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リヒトの過去

 俺達はレーゲンボーゲンに着くと、大きく予想を裏切られることとなった。


 広大すぎるぞ。市場が賑わい、人々が活発に動いている。


 どうやら貿易の中心地の一つらしい。


 「港に行けば何か分かるかも」


 シルフの提案で俺達は港に行くと、飛行船はすぐには出発できないと言われた。


 「三日後に天界行きの飛行船を出してあげるわ。少し待ちなさい。場所は天空の塔から出発するから」


 「お願いするわ」


 案外簡単に天界へ行けるんだな。


 RPGだともっと苦労するのに。


 「天界は観光名所としてなら許可されているわね。最も人間と深く関わると死刑に処されるらしいけど」


 シルフは物知りなんだな。


 いや俺が知識不足でバカなだけか。


 俺達は三日間暇なので観光名所を巡り満喫する。


 自由の女神に似た銅像や、マーライオンに似た銅像まであるな。


 中世のヨーロッパを少し近代化したような国作りだな。


 俺達は市場で武器や防具を見ていると、後ろから声をかけられる。


 「やあ久しぶりだねルクス、ハイル。それから風のシルフかな」


 この声まさか⁉


 俺は驚き後ろを振り返ると、そこにはリヒトとリヒトの肩に乗ったサラマンダーの姿があった。


 「リヒト⁉ お前何でここに」


 「悪魔退治が予想より早く終わったんで天界を観光しようとね。ああ宝石はウリエルが持ってるけど殺すつもりはないから安心してよ」


 ハイルはまさかという顔をしている。


 「貴方フードの人物よね? 素顔見られたくなかったんじゃないの?」


 リヒトはニコッと笑い答える。


 「ああ別にもういいよ。あの時もノリで言っていただけだしね。まあ男だと信用なくされると思ったから隠してたんだけど」

 

 「そう」


 ハイルは少しだけ殺気立っている。


 「シルフ、サラマンダーとは仲良くしてほしいな」


 肩に乗っているのはやはり四大精霊の一人炎のサラマンダーか。


 リヒトも契約していたのか。


 「飛行船は予約済みだろ? ご一緒していいかな」


 「隠してること話せよ」


 「あの時話したと思うけどな。ルナの居場所を教えられないのは、君にルナを殺して欲しくなかったからなんだよね。ルナ今眠っているし、抵抗できないから」


 「立ち話もなんだし、宿で話そうぜ」


 リヒトは困ったような顔をして、俺達についてくる。


 その日食堂で食事を終え宿を三部屋借りる。


 しかしリヒトの話が聞きたくて、俺の部屋に集まる。


 「悪魔退治って何だ?」


 「うん。邪魔そうな奴は殺しとこうと思って、魔王サタンを含め魔族は全て滅ぼしたよ。ああアザゼルは君が殺したそうだね」


 いいなー。俺も悪魔殺したかったなー。


 俺なんて全然強者と戦えていない。


 「何が目的なのかしらリヒトは?」


 ハイルは真剣な表情でリヒトに問いかける。


 シルフとサラマンダーは食堂から持ってきた食材をムシャムシャと食べている。


 意外と仲良くしてて微笑ましいんだが。


 「はあ~。いいよ君達に僕の事情を話そうか。でも理解されるかどうかは不明だよ」


 リヒトは自分の過去を語るのではなく俺達に映像として見せる。


 脳内でリヒトの過去が前世から伝わる。


 

 リヒトは日本の裕福な家庭で育った。


 両親は研究者で忙しかったけど、妹と二人楽しく過ごせていて、人生に何一つ不自由はなかった。


 ははっ俺とは正反対だな。


 ある日両親の研究者としての素質を見いだし、提案をしてきた人物がいた。


 顔が見えない、モザイクがかかっている。


 『モザイクがかかっているのは、記憶の改竄が行われているからだよ』


 その提案とは一つの装置の開発だった。


 その装置は異世界へ行くものだった。


 それから両親は狂ったように研究に没頭していた。


 ある日の頃ようやく異世界へ行く装置が完成した。


 提案した人物は実は転生者で、地球にやって来ていた。


 目的は世界の実権を握ること。


 即ち独裁者となることだった。


 転生者は一人ではなく、他にも転生者がこの世に存在し、魔力では到底敵わなかった。


 だから科学が一番発達した地球の化学兵器を持ち込んだ。


 『君が住んでいた時代とはレベルが違う兵器さ。核兵器や水爆はおろか反陽子爆弾すら凌駕する兵器さ』


 そして研究に研究を重ね、兵器の小型化を異世界に持ち込もうとした。


 しかし僕の両親は反対した。


 その為両親と妹は殺されたのさ。


 僕は咄嗟に妹が殺された時、抵抗した。


 しかし抵抗虚しく、僕は力尽きた。


 そして一人の男性転生者は僕を殺した後用済みとなった地球諸共崩壊させたのさ。


 そして僕は女神に選ばれ転生者としてこの地へ降り立った。


 それから8年後再び僕に不幸が訪れた。


 一人の男性転生者はこの世界に転生者としてやってきていた。


 もうこの世界しか人々が住まう星は存在しないんだ。


 一人の男性転生者は再び僕から家族を奪った。可愛い妹も。


 二度も家族を奪われた。


 当時の僕は転生者として未熟でまだ対抗できる力はなかった。


 膨大な魔力をコントロールできなかった。


 そうルナのようにね。


 また一人の男性転生者も転生者だけではなくカオスと呼ばれるこの世の全てを作りし神と融合していた。


 最早原型は留めていなかったが、僕が復讐しない理由にはならない。


 これが僕の過去と今を生きる理由さ。


 リヒトの過去が脳内から消える。


 思った以上に壮絶だったな。


 俺の過去はとてもじゃないが話せないな。


 「この世界は『アレ』によって支配されている。男性転生者とカオスの融合体によってね。僕は『アレ』と呼んでいるけど」


 「俺の過去より深刻だな。俺なんてニートしていて母親に殺されただけだからな」


 「でも女神が転生させたのには意味がある筈。『アレ』を殺すのに必要な人材かもしれない」


 面白いな。チートスキルで前世の鬱憤を晴らしたいと思ってたところだ。


 『アレ』がRPGでいうラスボスじゃねーか。


 絶対に殺してやる。


 「成る程ね。でもなぜ神々は現アヴァロンの住人を恐れたのかしら。神々すら『アレ』の言いなりの筈なのに」


 「それは僕にも分からない。これは仮説だが『アレ』はまだ未完成で独裁者として未熟なのかもしれない。だとすると現アヴァロンの住人は『アレ』に対抗できる可能性があった」


 「どの道神々は敵なのね」


 「そういうことになるね」


 俺達はリヒトの話を聞いた後眠りにつく。


 俺はこの世界を知らなさすぎる。


 俺はなぜ転生したのだろうか。


 俺は眠りにつくと、一つの夢を見る。


 真っ白い空間に一人の美少女が座している。


 髪は金色のロングストレートで瞳は銀色の美少女が座している。


 服装は金色のマントを纏い、中身は動きやすい服装をしている。また右手には剣を握っている。


 前見た夢と同じだ。


 『ルクスもリヒトもルナもこの世の真実を知らないわ。この世界にはカオスだけではないのよ。ロスト神話を知りなさい』


 「お前は誰だ?」


 『私はイブ、そして背中合わせの少年はアダムよ。この世界の最初の人類』


 アダムとイブだと。


 キリスト教かよ。


 「この世界の黒幕は誰だ?」


 『融合体よ』


 俺はここで目が覚めた。


 ベッドのシーツが汗でびっしょりだった。

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