表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
144/535

第11話-1 会議

次回は更新は未定です。ただ遅くても18日には投稿します。


余裕があれば、強襲ヘリコプターキルゴアと、大気圏内用戦闘機ジークメッサーの解説を投稿します。

 殺大佐とシャルル大佐に一通りの説明を終えたところで、ようやく会議の開始となった。

 出席者は次の通り。


 一木弘和代将  第049機動艦隊地上派遣部隊司令兼第四四歩兵師団師団長。

 マナ大尉    一木弘和代将付き副官。

 (シャー)大佐       艦隊情報参謀兼地上派遣軍副司令。

 ジーク大佐   艦隊作戦参謀。

 シャルル大佐  艦隊文化参謀。

 クラレッタ大佐 艦隊内務参謀兼外務参謀。

 ミラー大佐   艦隊副外務参謀兼グーシュ皇女の癒し係。

 グーシュ皇女  ルーリアト帝国第三皇女 現地協力者としてオブザーバー参加。

 ミルシャ    第三皇女お付き騎士。現地協力者としてオブザーバー参加。


 クラレッタ大佐の参加により、課長クラスの現場指揮官が業務を離れて不効率な会議参加に時間を取られることが無くなり、業務効率が改善されることとなった。


 降下後様々な事があったが、ようやく目標としていた現地協力者を交えた体制が揃った事になる。

 一木は部屋にいる面子を見渡すと、癖になっている、今の体では不必要な咳払いをして話し始めた。


「みんな。降下後様々な事があったが、ようやく足並みがそろった。これからはこの人員で、今後の対策を決めていく事になる。さて、それでは今回新たにオブザーバーとして参加してもらう事になった、グーシュリャリャポスティ第三皇女から、一言頂きたいと思う」


 一木がやや芝居がかった動きでグーシュを促す。


 グーシュは少しの間ミルシャに抱っこされたデフォルメミラー大佐の頬を突っついていたが、ミルシャとミラー大佐に促されると、少し緊張した面持ちで立ち上がった。


「グーシュリャリャポスティである。皇女などと言う堅苦しい言葉は不要だ。以後はグーシュで構わん。

奇妙な成り行きではあるが、これからルーリアト帝国と地球連邦の平和のため、粉骨砕身頑張っていく所存だ。皆、よろしく頼む」


 そう言って頭を下げるグーシュに、部屋にいるアンドロイド達から拍手が起こった。


 ただミラー大佐だけは、手が短いため拍手が出来ず、絶望したような表情を浮かべていた。


「さて、それでは殺大佐。始めてくれ」


「はっ」


 立ち上がった殺大佐が、手元の端末を操作すると、出席者全員の手元に空中投影式の映像が表示された。


 それを見てミルシャがビクリと体を震わせたが、ミラー大佐が机によじ登り、画面の見方を教えると、おっかなびっくり見始めた。


 その一方で、グーシュは物おじせずに画面を弄り始めた。

 表示が切り替わり、艦隊ネットのトップ画面が表示される。

 その様子を見て、苦笑いを浮かべながら殺大佐が注意した。


「あー、グーシュ様。変な所弄らないでください……」


「ああ、すまないな。ミラー大佐、どうやって戻せばいい?」


 ミラー大佐がポキュポキュ音を立てながら画面を元に戻すと、苦笑しながら殺大佐は説明を開始した。


「えー、まずはルニ子爵領の状況からだ。現在子爵領周辺の主要な道路は、全てコンクリートで舗装済。橋も鉄製に架け替えた。主要な車両の通行に問題は無い。さらにルニの街及び、領内の村落すべてに憲兵隊と警備ロボによる治安維持活動を実施中だ。本格的な交戦は兎も角、この星の戦力相手なら防衛は完璧だな」


 説明と共に地図に表示された図面には、子爵領内の幹線道路図と配備戦力が表示されていた。


 戦力の大半は宿営地に配備されているが、周辺村落と領内外周部の警戒部隊からの報告により、万が一の場合でも、子爵領内のどこだろうと十分以内の展開が可能となっている。


「さらにこれに加えて、明後日には飛行場の設営作業が完了する。これに伴って、強襲ヘリ キルゴア一個中隊が到着予定。来週には大気圏内用戦闘機のジークメッサー 一個中隊十二機も到着する予定だ。これが済み次第、宿営地の予定戦力は全て揃うことになる」


 殺大佐の解説と共に、到着する機体のスペックと動画が表示される。

 ミルシャはよくわかっていないようだったが、グーシュは嬉しそうに動画をみて、ミラー大佐にあれこれと質問していた。


 それを聞いて、不安に駆られたのかミルシャがおずおずと手を挙げた。


「申し訳ないが、質問がある。この……空を飛ぶ機械で……帝都にこの、バクダンでクーバクするのか?」


()()()()()()その予定は無い。あくまで、これは既定の戦力に過ぎない」


 殺大佐がそう言うが、ミルシャの顔は青ざめたままだ。

 ミルシャは不安そうにギュッとミラー大佐を抱きしめた。


「むぎゅう」


「ミルシャさん」


 そんなミルシャの様子に、一木は声を掛けた。


「心配しないでほしい。確かに最悪の場合そういった可能性は否定しないが、現状我々はあくまでグーシュを前面に立てた穏便な行動を目指している。今日は、そのための作戦を決める会議でもあるんだ」


 一木が説明すると、すかさず殺大佐が補足してくれる。


「そういう事だ騎士ミルシャ。さて、ここまでは地球連邦側の状況だが、続いてルニ子爵領自体の説明だ。現在子爵領とは協定を結び、さっき言ったようなインフラ整備や治安維持にあたる権利を認めて貰ったが、さらに昨日の演説で、対皇太子一派との戦いへの言質を取る事に成功した」


 手元の画面に、昨日のグーシュとルニ子爵達との会話が表示される。

 自分達では戦えないので、地球連邦の介入を認める。

 そのように解釈できる会話が行われていた。


「演説中のルニ子爵自身の言葉で、子爵領自体が皇太子一派との戦いに参加するという言質も取った。ただ、これ以上はあえて望まない。文書にもしない」


「どうするのだ?」

 

 グーシュの問いに、殺大佐はニヤリと笑みを浮かべた。


「子爵達には、文書にしないで、言った言わないと後々言い訳する余地をあえてやる。そのうえで、実際の協力体制を勝手に構築させてもらう。さて……グーシュ様。昨晩、容疑者を捕まえた後の治安騎士たちが、この宿営地で飲み食いして大騒ぎしたって言えば、どうですか?」


 殺大佐の言葉に、今度はグーシュがニヤリと笑みを浮かべた。

 ミルシャは意味が分からないのか、ムニムニとミラー大佐の頬っぺたを揉んでいた。


ハメヘー(やめてー)


「なるほど! 太鼓腹は放っておいて、実務者である現場の騎士や衛兵を取り込もうという事か」


「そういう事。昨晩の接待の感覚だと、年かさの連中は賄賂で何とかなる。こいつらには既存の騎士団と衛兵を束ねてもらい、そのうえで装備を融通する。そうして、この子爵領の戦力を間接的にこちら側に取り込んでいく予定だ」


 そういって殺大佐が画面に表示した装備は、鉄製のヘルメットや防刃ジャケット。現地勢力支援用の銃剣付きボルトアクションライフルなどの、この星においては強力すぎる代物だった。

 少しミルシャの顔が曇ったが、グーシュはウキウキとしている。


「さらに、めっけもんがいた。一番下っ端のクーロニって騎士が、こっちの歩兵に入れあげてる。ちょうどいいからこいつに義勇兵扱いのアンドロイドを指揮させて、グーシュ様直轄の部隊を拵えちまおう」


 画面に表示された動画には、他の酔っ払いとは違い、素面で熱くグーシュへの忠誠心を語る少年騎士が映し出されていた。

 間接的な協力者を一歩越えた、直接的な手駒にはちょうどいい人物だ。


「それはいいな。直接的行動は求めないという確約と引き換えにすれば、太鼓腹は簡単に認めるはずだ。ふむ……わらわの直属だからな……親衛隊の隊長とでもするか」


 グーシュの言葉に、どことなく薄ら寒い物を感じた一木だったが、些細な事だと自分を誤魔化した。

 演説手法だけではなく、そんな所まで真似することは無いだろうに……。


「さて、ルニ子爵領の状況についてはこんなもんだな。それに伴って、この後グーシュ様には騎士たちと会って貰いたい。そこでまとめ役の騎士に、具体的な話を付けてくれ」


「うむ、わかった」


 グーシュが満面の笑みで応じる。

 これで、地球連邦の戦力に加えて、グーシュをリーダーとする具体的な現地勢力のひな型が出来た事になる。


 今後は、このグーシュ派改革勢力を担ぎ上げて活動していく事になる。


「子爵領内の治安組織の取り込みと、グーシュが自分で動かせる武装組織……親衛隊の構築……よし、では、他に異論が無ければこの件はこのまま進めようと思うが、みんなどうだ?」


 一木が質問するが、反対の声は上がらなかった。


「よし、これで行こう。ジーク大佐は宿営地の構築と、親衛隊に参加するアンドロイドの選定」


「了解」


「シャルル大佐は、騎士たちの接待と賄賂。そして騎士団への支援物資と訓練を頼む」


「わっかりました!」


「そしてクラレッタ大佐。あなたにはルニ子爵との交渉を頼みます。彼らの不信感と不安を可能な限り取り去り、可能ならば本心からのグーシュ派の中核にしてもらいたい」


 先ほど聞いたミラー大佐のボディを破壊した戦闘力のためか、どことなく緊張した面持ちで、一木はクラレッタ大佐に命令した。


 当のクラレッタ大佐は、楽しそうに、そして優雅に扇子を広げていた。


「ふふふ、そんなに硬くならなくても……承りました。高圧的にするだけが交渉では無いことを……ミラー? ちゃんと見ていなさい?」


 笑顔のままで、クラレッタ大佐が射抜くようにミラー大佐を睨みつけた。

 どうも、本当に厳しいアンドロイドのようだ。

 ミラー大佐の怒鳴り声も一木にとっては怖かったのだが、それとは違うベクトルの違う恐怖があった。


 ミラー大佐の方もそれは同じようで、柔らかくて丸っこい、小さな体をびくりと震わせていた。

 感じ取ったのか、ミルシャが守るようにギュッとミラー大佐を抱きしめた。

 

(しかし随分と馴染んだな……)


 一木は、先ほどからのミルシャの様子を見て感慨にふけった。


 ミラー大佐を可愛がっていたのはグーシュも同様だが、先ほどからの様子を見ると、ミルシャの可愛がり方はグーシュ以上だった。


 ミルシャの少女的な感性に、どうもデフォルメミラー大佐の造形がクリーンヒットしたらしい。


(ミルシャさんにも、ミラー大佐にも……いいことだ)


 心の中で独り言ちると、一木はさすがに助け舟を出した。


「クラレッタ大佐、それくらいで……。ミラー大佐も学べるところは学んでくれればそれでいい。さて、殺大佐、続きを頼む」


 一木が水を向けると、苦笑していた殺大佐が端末を操作した。


「では、続ける。次は、ルーリアト帝国の状況だ」


 殺大佐の説明と共に、画面に一人の少女型アンドロイドが映し出された。

 諜報課課長の(ミャオ)少佐だ。画面の隅にはLiveの文字がある。

 リアルタイム動画だった。


「どうも、諜報課課長の猫少佐です。現在帝弟閣下の屋敷からお送りしております」


「「ああー!」」


 その姿を見て、グーシュとミルシャが大きな声を上げた。

 部屋にいる全員が、驚いて二人を思わず見た。


「「鶏肉宿の変な幼女だ!!」」


「あー、その節はどうも……」


 グーシュ達の言葉に、恐縮したように頭を下げる猫少佐。

 その姿に、グーシュは納得したように手を叩いた。


「なるほど、お前やあの男もアンドロイドだったのか……どうりでミルシャの投擲でも倒れんわけだ」


「あれ、人間だったら死んでましたよ」


 半眼で告げる猫少佐だが、ミルシャはどこか照れたように赤面した。


「いや、褒めてませんからね……あー、異世界人はこれだから怖い……」


「まあまあ……」


 一木がフォローするが、猫少佐はしばらくブツブツと何やら文句を言っていた。

 しかし、それが終わると、気を取り直したように説明を再開した。


「帝都には昨日の朝ごろには、グーシュ様が橋ごと落下したと知らせが入っています。夕方には一般にも橋の崩落と、グーシュ様行方不明の噂が出回っています」


「うーむ。イツシズだな……」


 ポツリとグーシュが呟いた。

 それに、猫少佐も頷く。


「その可能性が高いですね。噂にしては広がりが早く、亡くなったという確信めいた話も出回っています。実際出どころは近衛騎士の下っ端や子飼いの者の様です」


「それで、反応はどうだ?」


 一木が聞くと、猫少佐は少し困ったような顔をした。


「ん、どうした?」


「いえ……じつはですね……昨夜の内から、帝都では別の噂が急速に広がっているんですよ。そのため、今朝はどこもかしこもそちらの噂でもちきりでして……」


 猫少佐の言葉に、グーシュやミルシャまでもが怪訝な表情を浮かべた。


「どんな噂だ? 猫少佐よ?」


 グーシュの問いに、猫少佐は告げた。


「近衛騎士のイツシズが、皇太子に気に入られようと暴走して、グーシュ様を殺した、という噂です」


 予想外の情報に、部屋にいる全員が驚愕した。 

御意見・御感想・誤字・脱字等の報告、いつもありがとうございます。


皆さんの閲覧、ブックマーク含め本当に励みになっています。


よろしければ読んだ感想や作品の好きな所などを教えていただければ作者の力になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ