インタールード06
ジント様からのご指摘に伴い、急遽投稿します。
近衛騎士カカロとお付き騎士との戦闘です。
ややグロいので、苦手な方はご注意を。
三人の女たちの内、一番足の速い先頭の女に向かい、カカロは走った。
後方で弩を構えた連中に、薬式鉄弓を構えた者達もいる状況では、相手の出方を待つ戦法を採る余裕は無い。
抜刀した片刃の剣を頭上に掲げる。
重く、切れ味よりも頑丈さを優先した剣だ。
女たちが持つ薄刃の直剣では、筋力に関係なく受けることは困難な筈だ。
「どああああああああああああああああ!」
気合と共に叫び、先頭の女に対し剣を振り下ろす。
事務仕事の増えた身にしては会心の速度だったが、女は軽やかな足運びでそれを躱した。
そして、必殺の一撃であろうすさまじい速度の突きを繰り出してきた。
仮にカカロが全盛期であろうと、この距離では躱しようのない一撃だった。
なすすべなくその突きはカカロの左脇腹を貫いた。
「がぁ!」
その上、カカロが左脇腹に熱さを感じた次の瞬間には手首を捻り、臓腑をかき回した。
言いようのない、致命的な不快感と痛みがカカロを襲った。
(と、まあ……お付き騎士ならここで満足するわな)
カカロは武勇で名を知られた近衛騎士ではあるが、帝国最高峰と言われる剣術教育を受け続けてきたお付き騎士に勝てるほどではない。
騎士の剣術教育とは、その大半が実戦を志向したものであり、集団戦や重装備、様々な支援を前提としたものだ。少なくともカカロの習った剣術とはそうだった。
だからこそ。
そんな凄まじい腕前の剣術家相手だからこそ。
泥臭い騎士流の技が通じる機会は、試合ならば決着がついたであろう今しか無い。
次の瞬間、カカロは焼き付くような腹に力を込めると、その身を地面に這いつくばるように低くした。
急な動きに突きを繰り出した女が付いてこれず、剣から手を離した。
カカロはその隙を見逃さず、低くした姿勢から女の腰を抱え込む様に、猛烈な体当りを繰り出した。
女がバランスを崩して倒れ込む。
だが、容赦はしない。
カカロは倒された事に驚いて、対応が遅れている女の下腹部、子宮のあたりを強く殴打した。
腹を殴られた女が胃液を吐き、悶絶する。
これで、すぐには動けない。
カカロは素早く立ち上がり、すでに間合いに入っている次の女を見据えた。
その女はすでに、右斜め上から剣を振り下ろしている最中だった。
狙いはカカロの頭部。
先頭の女の轍を踏まないよう、一撃で決める気だ。
そんな次の女の剣の軌道を見たカカロは、素早く左脇腹に刺さった剣の柄を持つと、抜刀術の要領で抜き放った。
神速とまではいかないものの、勢いよく放たれた斬撃が、剣による受けを想定していなかった次の女の右腕を斬りとばした。
次の女は悲鳴を上げずに距離をとる。
中々の手練れのようだ。
だが、対するカカロはここが限界だった。
先ほど自分の腹を鞘代わりにした代償に、腹からは内臓がこぼれていた。
大量の出血と痛み。
刺さった剣を捻られた事による内臓の損傷と、その内臓が地面にこぼれ落ちる惨状。
カカロは耐えきれず膝をつくと、何とはなしに斬り飛ばした腕を手に取った。
美しい装飾の女物の腕輪がついた、修行に明け暮れたとは思えない美しい腕だった。
「一人くらい……連れて行きたかったが……」
「先帝の甥のお付き騎士の右腕では不満か?」
カカロの小さな呟きに、意外な事に返答があった。
二番手の、腕を斬り飛ばされた女だった。
顔は隠されているが、鍛え上げられながらも美しい腕だ。肌艶もいい。
きっと、美人だろう。カカロはそう思った。
「いや……じゅう、ぶんだ」
近衛騎士カカロは、こうして死んだ。
倒れたカカロを注意深く警戒していた三番目の女が、すでに息をしていない事を確認すると、口笛を吹いた。
すると、周囲の路地から弩や鉄弓を放った男達が姿を現し、負傷したお付き騎士二人を介抱した。
さらに現場に残された矢や物品の回収作業を行う。
そして当然、斬り飛ばされた腕も回収しようとするのだが、それを斬り飛ばされた当人が止めた。
「腕はそのままでいい。その騎士に、くれてやったものだ」
女はそう言うが、現場に証拠を残すことになりかねない行為だ。
腕を回収しようとした男が困惑するが、三番目の女が頷くと、少し迷いながらも腕から手を離した。
「いいのか?」
三番目の女が腕を無くした女に小声で尋ねた。
「武人には、礼を尽くしたい。僕の腕一本でそれが出来るなら本望だ」
腕を無くした女は、何事も無かったようにそう言った。
そしてお付き騎士達は、満足そうな死に顔の近衛騎士を残し、その場を後にした。
今回の様なご指摘も非常に助かります。
質問、ご意見、要望等もお気軽にどうぞ。
ただし、全てに対応は出来ませんので、ご了承ください。




