立ってこれ以上声を上げる事は無かった。


「よーし。殿下と一木司令の説明で納得しただろ。解散! あ、課長連中は残れよ。訓練の打ち合わせするぞ」


 かくして、ミーティングはこれで終了となった。

 殺大佐の言葉と共に特務課の面々は立ち上がり、一糸乱れぬ敬礼をすると、ぞろぞろと退室していった。


 そして部屋には、この場にいた六人の特務課課長のアンドロイド達と、一木をはじめとする地上派遣部隊の幹部、そしてグーシュ達が残った。


 先ほどまで批判の急先鋒だったアーティ少佐をはじめとする課長たちがいる状況のため、どことなく部屋の空気は重い。

 

 そんな空気に一木が耐えきれず、何か喋ろうとスピーカーを作動させようとした矢先、アーティ少佐が口を開いた。


「あー、ガラにもない事したから疲れちゃいましたよ」


 先程までとは全く違う、天然気質な明るい声だった。

 一木が困惑していると、グーシュが朗らかな声で応じた。


「いやいや、流石の演技力であった。特務課の者達も、アーティ少佐が急先鋒となって声を上げれば、流石に自分が出る訳にもいかず、そしてわらわの言葉に真っ先に矛を収めれば、自分たちも引き下がらざるを得ない。見事な脚本だったな、ミラー大佐」


「ま、まあね。けど褒めても何も出ないわよ。私はただ、あの偏屈共が騒がないように作戦を練っただけだからね」


 突如始まったグーシュ達の会話に、一木の脳内は? で覆い尽くされた。

 モノアイが盛大に景気よく回りだす。

 それを見て、ミラー大佐がいつもの調子で声を荒げた。


「あんたは! 案の定じゃないのよ! まったく……」


「い、いやちょっと待ってくれ……一体どういう事なんだ?」


 部屋の面々を見回すと、ミラー大佐以外がすまなさそうに顔を伏せた。

 どうやら、この部屋では自分だけが何も知らなかったようだ。


 そんな困惑する一木を見て、クラレッタ大佐がため息をついた。


「ほら御覧なさいミラー。代将閣下の困りようを。やはり、如何にサーレハ司令の許可があろうと、上司を差し置いて一芝居打つなど、やはり問題がありましてよ」


「一芝居……それってつまり、芝居を……つまりさっきのは演技? え、どこから?」


「アーティ少佐の糾弾からだよ一木。そこから皇女殿下のスピーチまでは、俺たちと殿下で筋書きを書いて一芝居打ったのさ……そんなに睨むなよ」


 殺大佐の言葉に、思わず一木はモノアイを殺大佐にジッと向けた。

 睨んだというよりは、悲しみを込めた視線のつもりだったが、そこまでは伝わらなかったようだ。


「あんたは! 悲しそうな目なんかするな! だいたいあんたがそんなんだから、秘密にしたんじゃない! すぐにモノアイと挙動に感情を出すのいい加減にしなさ……アガガガガガガ!!!!」


 ミラー大佐がいつもの調子で一木を怒鳴りつけるが、その叱責は最後まで言う事が出来なかった。

 クラレッタ大佐がミラー大佐の頭を思いっきり掴んだからだ。

 凄まじい握力で、チタン合金と強化セラミックの複合装甲である参謀型SSの頭蓋骨が軋みを上げた。


「あ・な・た・は! 上官への口の利き方、もう一回叩き込みますわよ? このまま頭破裂させてデフォルメミラーに戻る?」


「いや、クラレッタ大佐それはやめてくれ……ミラー大佐は今回のその……芝居? とやらのためにそうしたんだろうしな……というか、どういう意図でこんな事になったのか教えてくれ」


「うむ、では説明しよう」


 一木の言葉に、なぜか問いかけた参謀ではなく、グーシュがニコニコしながら口を開いた。

投稿がすっかり遅くなり申し訳ございません。

今日中にもう一回更新しますので、どうかよろしくお願いします。

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