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悪どい勇者と優しい魔王  作者: 青羽 紫音
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第二話 魔王

かなり久しぶりの投稿になります。

今回はシリアスな雰囲気あんまりないです。

「は…?あんたが、魔王…?」


ウィンガーが驚きのあまり声を漏らした。

ここまでボクたちを案内して来たあの青年が、俺たち人間の天敵である魔王?あんなに友好的でいい奴そうなのに?…もうわけがわからなくなってきた。何故あいつはボクたちをここに連れて来たんだ?

そんなボクたちの表情を見て、魔王エルデロは先程と同じように優しげな表情でクスリと笑った。


「何故、と言いたげな顔ですね。さっきも言ったじゃありませんか。あなた方と話がしたい、無駄な争いは避けたい…と。」


いや、確かに言ってたけど。てか、ここに来るまでの間に人界と魔界での印象の違いだのなんだの話してたけど、あれこいつ本人のことだったわけだよな?

なんか「私には関係ないことですから」と言わんばかりな言い方してたけど、つまりは本人だったんだよな?

…ボク、魔王の人界での物言いについて普通に言ってたけど、結構ヤバくね?


そんな感じでお馴染みの物思いタイムに入りかけていると、今度はルシファーに小突かれた。


「リンシオ、また人の話ちゃんと聞かずによそ事考えてるでしょ…。」


「サテナンノコトヤラ…。」


「棒読み雑すぎ。」


おい、今ボクのことバカとか思ったやつ。あとでボクの得意な炎魔法で消し炭にするからな?覚悟しとけよ。


チラリとエルデロを見る。彼は変わらず優しげな表情で微笑んでおり、ボクと目が合うとにこりと笑いかけてきた。

…ダメだ、魔王に見えない。というか、さっきからずっと思ってたんだけど・・・100歩譲ってこいつが魔王だとしよう。それにしたって、若すぎやしないか?

ボクも勇者にはちょっと若すぎるとか言われてるくらいだし、あいつどう見てもボクと同い年くらいだろ。

歴代の魔王だって、せいぜい30歳はいってたと思うんだが…。


「あの…よろしいでしょうか?」


ふと、先程エルデロにローブを渡した魔族らしき男性が口を開いた。


「失礼。私はエルデロ様の執務をしている執事で、シュラ・グランと申します。ご覧の通り魔族の者です。」


「…丁寧だ。」


「執事ですから。」


素で言葉を漏らすユドルトに、特に気にする様子もなく丁寧に返すシュラ。

うーん…何故だろう、どう見ても年齢かけ離れてるのに我が家の爺やと似たようなものを感じるぞ。


「もしや、この状況がイマイチよくわかられていないのでは?エルデロ様と会話しながら来られたと言っても、はっきりとしたことは何もおっしゃられていなかったでしょう?」


こちらの反応を見つつ続けるシュラ。

うん、ポイントも的確でわかりやすい。確かに彼と会話しながら来たと言っても、人界と魔界の印象や伝承について少し話してただけだし、ぶっちゃけ核心に触れるようなことは一切なかった。

シュラの言葉を聞き、エルデロはあっ、と声を漏らした。


「そういえば、ちゃんと説明してませんでしたね。そうですね…私が望んでいるのは魔界と人界の平和。率直に言ってしまうと、そちらとの和平協定です。」


「…はい?」


え?和平協定って言った?マジで?


「いや…そりゃそんなこと出来たらこっちも大満足だけどさ…そんな簡単にできることなのか?魔界の住人たちの了承とか必要になってくるんじゃないわけ?」


「人界人の方々も同じだとは思うんですが…無益な争いって、悲しみと後悔しか生まないじゃないですか。それもあってか、最近じゃ魔界の民からの進言でも特に多いのが魔界と人界を繋ぐ大扉を閉ざしてしまうことなんですよね。」


「…まあ、これまでの戦いとかで大扉に近い街は長年甚大な被害を出してるからな。」


「でしょ?それで私は考えたんですよ。どうしたらこの被害者が出るだけの戦いを終わらせることができるか、って。」


「終わらせる…。」


「その過程で、私はふと思いました。というか気がつきました。」


エルデロは玉座の肘掛に寄りかかり、考え事をするようなそぶりで。なおかつ、不思議がるような感じで言った。


「初代同士が始めた争いを、どうしてその子孫が…それもわざわざ多大な犠牲を払ってまで続けなければいけないのだろう、と。」


それは、よくよく考えればものすごく簡単な答えだった。


エルデロの言葉をもとに考えてみる。初代の勇者と魔王が始めたこの永きに渡る戦い。

思い返してみると、その始まりは人界の土地を求めた初代魔王が人界を攻め、それを初代勇者…当時一番大きかった国の第一王子が止めたことがきっかけだと言う。

今度は勇者が魔界に攻めて行き、魔王を倒してハッピーエンド…と思いきや。その後次の代の魔王…初代魔王の孫にあたるらしいが、その人物が祖父の仇だなんだと次代の勇者に戦いを申し込んだ。

そこから芋づる式にさまざまな理由で五代ほど争いが続き…六代目辺りからは、確か魔王が人界を攻める前に倒すことが習わしになり始めて…。


あれ?なんかおかしいぞ?途中からまともな戦う理由がなくなってないか?

初代は真面目な感じしたけど…次代とか半分逆恨みの敵討ちみたいな感じだったよな?

六代目くらいからちょっとテキトーな感じになってたし…。


「これ…ボク達が戦う意味、あるのか?」


「やっぱりそう思いますよね?」


「え?は?えっと…どういうことだ?」


理解できないらしいウィンガーが困惑気味にボクとエルデロのやり取りを見る。


「いや、だってボク達が争ったところでなんか利益になるか?魔王は人界を支配しようとしてるわけでもないし、正直ボク達の方も魔界の資源が欲しいとかも特にない。むしろ争わない方が平和に、かつ穏便に全て済ませられるんじゃないか?」


ルシファーがあっ、と声を漏らし、理解したらしいウィンガーが納得したような少し呆れ気味な表情になる。


「なので私は考えました。どうしたら人界と平和にやり取りできるか。どうしたら人界の方にわかってもらえるか。そして思いついたんです。…この際、次にやってくる勇者一行に考えを全て話して、ダメ元でお願いしてみたらなんとかならないかなぁ?と。」


…なんか、こいつとはすごく仲良くなれそうな気がする。ボクはその歴代とは外れた感じの観点と考えから、天才と言われたり逆に変わり者と言われたりしている。

そして多分、この今代の魔王であるエルデロも、ボクと同じような思考を持っているんだと思う。


「で、そのお願いが和平協定か…。」


「いい案だと思ったんですけど…ダメですかね?」


困り顔で首を傾げるエルデロ。やっぱり魔王には見えないんだよなぁ…。


しかしこの話、正直断る理由はないと思うんだよな。

人界人と魔族間での平和なんて、願ったり叶ったりだし。

となれば…答えは一つ。


「…言いたいことはわかった。それはかなりいい提案だと思う。その件、ボクが国王陛下に進言しよう。」

さて、次回はいつになることやら…。

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