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第九十三話 一時帰還

「知ってる天井だ……」


 目を覚ますとそこは温泉施設のロビー。周りにはいびきをかいて寝ているドワーフ達。


 謎の重みを感じて顔を起こせば俺の腹には女神の脚がのっている。足ではなくて脚だ。


 一体どういう状況なのか思い出せないが、昨日はずっと飲んでいたようだ。


 あたりを見渡すとゴロゴロと樽が転がっている。ははあ、例の芋焼酎的なアレを持ち出してきたんだな。ビールだけじゃここまで酷いことにならないもんな。通りで俺も頭が痛い……。


 厨房に行き水を汲んで一気に飲み干した。ああ…、これが甘露か。アルコールの分解で悲鳴を上げている内臓に水が染み渡っていく。飲んだ後の水って最高にうまいからな。


「おら、起きろ!!」


 女神の脇腹を脚で突っつく。


「ううん……、次はハツを焼いてちょうだい……」


 何だこのリアクション……。


「起きろっつってんだ!!!!」


 今度は両手で脇腹をくすぐってやる。これで起きなかったら大したもんだ。


「ひゃひゃひゃひゃ……上ロースおかわりね……」


 なんで笑いながら追加オーダーしてんだ?どういう状態で焼肉してる夢を見てるんだ?疑問は尽きないが、これはもう完全に起きないということは理解できた。


 ルーちゃんとナーちゃんは……、外から声がするな。


 外に出ると二人と2匹がぐるぐると追いかけっこをして遊んでいた。ナーちゃん、口調が渋いから実は精神年齢が高いのではないか、この見た目は失敗ではないかと思ったがこういう所はしっかりと子供らしいんだよな。


「おはよう、ルーちゃん、ナーちゃん、あとクロベエにヒカリも」


「おはよー」

「おはようございます、父上」

「おはよう、ユウ!」

「おはようございます」


 時計を見ると10時でけして早くはないのだが、挨拶は大事だからな。


 さてどうするか。パンのアホは何をやっても暫く起きないだろう。今のうちに用を足しておくか?


「ルーちゃんや、火のダンジョンから塩のダンジョンへ繋がる転送門ゲートはもう出来てるんだっけ?」


「うん!頑張って作ったよー。ナーちゃんにこっち側の様子を見て貰いながら試したし、もう通って平気よ」


 そっかそっか。じゃあ、一度あっちに帰って言伝でもしてくるかな。


「よし!ルーちゃん、ナーちゃん、ついでにクロベエ達も!ちょっと一回あっちに行ってくるぞ」


「おお、いよいよ父上達の住む土地に行けるのですね」


「そうだぞ、ただ今日はダンジョンの入口だけね。家まで行くと後からうるさいのが寝てるから……」



 ルーちゃんとナーちゃんをそれぞれクロベエとヒカリに乗せダンジョンへ向かう。

 

 俺も乗っても良かったのだが、この光景は離れてみておきたい。朝から嫌なものを見てしまったから少しでも癒やされておかないとな。


 ダンジョンへ至る道に入ると急激に気温が上昇していく。今はナーちゃんから加護をうけているのでそれほど暑くはないが外気温は30度前後にまで上がっている。


 生息する魔獣が強いため当分冒険者たちに開放する気はないが、その日が来たらなんらかの暑さ対策は必要だろうな。


 冒険者それぞれに対策させるか、ナーちゃんの加護を与えるイージーモードにするかは今後の課題としよう。


 間もなく、ダンジョンの入口が見えてきた。以前はなかった扉がついているが恐らく暫く立入禁止ということでパンがなんかやったんだろう。


「ルーちゃん、ナーちゃん転送門ゲートはどこだい」


「こっちだよー!」


 先導する二人についていくと塩のダンジョンで見たような小屋があった。小屋……と呼んだらまたパンの奴にどやされそうだけどな。


 とにかく軽く神秘的な雰囲気がしなくもない建造物が有り、その中には見慣れた装置が置いてある。


「今はねー、勝手に使われないように私達だけにしか反応しないようになってるのー」

「だから安心して下され、父上」


 なるほどね。そうか、そうでもしないとあっちからこっちから勝手に行き来しちゃうのか。いずれはそうする予定だけど、今の時点でそうなっちゃうと面倒だもんな。


「そっかそっか、安心したよ。ありがとうね」


 と、二人を撫でまわす。クロベエが撫でて欲しそうな顔をしていたのでついでに……おいおいヒカリお前もか……なでなで……。


 と、撫でている場合じゃなかった。あちらへ行ってこないとな。


 既に慣れた転送装置に手を置いて起動させる。


「皆居るよな?行くぞー」


 ぎゅっと手を押し込むと装置が完全に起動し、辺りが光りに包まれる。毎度の事ながら光が止んでもいまいち転送した感が無いのだが、空気の質が変わったことでここが塩のダンジョン入口であることが理解出来た。


 小屋から外に出るとどうやらここは通常の転送門の逆側、受付けから見て左側に設置されているようだった。


 ちょろちょろしていた係員、ウサ族を捕まえ3人と2匹分の昼食をオーダーする。つまりゲストハウスまでパシらせるのだ。


 嫌な顔ひとつせず,笑顔で対応してくれるウサ族に感心する。クロベエは良い拾いものをしてくれたもんだ。ウサ族との出会いが無かったら、謎の超進化をしていなかったらこの手の人員問題を解消するのは大変だったろうからな。


 ウサ族とは言え、きちんと報酬は払ってるのでそういう話では無くて、まだダンジョンと俺の家、ゲストハウスくらいしか無いこんな所で村の人を働かせるのはちょっと危ないからね。


 一応話はついてるのでこの辺に野良の魔獣が出る事は無いけれど、問題は通勤だからなあ。村からここまでは結構な距離があるし、泊まるところといってもゲストハウスだ。そこまでもちょっと距離がある。


 その点ウサ族なら元が魔獣なのですばしっこいし、家はダンジョンにあるため転送すれば直ぐに到着だ。


 ま、ドワーフ達と交易が始まればここももう少し賑やかになると思うけどね。

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