プロローグ 勇者とその一行
はじめまして、青羽 紫音と申します。
今作は私の初投稿作品です。
誤字脱字などもしかしたらあるかもしれませんが、暖かい目で見ていただけると幸いです。
黒を基調とした内装の広い城の中。ボクがそこで出会った魔族の青年は、優しくてお人好しな・・・この世で魔王と呼ばれる存在だった。
ボクの名前はリンシオ。純白の髪に金色の瞳を持つ、今年18歳になった青年である。王都ファルディアで生まれ育ったボクは、勇者の血を引く五家の一つであるシュティール公爵家の嫡男。
勇者…それは、千年ほど前にこの世界を混沌に落とさんとした魔族の王、魔王を打ち倒した存在。神々に愛され、天使と結ばれた人物。人々は彼の功績と勇姿を称え、彼を光の勇者と呼んだ。
そんな勇者と天使の間に生まれた五人の子供が自分の家庭を持ったのが、ボクのシュティール家を含む勇者と天使の血を継ぐ五家の始まり。
初代の勇者と魔王が亡くなった後も人界と魔界の戦いは続いた。何度も次の勇者が選ばれ魔王と戦い、ボクは記念すべき10代目の勇者である。
勇者となるための資格を持つには、二つの重要な条件がある。一つ目は、勇者の子孫であること。まあ、はっきり言えば五家の本家の者ということだ。二つ目は、光の種族と契約と契約を交わしていること。例を挙げるとすれば神々や天使、精霊や妖精といったところだ。この二つの条件を満たしている者であれば勇者の候補となれる。
・・・あ、一つ忘れてた。この候補は、絶対に男児でなければならないらしい。まあ単純に女は駄目ってこと。このご時世で男女で区別をつけるのはどうかと思うが、確かに女の勇者というのは正直聞いたことがない。
ちなみにボクには氷の精霊と契約している姉がいるんだが、女であるので候補となることは出来ない。
・・・ん?ボクが契約している相手?ああ、忘れるところだった。ボクはウィンガーという天使と契約している。あいつとボクは幼馴染で幼い頃から仲のいい親友同士。白髪に淡い緑の瞳が特徴で、現在は上位の天使の証である大天使の称号を持っている。
実は五大天使と呼ばれる天使の幹部の五人衆のリーダー格の愛弟子だったりする。そのため大天使衆がたまに様子を見に来るから慣れない人は最悪ひっくり返る。
・・・ボク?はじめは毎度毎度驚かされたけど、何年もやられてるしもうすっかり慣れたよ。
ウィンガーと出会ったのは・・・まあ、色々と経緯があるんだけど、これはまた別の機会に話そう。ボクの仲間はウィンガー以外にあと二人。
まず聖なる騎士の証である白騎士の称号を持つ、ユドルト・フロード。一応こいつもボクの幼馴染だ。白騎士は騎士の家系の者から出る。ユドルトのフロード侯爵家も有力な騎士の家系で、銀髪に黒い瞳が特徴。
フロード家はボクののシュティール家とは長い付き合いらしくユドルトとは小さい頃によく一緒に遊んだことがあった。
その頃はまだ純粋無垢だったんだけど…なんというか、今はかなり変わっちゃったんだよなぁ。わかりやすく一言で言うなら、いわゆるナルシストって奴だ。
・・・いや本当に変わった。正直久しぶりに会った時誰だかわからなかった。微妙に厨二病も混ざってる感があるのがヤバイ。
まあ、ユドルトの話はこれくらいにして、もう一人の方を紹介しよう。
もう一人の名前はルシファー。悪しきを狩る存在として有名な死神の青年で、後ろで束ねた少し長い茶髪と灰色がかった青の瞳を持つなかなかの美形。
三年前に修行のためと言われてウィンガーとユドルトと三人で放り込まれたダンジョンで出会った。 ・・・正直なんで仲間になったのかイマイチよくわからない。離れたところからずっとこっちを見てるから、テキトーに持ってたクッキーをあげたら懐かれた。
そのまま連れて帰ったら自分の両親とユドルトの両親に説明を求められたのは言わずもがな。そのままボクたち一緒にいるようになり魔王討伐のメンバーにも入ったって感じだ。
・・・改めて思ったけど、このメンツキャラ濃すぎやしないか?普通な感じはボクだけなのか?まあボクも大概なんだけどさ。
え?なんでボクも大概なのかって?・・・なんか、知り合いに久しぶりに会ったりすると大体同じこと言われるんだよ。
『その顔、またなんか企んでる?』
って。流石に酷い。確かにいつも色々仕掛けたりしてるけど、いつでもそれについて考えているわけではない。…多分。
まあ人を弄るのは好きだし、ユドルトとかでよく遊んでるし。…なに?ドS勇者?別に気にしないぞ?よく言われるし。
ボクのことをよく知っている相手は大体ボクのことをこう呼ぶ。・・・悪どい勇者、ってな。
・・・・・・。
…自分で言ってちょっとグサッと来た。というか誰だよ、悪どい勇者とか最初に言い始めた奴。ボクは絶対に姉貴だと思ってる。昔からよく変な呼び名付けられたし。
っと。なんか全く本題に入れてないな。現状を言うと、ボクは今魔族の暮らす魔界の中心部に位置する魔王城にいる。理由は簡単。魔王を倒すためだ。それが勇者となった者の使命。勇者はこの世界のために魔王を倒すのが目的。
…なんだけど、ちょっと今の状況はおかしいんだよなぁ。なぜって?だってこの城に入ってから魔族どころか、雑魚敵なんかも一切出てこないんだぞ?勇者が攻めて来たってのに兵士の一人もいないとか、さすがにおかしいだろ。
色々と推理に浸っていると、ふと隣から肩を叩かれた。一度足を止めチラリとそちらに目を向けると、幼馴染であり相棒のウィンガーがボクの顔を覗き込んでいた。
「おいリンシオ。お前、この城の様子に気づいたか?」
ボクと同じことを考えていたらしく、ちょうどいいタイミングで声をかけて来た。
「敵がいないことだろ?流石におかしいよなこれ。ボクたち以外誰もいないみたいだ。」
そう返せば、先程までキョロキョロと辺りを見渡していたルシファーが口を開いた。
「それ、文字通りみたいだよ。少なくともこの階ではボクたち以外の気配は感じられない。」
「なんかそれ、不思議を通り越して不気味だな…。」
気配を感じ取るのが得意なルシファーの言葉にユドルトが苦い表情をする。
これは、魔王側の作戦なのだろうか。止めていた歩を再び進めようとした時、コツンという足音が一つ。しかもボクたちいる場所ではなく、これまで通って来た背後の道からだ。
すぐさま武器を構えて後ろを振り向く。
「おや、随分と珍しいお客様ですね。」
そこにはいたのは、艶やかな黒髪に宝石のような赤い瞳をしたボクたちと同い年くらいの青年だった。
色々とリアルの生活が忙しく、その合間を縫って進めて行く感じになるのでいつ続きを出せるかはわかりませんが、今後ともよろしくお願いします。