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第3話 疑念

予定を変更して、延々と武器の解説しながらグーシュが感心する場面はカットです(多分面白くない)。

代わりに、近い内に兵器解説でも投稿したいと思います。

 一木は次の段取りに移るべく、ジーク大佐に通信をつなごうとする。


 その刹那、不意に違和感が一木の中で起きた。

 先ほどグーシュとミルシャにした話の中で、何か引っかかりを覚えたのだ。


(なんだ……どこに引っ掛かった……)


 必死に思考を巡らす……どこに違和感を感じた。


 グーシュとミルシャに。

 アンドロイド達の。

 美少女とゴリラ。

 賽野目博士……賽野目……羅符。

 らふ。博士の本名。


(そうだ、あの時……)


 グーシュと盟約を結んだあの時、グーシュが言った誓いの言葉にあった神々の名前。

 アイリーン・ハイタ同様だとすれば、活動するナンバーズを特定する手掛かりになるだろう名前。


『おお、ハイタの偉大なる息子達、スート、シュー、ヒーダ、ラフ、ミュニス、オルド・ロー 』


 ラフと羅符。

 偶然だろうか。

 そう考えれば、シキに似たアイリーン・ハイタに対して、そもそもシキを製造した責任者は賽野目博士だ。


「一木……」「弘和君?」「司令……」


(賽野目博士が……ナンバーズ……だとすれば、シキは……)


「大丈夫か?」「大丈夫?」「大丈夫かい?」


 体を揺すられ、一木の意識は現実へと戻った。


 気が付くとパレードは終わり、次に予定していた射撃実演の準備が出来ていた。


 目の前ではグーシュとマナ、そしてジーク大佐が心配そうに一木の顔を覗き込んでいた。


「あ、ああ。すまない、少し疲れていて……もう大丈夫だ」


 そう言って一木は誤魔化すと、立ち上がった。


「みんな、すまなかった。だが素晴らしい行進だったぞ。四四師団の精強さをグーシュ殿下に存分にお見せできた。ありがとう」


 一木がそう言うと、第二連隊の面々の顔に笑みが浮かんだ。

 その様子を見たジーク大佐が次の指示を出す。


「さあ、のんびりしている暇はないぞ! 第二連隊は総員ルニの街へのパレード準備、選抜分隊はグーシュ殿下への射撃実演準備だ、急げ!」


 ジーク大佐の指示を受けて、連隊はキビキビと移動と準備を開始する。


 そして、グーシュは分かりやすいほどウキウキしだした。

 マスケット……薬式鉄弓を撃ったと言っていたし、やはり武器等に興味があるのかもしれない。

 そんな事を考えていると、目の前に射撃実演のために選抜された一班四名のSSが並んだ。


 班とは異世界派遣軍の最小の部隊単位であり、班長一名と三人の班員の合計四名。

 そしてこの班が二つで一分隊となり、二個分隊十六名に本部班四名の合計二十名で一個小隊が編成される。


 そして目の前の班のメンバーが手にする銃は、異世界派遣軍の基本的な装備だった。

 地球の主力兵器を見てもらうのにはうってつけと言うわけだ。


「ではグーシュ、紹介しながら実演しよう。まず、標的はあれだ」


 そう言って一木が示したのは、30m程離れた場所にある、盗賊のアジトから見つけたルーリアトの一般的な兵士が身に着ける鎧を着込んだマネキンと、その首につり下げられた鍋だった。


 ルーリアトの歩兵装備とは、金属の胸当てと動物の皮を数枚重ねて作られた胴鎧に、鍋の様な形の鉄兜。

 刀剣により斬りつけられた際に刃の切断力を減じるための、ひらひらとした袖口。

 下半身には布製のズボンと革製の前掛けを一枚身につける。

 基本的には斬りあいへの対処を目的とした装備だ。


 実を言うとデモンストレーションとしては、それこそグーシュのような皇族が身に着ける金属甲冑がいいのだが、さすがにこの国の文化的にそれはまずいと言うことになったので、標的は歩兵装備にルニの街で調達した鉄鍋で済ませることになった。


 距離的にも本来ならばもっと遠距離で行うのが普通なのだが、グーシュ達に見えやすいように比較的近距離となった。


「おお、鍋に兵の鎧か! 地球の鉄弓がどんなものか楽しみだな」


 グーシュが興味深げにSS達が持つ銃を眺めた。


「では班長、構えろ」


 ジークが命令を下すと、班長がARK55アサルトライフルを構えた。

 この銃は二種類ある異世界派遣軍の主力小銃の内の一つで、中露の開発局主導で設計されたアサルトライフルだ。弾薬は6.8mm樹脂薬莢弾。カラシニコフの血を引く銃で、とにかく頑丈さと信頼性を重視している。その一方でやや遠距離命中精度に劣り、重量が重いなどの欠点もある。


 ちなみにもう一種類はMS44カービン。欧米メーカー設計のカービン銃だ。弾薬はARK55と共有の6.8mm樹脂薬莢弾。小型軽量で遠距離命中精度に優れるが、ややデリケートで細かな整備が必要など、ARK55とは真逆の特性を持つ銃だ。


 異世界派遣軍では主力小銃を師団ごとにこの二種類から選ぶことになっており、第四四師団ではARK55を選択していた。

 

 一木の見たところ両者の銃の利点と欠点は誤差のような物で、ほとんど師団長の好みの様な物だ。

 部隊レベルで射撃統制システムを装備したアンドロイド達にとっては、まさに弘法筆を選ばず。

 使用する銃の特性などあってないようなものだ。


 現に今も、班長の行う射撃は近距離とは言え素晴らしい命中精度を示していた。

 三発ずつ、細かくトリガーから指を離して射撃しているが、鍋から響く甲高い金属音がするものの、穴は一つのまま増える様子がない。

 そうして程なく、三十発前段を撃ち尽くした。


「班長! 弾倉交換、フルオート!」


「了解!」


 ジーク大佐が班長に向かって叫ぶと、班長が素早くマガジンを交換する。

 さすがに素早く、一、二秒ほどで交換を完了すると、素早く銃を操作してフルオート射撃を行う。


 マガジン内の三十発の弾丸はほんの三秒も立たずに撃ち尽くされ、鍋は砕け、鎧は立てていた台座が折れて地面に倒れ込んだ。


 一木がちらりと見ると、そのあまりの光景にミルシャは青い顔をして、グーシュはまるで大好きなおもちゃを見たようなキラキラとした目でその光景を見ていた。


「ミルシャさん、どうですか? 騎士団で対抗できますか?」


 一木の意地の悪い質問に、ミルシャは一瞬一木をにらみつけたが、すぐに俯くと極めて冷静にこう言った。


「正面から対抗することは困難でしょう……野戦でアレを撃たれてはどうしようもない……市街地や森林などの見通しの悪いところで近距離戦闘に持ち込めば勝機はあるかもしれませんが……」


 そこまで言ってミルシャはちらりと、離れた所で待機している強化機兵を見た。


「あの鉄の巨人が相手になればそれも難しい……まっとうな戦闘では立ち向かえない……です」


「ミルシャは見栄っ張りだな……そんな分かり切ったことを言っていてどうする! なあ、一木ぃ……」


 ミルシャにそう言うと、グーシュは急に猫なで声を出しながら一木にすり寄ってきた。


 おおよそ何を頼むつもりか、一木には分っていた。


「わらわ、あれを撃ってみたいんだが……」


 こういうところは分かりやすい()だ……。

 一木は心の中で苦笑しながら、グーシュとミルシャに前に出るように促した。


「どうぞ、準備してあるので、三人が持っている銃から好きな銃を選んでください」


 班員の三人をそう言って示すと、ミルシャは緊張からか硬い表情を浮かべた。

 対するグーシュは不満そうだ。

 これも分かる。全部の銃を撃たせろと言うつもりだろう。


「全部の種類撃ちたい、だろう?」


「うう……」


「ルニの街に行く予定もあるから……一種類だけだ」


「ならば……後でまた撃たせてくれ!」


「後でですよ……」


 一木はそう応じると、銃の説明を始めた。 

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